第18話 第3王子 リュート・エル・サウスヘルブ
「はじめまして。猫まっしぐら様。
リュート・エル・サウスヘルブです。
師であるコロネ様から猫様のお話はよくお聞きしていましたので、こうして実際にお会いできて光栄です」
と、金髪長髪の超美形青年が微笑んだ。
歳の頃なら20代くらいなのだろうか?まぁ、エルフの年齢など私にはわからないのだが。
乙女ゲーに出てきそうな爽やか好青年の美形だ。
朝食を食べ終え、コロネに聖樹の鑑定のOKの返事をすれば、しばらくしてコロネが屋敷に連れてきたのがこの人である。
煌びやかな衣装を着ている所からみると、それなりに偉い身分の人らしい。
クランベールも真面目な顔をして彼の後ろで控えている。
他にもいかにも身分の高そうな騎士達がずらりと彼の後ろで整列していた。
『エルフの国サウスヘルブの第三王子になります』
コロネがパーティーチャットでこそっと私に告げる。
ちなみに既にリリちゃんとコロネとはパーティーを組んである状態だ。
『えー。また随分偉い身分が高い人がきたな。
相手するの面倒なんだけど』
私がげんなりした顔でいえば
『彼は私の教え子ですから、あまり形式的な事にこだわらなくても大丈夫です。
王族が一人でもいないと聖樹のある地域には入れませんので』
『へー。そうなんだ。わりと厳重なんだな』
『はい。とても神聖な場所ですから』
私とコロネがパーティーチャットで会話し、リリちゃんはちょこんと座っていい子に話を聞いている。
リュート王子はカエサル討伐と魔物退治に関して大仰な礼をのべようとするが、それをコロネが猫様はあまりそういことは好みませんと、カットしてくれた。
うん。物凄く助かる。貴族風の挨拶とかされてもこっちも困るし。
普段変態だけどこういう所は気が利くよね。変態だけど。
そんな事を考えながらチラリとリリちゃんを見やれば、あくびをしていた姿を私に見られ、あわてて、しゃきっと背を伸ばす。
……無理しなくてもいいのだけれど。
まだ流石に甘えてはくれないようだ。
一息ついたらちゃんとリリちゃんとも親睦を深めなきゃいけないかもしれない。
なんだか子供なのにいい子すぎるんだよねリリちゃん。
無理して大人ぶってるっていうかなんていうか。
そんなことを考えながら、私は案内されるがまま、彼らの後に続くのだった。
△▲△
「ここです」
と、神殿の中にあった王族しか使えないという転移の魔法陣にのり、リュート王子に案内された場所はとても幻想的な場所だった。
キラキラと光の粒子のようなものが舞い踊り、木々の隙間から溢れる日の光はなぜか七色で。
その中でもひときわ大きくそびえ立つ木が不思議な光をはなっている。
「これが聖樹ですか」
言って、私が聖樹の前に立、鑑定スキルを使用すれば
***
精霊の聖樹
はるか昔、光の神セシウスが地上に悪しき魔物たちを封じるために植えた聖なる樹。
エルフ達が聖樹に魔力を送り込むことによって、聖樹は結界を維持する力を得る。
状態:(呪い)300年かけて、魔族がエルフの魔力を装い、少しずつ魔力を注いでいたため本来の力を失ってしまっている。
***
と、表示された。
うん。呪われてますね。ばっちりと。
私が鑑定結果を言えば、エルフ達からどよめきがおきる。
「まさか!?魔族が魔力を注いでいた事を神殿の神官達は気付かなかったのか!?」
とクランベールが言えば
「300年の時をかけ、神官達が変化に気づかない量を徐々に注いでいたのでしょう。
徐々に変化していったため、魔族の魔力があるものが正常と勘違いしていたのでしょうね。
それにしても……神話でしかでてこない魔族が関わっていたとは……」
と、コロネが顎に手をあて考え込む。
「とにかく、至急他の4ヶ所の聖樹の状態を確かめねばなりませんね。
確認しなければ他の地域の結界も破られてしまうかもしれません」
と、リュート王子がいい、視線が一斉に私に注がれる。
…うん。なんとなくそうなるとは思った。
まぁ、放っておいて、世界に魔物が溢れました!なんてこっちもごめんだからやるけどね。
「あー、わかった。わかった。
全部の聖樹を鑑定すればいいんだろ、鑑定すれば」
ポリポリ頭をかいて私が言えば。
「助かります」
とリュート王子がにっこり微笑む。
結局その日はリュート王子に連れられて、転移の魔方陣で聖樹めぐりツアーに行くことになったのである。
△▲△
「お隣いいですか?」
聖樹めぐりの休憩中。水を飲みながら休憩しているとリュート王子が隣に腰掛けてもいいか聞いてきた。
既に三つの聖樹の鑑定を終え、どれも異常なしとの判定がでている。
ついでだから聖樹や神殿には魔族や魔物が入れないように私が罠を張り巡らせてきたのでレベル600クラスの敵は入れないようにしてある。
そのせいか、一行は割とのんびりしており、コロネとリリは綺麗な蝶々を捕まえにいき、クランベール達も見張りで少し遠くにいる。
王族と会話というのはあまり好きではないが断る理由も特に見当たらず
「どうぞ」
と、言えば、リュート王子は飲み物片手にありがとうございますと、言いながら腰掛ける。
「それにしても。
いつも猫様のお話は師匠から聞かされていましたから。
こうやって本当にお会い出来た事を光栄です」
と、屈託のない笑顔で微笑む王子。
やーこの人本当乙女ゲーの攻略キャラっぽいわ。超・好青年✩
でもあれだよね、こういうキャラって乙女ゲー以外だと、大抵腹黒なんだね。
この子はどっちだろう?
「コロネがですか?どんな話を?」
コロネが私の事を人になんと言っているのかちょっと興味があって聞いてみる。
「はい。コロネ様に学生時代に魔法の手ほどきを受けまして。
その時、時折「ゲーム」だった世界の事を話てくださいました。
その話をしてくださる時、決まって猫様の武勇伝の話もしてくださいましたので」
言って王子はくすりと笑い
「あの寡黙で感情を表にださない師匠が雄弁に話すものですから。
その姿が子供心におかしくて、私は猫様のお話が大好きでした」
……あんの野郎。
小さい子にまでナニ吹き込んでるんだ。
てか、寡黙とか感情を表にださないとか、コロネほど似合わないセリフはないと思うんですけど。
あいつわりと感情だだ漏れの変態じゃないですか。
「……ただ」
王子は顎に手をあてて
「小さい頃から何故か猫様は女性だと思い込んでいましして。
お会いしたら男性で驚きました」
……ぶふぉう!?
王子の言葉に危うく飲みかけた水を吹き出しそうになるのを私は必死にこらえた。
や、王子の顔に水をクリティカルヒットさせて、不敬罪とかになったらマジやだし。
「って、コロネが女だと言ったとか!?」
ひょっとしてあれか、出会った時にはもう女だとバレてたわけか!?
……まぁもうバレてるから今更感もあるけどさ!!
私が悶絶していると
「楽しそうですね。お二人で何のお話ですか?」
と、いつの間にか蝶々を捕まえたリリとその隣で、漫画だったらズゴゴゴゴというオーラを放ってそうなほどの殺気を放ったコロネが立っていた。
「はい。師匠。
今しがた、昔話に花を咲かせていたところです」
ニッコニコで答えるリュート王子。
……うん。こいつもなにげに大物なのかもしれない。
まぁ時期国王候補だしね。
コロネは深いため息をついたあと
『猫様どうやらカマをかけられたようですね』
と、パーティーチャットでコロネに言われる。
『え?カマ?』
『前にも申し上げましたがエルフの上層部は、プレイヤーの魂と肉体の性別が別である可能性があることを知っています』
『えーっと……それってつまり』
『はい。リュートには魂が女性であることがバレたと思ってよろしいかと』
『えええええマジで!?』
『ネコ 顔に でやすい
リリでも わかる』
蝶々を嬉しそうにカゴにいれたまま突っ込むリリちゃん。
ぬぐぐぐ。
くそぉぉぉぉ!!
リュートにまでばれたぁぁぁぁぁ!!
くっそ、人をカマにかけるとか許すまじ、リュート王子。
こいつは腹黒キャラ認定してやる!絶対腹黒キャラだ!!
などと私が悶えていると
『こうなったら自らの弟子を手にかけるのは心苦しいですが……殺りますか!?』
と、メッサ恐ろしい事を言ってくるコロネに
『殺るわけないだろっ!!あほかっ!!』
間入れず突っ込む私。
冗談なんだろうけどマジだったら狂信者すぎて引くわっ!!
そんな私たちの横で
「あの、皆さん、無言で見つめ合って……何かあったのでしょうか?」
と、リュート王子がおずおずと尋ねてきた。
パーティーチャットでの会話の為、口も動かす必要もないため他人から見たら無言で見つめ合ってるようにしか見えないらしい。
うん。人にカマかけた罰だ。しばらくそこでおどおどしていればいい。
私は青すじを浮かべてにっこり微笑むのだった。
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