第47話 異界――『迷宮』制圧準備①



 ゴンザレスに『召喚』され続けている『召喚人』は、ある『空間』で

 待機している

 その場所については、いずれ語るとして。

 ゴンザレスが何かと準備を行っている頃、その

『空間』内でも一つの動きがあった

 その『空間』には、平地だった場所を整地しアスファルト敷き詰め仮設の

 格納庫や宿舎、武器庫、管制施設等を作り上げた区画があった

 広大な平地 その周りには天幕が設えられている場所もあり、ただ事ではない

 雰囲気を漂わせる

 何処かの軍のキャンプ地か駐屯地に迷い込んだのかと

 錯覚してしまうほどの光景だ

 その一画にある会議室で、現在『召喚人』達の緊急対策会議が行われていた


 緊急対策会議中の『漆黒の銃士隊』第1会議室の前に、『第1世代』の

『召喚人』がドアの前に立って、入室の許可が出るのを待っていた

 標準服装と言うべき、白いワイシャツ以外全てを黒で統一した服装に

 黒サングラスを着用している

 入室の許可を待っているのは、ハリウッド俳優 『ブルース・ウィルス』と

 同じ貌をしている召喚人だ

『本物』より精悍な貌立ちなのは、実戦経験を積んだからだろう

 部屋の中では、激しく言い争う2つの声が聞こえていた

『ブルース・ウィルス』貌の召喚人には、その声は聞き覚えが有る ため、

 より一層の切羽詰まった表情をして入室の許可を待つ



 1つの声は、同『第1世代召喚人』の『ドルフ・ラングレン』貌の召喚人の声だ

 もう1つの声は、『仮面召喚人』の声だ

 ゴンザレスはまだ現在、ラノベ書籍やRPGゲームの様に『召喚』

 出来るぐらいしか思っていないが、『召喚』され続けている

『漆黒の銃士隊』本隊が活動するには、『仮面召喚人』が 必要不可欠なのだ

『漆黒の銃士隊』本隊が、第一線部隊とすれば『仮面召喚人』達は、

 後方においての 支援部隊として、活動する事になる

 重要度が高い兵站業務を支えており、前線部隊が必要とする生活必需品、

 武器弾薬、医薬品、医療用品、燃料などを医特性に合わせて必要時に

 供給している

 また後方支援部隊としての業務だけでなく、『異世界』の最前線での

 情報収集や情報分析なども行っており、

『仮面召喚人』は欠かせない存在となっている。

 兵站業務にしろ、補給支援業務にしろ、最前線で『漆黒の銃士隊』本隊の

 活動範囲が大きくなると、

 ますます 支援部隊『仮面召喚人』の必要性は増す。


『ブルース・ウィルス』貌の召喚人は、一つ息を吐き軽く会議室の

 ドアをノックすると、『応』の返事が返ってきた

『失礼する』

 そう言いながらドアを開けて、入室した

『ブルース・ウィルス』貌の召喚人の視界に、同『第1世代』の

 召喚人の姿が入った

 黒サングラスを拭いているその姿も様になっていたのは、『ロバート・デニーロ』貌の召喚人だ。

 そのしぐさ、動き、目力は『現世界』の『本物』と何ら遜色はなく、

 ハリウッドスターがそのまま召喚されたような姿だった。

 だが、その身体と貌は『本物』よりも若い

 それでも一つ一つのしぐさはベテラン俳優のように 落ち着いていて

 威厳すら感じられる程だ

 今は、その表情は何処か困惑している様に見えた


『ロバート・デニーロ』貌召喚人の眼の前では、『第1世代』の

『召喚人』でもある

『ドルフ・ラングレン』貌の召喚人が椅子から立ち上がって、議論相手の

 人物を睨みつけていた

 まるで中世の剣闘士を思わせる様な容貌で、粗暴な感じを受けるが

 そんな雰囲気は微塵も感じられない

 クールな肉体派俳優と同じ『貌』なためか、それだけでもアクション映画の

 ワンシーンを連想させられる


 鋭い目つきで睨みつけるその目線は真っ直ぐ、相手を見据えていた

 睨まれている人物は背丈170cmの細身で、黒髪のオールバックで、素顔を

 エドヴァルド・ムンクの『叫び』の様な 仮面で覆っていた

 服装は『召喚人』とは違い、死神のような漆黒の衣装を纏っており、マントまで

 羽織っていた

 存在自体が、『召喚人』とは違う圧倒的存在感だ

 今にも格闘戦の火蓋が切られる様な緊迫した空気が漂っているため、

 瞬時に『ブルース・ウィルス』貌の召喚人は

『何かあったな』と感じ取った。


『参謀本部は、いったい何を考えられておられるのですかっ!』

 再び、『ドルフ・ラングレン』貌の召喚人が大声で、同じ言葉を言った

 だが今度は、その語気は荒い。

 迫力ある語調は聞く者の心胆を寒からしめる程で、まるで歴戦の

 軍人といった雰囲気だ

 今にも相手の胸倉を掴みかからないばかりだ

『ブルース・ウィルス』貌召喚人の入室に気づいていないはずはないが、

 眼には『仮面召喚人』しか映っていないようで

 怒りに満ちた視線はただ一点を 睨みつけている。

 その視線の先には、仮面召喚人しかいないのだが、当の『仮面召喚人』は

 何処吹く風といった様子で全く気にした様子もない

『申し上げた事の繰り返しになりますが『ボス』は、今後のゴブリン討伐を

 円滑に進めるため新たに『練兵所』建設を決定されました

 現在 その作業が急ピッチで 進められております』

『仮面召喚人』は、『ドルフ・ラングレン』貌召喚人の迫力のある口調に

 動じることも無く落ち着きのある声で応えた


 不気味な衣装とインパクトのある仮面を被っている割には、その対応は

 落ち着いていて理知的な様子だ

『何も練兵について軽視しているわけではありません!

 確かに今後のゴブリン討伐やそれに類する魔物討伐には

 欠かせないモノだと理解はしています

 しかし、私の考えではあまりにも無謀すぎると思っています!

 何も『迷宮』を『練兵所』にしなくても、少人数だけで

『異世界』に投入し、誰の眼もつかない辺境地で雑魚であり数も多い

 ゴブリンを討伐する という方法もあるのではありませんかっ!』

 その迫力は、ハリウッド映画に出ている様な俳優が演じている 役そのもので、

 一語一句を区切るように話すその口調は まるで演説をしているかのようだ。



「ゴブリンの繁殖力は『異世界』の現地人が思っている以上に繁殖力は

 驚異的で、成長もきわめて短く、3週間程度で成体。

 1つの巣に3 - 4人も孕み袋がいれば、短期間のうちに10匹以上も成体に

 成長 します

 ――実戦経験のない兵員だけの少人数では、ゴブリンを倒す ことは

 極めて困難だと思われます。

 それに、現地人の眼にも触れないようにするのが難しいでしょう

 もう1つ、『ボス』が懸念している事があります

 それは『冒険者ギルド』より『緊急招集』が掛かる可能性がある

 という点です

 それによっては、ゴブリン討伐を中断しなければならなくなります

『緊急招集』の原因が、『迷宮』から溢れた魔物による

『スタンピード』によるものか、はたまた古龍種による大暴走か

 その事態は、我々では予測も出来ません

 そのため今後の『漆黒の銃士隊』本隊には、さらなる経験が

 必須だと考えます』

 冷静に淡々と話す仮面召喚人の口調には、何事にも動じない

 強い意志が感じられた



 眼鏡拭きで黒サングラスを拭いている『ロバート・デニーロ』貌の召喚人は、

 何やら意味ありげな苦笑を浮かべつつ、『ブルース・ウィルス』貌の

 召喚人へと視線を向ける

 しかし『仮面召喚人』も、『ドルフ・ラングレン』貌の召喚人も、

 そんな視線に気づかないかの様にして、話を続ける

 それはまるで自分の考えを話すのに忙しいと言わんばかりだ

 そんな様子と意味ありげな視線を受け、『ブルース・ウィルス』貌の召喚人は

 眉間に皺をよせて内心ため息を吐いた






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