第44話


「話を続けるぞ?

『銃士系召喚魔法士』ジョブの『修練ミッション』は、確か

『討伐』系だったよな」

 ナナシがニヤニヤした笑みを浮かべつつゴンザレスに

 そう問いかける

 その眼は、何か悪巧みをしている子供の眼になっていた

 気味で何とも形容し難い有様だ・・・

 そして何と言っても眼が笑っていない


「・・・『討伐』系の『修練ミッション』が、楽に達成できる場所が

『異世界』には存在している

 ヒントは、最初が弱くて奥に行くほど強くなる場所だ」

 オルテガが続けて、男とも女ともつかぬ中性的な声でゴンザレスに

 そう続けて言う

「・・・闘技場か?」

 ゴンザレスはしばらく考えて、怪訝な表情を浮かべつつオルテガと

 ナナシにそう問い返した

『異世界』庶民達の主な娯楽は、酒場で奏でる吟遊詩人の歌声や、

 旅芸人達が巡業先で奏でて みせる歌舞だ


 歌を聴きながら安酒を飲み、食事、噂話に耳をかたむける

 上流階級となれば、劇、サーカス、オペラ、舞踏会 に

 社交ダンスなどだ。

 庶民と上流階級の娯楽は多種多様だが、その中で最も人気のあるのは

 戦闘職者や戦闘奴隷による戦いを 見る事である

 ナナシ達の『現世界』では、古代ローマ帝国が娯楽として見せていた

 戦闘競技だ

『異世界』では戦闘職者や戦闘奴隷同士の闘いの他に、魔物対戦闘奴隷や

 魔物対魔物などの様々な戦いが庶民の娯楽として楽しまれている

 試合形式も様々で一対一で闘うものから、多人数対多数といった 大規模な

 戦いまで数多く存在し、観戦だけでも非常に楽しめるものとなっている

 また興行的に最も人気があるのは魔物対奴隷の試合だ。

 獰猛な見た目をしているとはいえ所詮は魔に属する

 モノとされているためなのか、それとも捕獲率が

 低いのか不明だが、見た者に恐怖を与えてしまう程の強力な

 魔物とは滅多に出会う事はない



 そして戦闘奴隷達は魔力回路が遮断され奴隷紋を刻まれるため

 魔法は使えないが、 身体能力は常人のそれを遥かに超える。

 戦闘奴隷達は、主人の命令に絶対服従を誓わされているので、命令された

 事には 逆らえない

 しかし戦闘奴隷達の中には、その状況から抜け出そうと

 画策する者もいる

 それ故に試合は、実にスリリングなものとなる

 試合は賭けの対象にもなっており、一般庶民はもちろん

 上流階級も賭けをして試合が盛り上がれば盛り上がりをみせる


 団体戦となれば、10~20名ほどを一つのチームとし、 5~8名でその

 1チームの敵チームと戦う

 団体戦は1対1の個人戦よりも少し戦略性も上がっており、団体戦ならではの

 駆け引きが楽しめる。

 また団体戦に限って、戦闘職や戦闘奴隷達だけでなく魔法師や

 召喚人などの職業ジョブを持つ者達が参戦する事もできる

 この様な試合形式での試合は、庶民や上級階級にとっての

 娯楽として楽しまれ、試合の勝者には賞金が支払われる

 ナナシ達が活動している辺境地域には、幾つか闘技場はあるが

 中央諸国は辺境闘技場とは比べ物にならないほど

 大きく設備も整っている

 特に中央諸国闘技場では、中央諸国から選りすぐりの強力な魔物同士や

 戦闘奴隷同士が戦う事も多々ある



 そして現在の『異世界情勢』として、大規模な戦争などは

 無くなっているために試合形式での戦いに なることは

 必然と言えよう

 しかし現在、辺境諸国闘技場は『ゴブリンの狂軍』発生により、閉鎖中だ

『ゴブリンの狂軍』も沈静化した事により、『冒険者ギルド』には『

 興行依頼』が殺到中だ

 辺境諸国の一般市民や上流階級も娯楽に飢えていたのか、興行依頼が

 殺到して来ている

 理由は簡単で、かなり高額な報酬を提示されても そこまでの

 価値はないと考えているためだ

 現に『ゴブリンの狂軍』発生前から、闘技場での

 試合レベルは低くなっていた

 それは何故かと言うと辺境諸国闘技場に参加する剣闘士や

 戦闘奴隷のレベルが、中央諸国の闘技場に参加する剣闘士や戦闘奴隷達と

 比べて低レベルだったからだ


 辺境諸国の国々は強力な魔物や魔獣と隣接しているために自然と

 魔物狩りなどで腕を磨き鍛えているが

 中央諸国では大規模戦争は発生していないが、紛争が頻繁して いたり、

 盗賊団や犯罪者集団が幅を利かせていたりしていて魔物狩りなどを

 行うような事は 余りない

 それならば、中央諸国の方がレベルが低いのではないかと、疑問に

 思われる だろうが、それは違う。

 中央諸国は隣国と隣接しているために、常に 緊張状態にあるため

 高い戦闘技術を身に付ける必要があ り 、また人間同士との

 戦闘経験も豊富だ

 あくまでも、人間同士の戦いに限定したものであり魔物との戦いには

 慣れていないとも言えるが


「・・・最初が弱くて奥に行くほど強くなるってどんな闘技場だ?

 それらに関しては、お前じゃなくてロドリゲスだ」

 その答えにナナシは、若干呆れ貌でそう返す

「ロドリゲスの『修練ミッション』にはまったく

 関与するものではないが、個人宛に『闘技場出場』関連の

『指名依頼』が複数来ている」

 オルテガが男とも女ともつかぬ中性的な声で、そう続ける

「一件、二件って数じゃないんだぜ?

 全て辺境諸国闘技場での個人戦出場を要請するモンが、20件だ」

 ナナシが肩を竦めるように、そう続ける

「丁度辺境諸国闘技場があるのも、20だったな。

 もう1つ、闘技場出場』関連以外でロドリゲス個人宛に『指名依頼』が来ている」

 オルテガが男とも女ともつかぬ中性的な声でそう続ける

「人気もんだな」

 ゴンザレスが、若干呆れ貌でそう返す


「辺境諸国の都市警備隊及び賞金稼ぎユニオン『孤高の鉄騎兵』からだ

 沈静化した『ゴブリンの狂軍』以降辺境一帯では糞ゴブリンは

 ちょっとは大人しくなっているが、その反面悪事を働く

 野盗団や山賊団などがまたぞろ出没 している

 ・・・まあ、ここまで言えば解るな?」

 オルテガが男とも女ともつかぬ中性的な声でそう続ける


 辺境地域は、『ゴブリンの狂軍』以前から辺境諸国の警備隊が

 機能しているとは言い難く、

 犯罪組織が蔓延り治安が乱れている地域が多い

 また、盗賊団や山賊団などが裏社会で横行しているような

 地域でもあるが故に この様な事態が頻発している

 辺境地域の治安が最悪のところまで転がるのを防いでいるのは、魔物を

 倒すよりも犯罪者を相手取る『懸賞金狩り』専門冒険者達の存在が、大きい

 辺境地域に現れる賞金首は、犯罪者としての熟練度が違う分実力も

 桁違いに高い事が多く、 必然と戦闘経験が豊富で強いためだ。

 また、辺境地域では魔物の跋扈する広大な未開地域もあるため、

 治安維持活動は都市内だけ に留まらず、辺境地域全体に及ぶ事になる。

 そしてその冒険者達をサポートするのが『冒険者ギルド』とは別組織

 ―――『マンハント』組合だ。

 その組織は『懸賞金狩り』専門冒険者達をサポートするために

 設立された組合であり、主に賞金首の情報を収集・管理する役割を持つ

 その実力も桁違いに高く、また多くの経験を積んでいるためか

 戦闘技術が洗練されており高い水準だ



「あいつの『能力』を俺達以上に注目しているのは、ココを活動拠点にしている

 ユニオン『孤高の鉄騎兵』連中や辺境都市国家群の警備隊、そして

『マンハント』組合の奴らだな」

 ナナシが苦笑を溢しながら、そう続ける

「『闘技場』関係者からの注目なら話は解るが、なんでそんな

『懸賞金狩り』専門や警備隊からも注目されているんだ?」

 ゴンザレスが疑問の声を挟む

「ロドリゲスが糞忌々しい多忙な時に、いつの間にかふらっと

 居なくなっていた事は覚えているか?」

 オルテガが男とも女ともつかぬ中性的な声で、そう続ける

「覚えているも何も・・・

 関わるの面倒だから観光でもしてたんだろ」

 ゴンザレスが軽口にも似た言葉を返す


 敗走につぐ敗走の状況下で観光はないだろ・・・。

『ゴブリンの狂軍』時、それに呼応する形で火事場泥棒よろしく

 山賊や盗賊もこぞって村や集落を襲い略奪行為に勤しんでいた事は

 知っているよな?」

 ナナシがそう話を切り出す

「特に辺境東部一帯での被害が酷かったと、話だけなら聴いているが

 それとロドリゲスが何の関係か?」

 ゴンザレスがそう尋ねる

『ゴブリンの狂軍』時、辺境一帯では活性化した山賊や盗賊が

 どさぐさに紛れて村や集落を襲い被害も続出していた。

 それにより、 山賊や盗賊退治の依頼もより多くが舞い込む事になっていた


「あいつ、俺達が知らん間にどうやら『懸賞金狩り』専門や後方地域の

 治安維持していた警備隊に協力して、

 火事場泥棒の山賊や盗賊を討伐していたらしい」

 ナナシが苦笑しながら、何処か嬉しそうに話を切り出す

「何だよ、『せっかく『転移』したのになんでそんな殺伐した事を

 しなきゃならないんだ』とかぶちぶち文句言ってた割に

『現世界』の仕事柄ド定番な潜入捜査をしていたのか」

 ゴンザレスはそう突っ込みながら何処か呆れた表情になる


「ロドリゲスに捕縛されて、警備隊に引き渡された山賊や盗賊達は尿や

 脱糞しながら泣き喚いて、警備隊に命乞いをしていたらしい」

 オルテガが男とも女ともつかぬ中性的な声で、そう続ける

 独特な声色な事もあり、その状況を想像してしまったゴンザレスは、

 ちょっと引いてしまう

 山賊や盗賊は、辺境地域の各都市警備隊に捕縛され裁判時に刑が

 確定した重罪の者は処刑することになっている

 生死を問わずで賞金が懸けられたものについては、生死を確認後に

 生け捕りにして公開死刑になる事になっている


 悪逆非道な山賊や盗賊達が、涙と鼻水と涎をとめどなく流し狂った様に

 叫びながら警備隊へ命乞いをする光景は、さぞかし異様な

 光景だったことだろう

 命乞いをする光景は、さぞかし異様な光景だったことだろう

「一体何をしたんだ?」

 ゴンザレスは、引きつる様な表情を必死に抑えてそう尋ねる

「さあな。少なくともあいつの事は『懸賞金狩り』専門や警備隊からは

 随分と評価されているようだぞ

 逆に山賊や盗賊などからは恐れられていたみたいだがな」

 ナナシは涼しい貌でそう話を締めくくる

「これ以上余計な話をしていると先に進まない

 答えは『迷宮』だ」

 オルテガは、軽く息を吐いてから、そう続けた


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る