木曜日の早苗【テ抜きなオマケ】
付き合うって何だろう。
好きです。付き合って下さい。
別々の言葉なのに、いつの間にか当たり前のワンセットになってるのが不思議。
けど、そんな私に友達のみっちゃんは言ってきた。
『心配しなくても、さーちんと例の先輩は付き合ってもそんな変わんないと思うよ。恋人云々の前に、さーちんおバカだし』
いやぁ、それほどでも。
流石みっちゃんオブみっちゃん、友達の中の友達。
色んな漫画とかゲームとかのお話の中で、友達の名前といえばと聞かれれば、アンケート上位は間違いなしのみっちゃん、あっぱれ。
でも、そっかな。
本当の本当に、そんなに変わらないもの?
だったら、私は嬉しいけれども。
今のままでも、良いんじゃないかなって思ってしまう。
「……」
少し馴れてきた。
べったりした黒い色がちょっと薄くなって、何がどこにあるのとかが見えやすくなった。
「んしょ」
やっぱりタバコの匂いが残ってる兄ちゃんの部屋に、お宝隠してるベッドの上で、すやすや寝息を立ててる。
先輩が、寝てる。
なんかたまんなかった。
「……せんぱい」
月曜日から、ずっと。
あの先輩が、名前で呼んでくれている。
なかなか恥ずかしがって呼んでくれなかったのに、催眠アプリをポチっと押したら簡単に。
魔法みたいだ。
魔法みたいで。
じゃあ解けたらどうなるの?
全部チャラとか。うむ、あり得る。
「寝起きドッキリ~先輩の隣に早苗を添えて~……怒っちゃうかな、さすがに」
先輩は、どこまで私に付き合ってくれるんだろう。
バカだなコイツって思いながら、いい加減にしろよって言いながら、話聞けって呆れながら。
それでも律儀に相手してくれるから、いっぱいいっぱい目一杯、甘えちゃうんだよね。
『頼むから俺以外にこんなことすんなよ。ホント気をつけろ、ってか聞けや枝毛気にしとる場合かコラ』
怒っても謝ったら許してくれるし、お前と居ると飽きないって笑ってくれるし。
俺以外にはするなよって。
せめてふざけるのは俺相手だけにしとけって。
そういう事、あっさり言えちゃう所とか本当に。
「ステキです、先輩」
スキの間に挟まってばかりのもので、そっと先輩の鼻先に触れる。
やわっこい、子供みたいな鼻。
むず痒そうにときどきピクピクしてるのが、猫みたいでつい構いたくなる。
ほんとは構って欲しい側だけど、構う側も結構アリ。
反復横飛びは得意だから、好きなだけ行ったり来たりしようかな。
「…………難しいなぁもう」
ちょっと真面目な事を言います。
先輩は私をよくバカな犬って言うけど、多分イルカが一番近い。
特に夜、真っ暗な海でキュイーとか言いながらピョンピョン跳び跳ねるイルカ、うんおバカな感じ。
けど、多分キスがしたいだけ。
高く飛んで、まるくておっきな月に、ピョンピョン跳んでアプローチしてるけど。
離れてから見れば、それはもうキスしてるよってよく言われるんだろうけど。
月と海とイルカ。
真正面からタイミングよくシャッター切れば、多分そんな感じに見える。
「……んぁ」
「!」
「……」
「……かーらーのー?」
「……すぅ」
「セーフ……」
……もし、届いたとしたら。
どう変わるんだろう。
海で泳いでるままなのか、それとも今度は宇宙を泳いでいるんだろうか。
そこで私は、ちゃんと息出来るのかな。
言葉をちゃんと音に出来るのか、全然分からない、バカだし。
もしかしたら、そんな私に、 愛想尽かしてどこか行ってしまうかもしれない。
月がずっとそこにあると、信じきれないビビりです。
「……素敵ですよ、ホントに」
「……ぉぅ……」
「!」
「……んがっ……くぅ……」
……でも、もし。
宇宙を泳ぐイルカになれたら、それはそれで気持ち良さそうって最近は思い始めてる。
にゅふふと囁いて、一度だけ頬っぺた突っついて。
「おやすみなさい、先輩」
外は寒いけど、なんかじんわり暖かい。
今日はいい夢見れそうだって思いました、まる
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