第40話 突然の遠出

                    by Sakura-shougen


 シンディは、翌日普段通りに出社し、サムエルが出社してから、ふと思いついて、テレパシーを試してみた。

 すぐにサムエルから応答があった。


 特に母ベアトリスから今度の週末か休日に家に招待しなさいと言う話があったのを伝えると、じゃぁ次の休日であるスレバムに行くよと了解を貰ったのである。

 その際に、テレパシーは余り距離には関係が無いよとも教えられた。


 ベイリー邸からサムエルのコンドミニアムまでは車で7、8ミロンほど、直線距離でも5ミロンはあるだろう。

 それでも大丈夫かと聞くと、多分問題ないと返事が来た。


 これは凄いことである。

 シンディはいつでもサムエルに連絡をつけられる専用のセルフォンを持ったようなものである。


 その話をしている間、シンディは手を休めていたが、サムエルはパソコンを凄まじい速さで叩いていた。

 セルフォンならば片手が塞がるかもしれないが、テレパシーならその必要もなさそうである。



 その日の午後、サムエルに一本の電話が入った。

 途端にサムエルは別の言葉で話し始めた。


 シンディには何語かさえ分からない。

 たまたま部屋に来たディックに聞いたが、ディックは多分カナレック辺りの言葉じゃないかとは思うがよくわからないと言った。

 電話が終わると、サムエルはパソコンを暫く操作していたが、やがて顔を上げると、シンディに言った。


 「 私用でちょっと出掛けて来るよ。少なくとも3日、場合によっては4日から5

  日程掛かるかもしれないが、多分それ以上にはならないだろう。」


 「 あの、どこへ?」


 「 うん、ちょっとね。

   遠出するよ。午後の便を予約したから、今日はこれで帰るよ。

   後は頼む。

   仕事の依頼を受けるかどうかはシンディの判断に任せるとディックとダニエル

  には言っておくから。」


 シンディは、すかさず念話で問いかける。


 『 午後の便って、・・・。航空機なの?まさか、・・・外国へ?』


 『 皆が心配するといけないからな。内緒にしておいて。行く先は、ニカウディア

  だ。

   ワインの買い付けに行って来る。』


 『 だって、買い付けに本人が行かなければいけないの?先日の話では人を介して

  頼むような話だったけれど・・・。』


 『 今の電話はその仲介の人からなんだよ。だから、行くんだ。』


 それからすぐに、サムエルは口で言った。


 「 じゃぁ、行くよ。

   向こうからも連絡は取れる筈だ。

   帰る日が判ったら連絡する。」


 サムエルは慌ただしく、事務所を出て行った。

 確かに午後半ばの国際便ならば、今から準備をしても余り余裕はないはずである。


 留守番を頼まれたシンディは正直不安であった。

 その日も通常以上に来客は多かった。

 だが、左程判断に困るような依頼が無かったのが幸いであった。



 その夜もサルバディス・デライアは人質の女の一人を組み敷いて、盛んに腰を振っていた。

 女の名は、サンディ・トーラス。


 ニカウディアの農場主の娘である。

 ここに攫って来た時は男を知らない生娘だったが、既にここに来て2週間になる。


 毎夜、男達に抱かれてすっかり男の味を覚えてしまった。

 今もサルバディスの腹の下で、女の喘ぎ声を上げている。


 サンディは15歳、人質の中で抱ける女としては一番若い方だろう。

 他にも8歳と9歳の娘がいるが流石に女として抱くには幼すぎる。


 サルバディスの仲間にもそういう幼女嗜好の男はいなかった。

 一番上が42歳の女だが、まだまだ十分使えるものの、流石に一番で手をつけたがるものはいない。


 仲間は37名、女は24名だが、抱けるのは21名である。

 10歳の男の子も人質に一人いるのである。


 人質は数人ずつ丸木小屋に閉じ込めてあるのだが、21人の女性は毎夜男達の慰みものになって小屋に戻るのは深夜である。

 若い女はどうしてもお呼びがかかる回数が多い。


 サンディと後二人の若い娘は毎夜三人の男とお勤めをしてからでないと小屋には戻してもらえない。

 他の年増女達は精々二回止まりだが、間違いなく一晩一回は抱かれる羽目になる。


 抱かれるたびに男は無論違うことになる。

 サルバディスの後釜は既に一人が外で待っている。


 サルバディスは、今日は籤運が良く、最初にサンディ、その後19歳のクレア、最後に24歳のヴァリスである。

 どの女も肌が綺麗な女であり、サルバディスの好みだった。


 サルバディスの腰の振りが大きくなって、女が切ない喘ぎを漏らし始めた。

 サルバディスが二度三度と放出して、女の喘ぎが止まった。


 女はびくつくように身体を震わせている。

 サルバディスは、いつものように黙って女から離れると下着だけつけて外に出た。


 エンリコが外で待っていた。

 入れ替わりにエンリコが小屋の中に入って行く。


 サルバディスは、外の窓際に置いてある煙草を手にとって一服した。

 やがて、サンディのすすり泣くような呻き声と喘ぎが始まった。


 ふっと口元で笑うと、サルバディスは次の小屋に向かった。

 リックがクレアを抱いている筈だ。


 あいつはいつも遅い。

 一人の女に1時間近く掛けるのはリックだけである。


 目当ての小屋に近づくと、外までドア越しにクレアの喘ぎ声が漏れて来る。

 クレアは生娘では無かったが、男との交わりは左程多かった訳ではないようだ。


 ここに来た時は、抱かれることに盛んに抵抗していたものだが、ここに来て1カ月近く、今は抵抗のかけらも見せない。

 運命を甘受し、すっかり諦めたようだ。


 その夜も21名の女達は小屋で切ない喘ぎとすすり泣きを漏らしながら男達に貫かれていた。

 二時間後、サルバディスが、半分気を失っているヴァリスを担いで、丸太小屋に放り込んだ。


 既に深夜である。

 リックがクレアに時間をかけすぎた性で、ヴァリスの分は随分遅くなったのである。


 サルバディスも三人目の女になると流石に中々終わらない。

 それでも半分気を失いかけているヴァリスに放出できたのは、ヴァリスの若い肌の性だろう。


 これが年増女だと途中で嫌気がさしてしまうことになる。

 年増女は一人目か二人目までである。


 今日の見張り番は、アンディとフラナガンのはずだ。

 共にこのアジトに近づくためにはどうしても通らねばならない谷底の道を暗視カメラで覗きながら張り番をしている筈だ。


 夜の見張り番は、翌日一人目の女を優先的に指名できる。

 アンディとフラナガンは、サンディとクレアのどちらかを指名するだろう。


 サルバディスも流石に疲れを感じて、あくびをしながら自分の小屋に戻った。

 アンディとフラナガンは、二人とも退屈を紛らせながら張り番についていた。


 万が一の場合は、崖に仕掛けてある爆薬を点火することになっている。

 崖の両側に仕掛けた爆薬は谷底の道を埋めるのに十分な量がある。


 しかも、アンディがいる西側、フラナガンがいる東側のいずれの場所でも点火できるようになっている。

 ニカウディアの国軍までが出動して、彼らの捜索を始めたのであるが、国軍は専らここから100ミロンも離れたジブ峡谷を捜索している。


 人質の金の受け渡しが専らその近辺で行われていたからであるが、頭目のサルバディスは悪賢い。

 ジブ峡谷とは離れたデラマル峡谷にアジトを作り、しかも山賊行為を働くのはジブ峡谷周辺かそれよりも遠方に限ったのである。


 それだけの手間をかけたメリットがあった。

 警察や国軍の目はジブ峡谷一帯に向けられ、デラマル峡谷にまでは目が向かないのである。


 仮に航空機で探しに来ても彼らのアジトはわからない。

 峡谷の一部が崩落をしている箇所に広い空洞のようなスペースがある。


 崖の上からネットを被せて偽装しているので、余程間近に迫らない限りは、そのような空洞があるとは誰も気づかない。

 人質は目隠しをして連れてきており、ここがどこなのかは知らないはずである。


 まして、人質は昼間の間は、窓の無い丸木小屋に押し込められている。

 丸木小屋の一部にドアなどの隙間があるから昼夜の区別は付くだろうが、そこから見えるのは崖の一部だけである。


 金と引き替えに人質が解放される時も、目隠しをされ、なおかつ何時間も迂回路を引き回されるから人質に場所の特定などできるはずもない。

 サルバディスの仲間達はこうして生き残っていたのである。


 武器も弾薬もたっぷりとある。

 二年以上も前に隣国のベラフィル北部の反政府ゲリラから仕入れた武器弾薬である。


 弾薬はその後も定期的に一定量を備蓄するようにしている。

 アンディもフラナガンも暗視スコープのついた比較的新しいサブマシンガンを手にしているが、生憎と見張り番でこれを実際に使った者はいないはずである。


 何しろ一番近い人家まで20ミロンは離れた山間部である。

 昔鉱山があった関係で、一応の道らしきものはあるが、降雨期になるとぐちゃぐちゃの泥道である。


 ジープでなければとても踏破できる様な道ではない。

 彼らが出撃する時は専らそのジープである。


 ジープは屋根のついた立派なもので8台あり、最大で32名が出撃することもできるが、人質や略奪品の運搬を考えると通常は1台に3名以上は搭乗しない。

 移動の際は極力夜間に行い、なおかつ交通量の多い道路は避けているし、ジープが集団で走るようなこともしない。


 そうして各拠点には別の車が置いてある。

 普段はそうした拠点で車を乗り換えて略奪に出掛けているのである。


 見張り場所になっている場所は、崖の頂上に近い場所に有る岩棚である。

 其処までは縄梯子で登って来るしか方法はない。


 夕暮れ時に上って来た張り番はここで一夜を明かすことになる。

 小さな石の粉末を噴き付けたテントは遠目には岩肌と区別が付かない。


 そのテントと寝袋だけの見張り場所である。

 彼らはその中で張り番をするのだが、寝ずの番と言うわけではない。


 適宜、寝てもいいことになっている。

 谷底の道には色々のトラップが仕掛けてあり、そのことを知らない不審な者が来れば、見張りにわかるようになっているのである。


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