102日目 喧嘩

「……来てるね」

「来てますね」


思っていたより時間がかかってきましたね。

息子がかなり切羽詰まって忠告しに来たようだったので、すぐに来るかと思っていたんですけど。

え、でも本当に全軍万全の体勢みたいですね。


「どうします? プリンセちゃん」

「……決まってる。リブレさんを、守るよ」

「ですね」


この2日前くらいに大喧嘩がありましたけどね。




「プリンセちゃん」

「……なぁに?」

「私が、別の場所に行けばリブレさんは安全なのではないですかね……?」

「……怒るよ?」


エルフ達の目標はあくまでも私です。

リブレさんは私を連れ戻すための障害になると思われているから狙われてしまいます。

私が、リブレさんから離れたと判断されたならリブレさんを襲う必要性は無くなります。

ただ、それは今まで頑なに離れなかったのにリブレさんのところから離れるという事になります。

もちろん、離れたくはありませんがリブレさんが危険な目に合うよりは……。


ヒュウッ!

ガガンッ!


「!? 何するんですか!?」


音を置き去りにプリンセちゃんがリブレさんの小太刀で斬りかかってきました。

咄嗟に短剣で受けましたが、パワーでは敵わないので飛び退かざるを得ません。


「……レインちゃんが、弱気なことを言っているのが気に入らない」

「弱気なんかじゃないです! 私はリブレさんの安全をと……」

「……、なら! レインちゃんの横以上にリブレさんにとって安全な場所なんてあるの!?」


……。


「……リブレさんは、いろんな人からよく思われてないんだよ? エルフさんたちがレインちゃんを狙ってるって言っても、前の話が本当ならその操っている人はリブレさんを狙うんじゃないの!? わたしが、わたしが守ってあげたいけど、わたしじゃ、守れないんだよ……?」


途中からボロボロと涙をこぼしながらまくしたてるプリンセちゃん。


「なにより! ……リブレさんが一番そばにいて欲しいのは、レインちゃんじゃないの……?」


……。


「リブレさんは、命を懸けてレインちゃんの居場所を守ったのに……。……レインちゃんは、リブレさんを見捨てるの……?」

「そんなわけないじゃないですか!」


私が、どれだけ悩んだと……!


「……なら、命懸けでリブレさんを守ってよ! レインちゃんなら、できるんだよ!?」


……。


「そんなこと言うレインちゃんはこの家にいちゃダメ! 出てって!」

「え、でも、ここ私の家……」

「出てって!」


ガチャ。

ポイと外に捨てられてしましました。

鍵までかけられましたし。


「でも、これだとリブレさんの傍からそれこそ離れちゃうんですけど……」

「……あ」


気まずい沈黙。

カチャリ。


「……反省したら、帰ってきていいよ」




「……レインちゃん、約束は守ってね」

「もちろんです。リブレさんを守って、自分の身も蔑ろにしません」


全力を以て相手をします!

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