87日目 警告

「で、今日は何の用です?」


今日もお客さんが来ました。

お客さんと言っていいのかわかりませんけど。

私が出たくないのでプリンセちゃんに出てもらいましたが、敵意はなさそうだからと連れてこられました。


「……忠告にきたんだ」


お察しの通りエルフの長の息子です。


「新手の脅しですか?」

「違う! 俺は、本当にお前のためを思って……」

「とりあえず、話だけは聞いてあげます。なんですか?」


一度落ちた信頼はそうそう戻ることはないのです。

まぁ、そもそもこの人を信頼したことなどありませんけど。


「……父上が全戦力をここに向けようとしている」

「またですか?」


懲りないですね。

というか、そこまでして私にこだわる理由があるようには思いませんが。

これで私を倒せたとして、私が従うわけがないですし。

プリンセちゃんもいるからドルガバとの関係も悪くなりますし。


あ、でもそういえば私が操られていた謎の手法があるんでしたっけ。

リブレさんの小太刀で解けたらしいですから魔法なのは間違いないと思うんですけど、少なくとも私はその魔法を知りません。

私がリブレさんを信用しきれなかったという弱みに付け込まれていたと言っても、二つ名ダブル持ちの私にかけるということはそれなりに強制力のある魔法のはずです。


「それほどまでに私の力が欲しいということですかね」

「罪滅ぼしになるとは思わない。だが、こうでもしないと俺の気が済まない」

「つまり、恩に着る必要はないと?」

「俺はリブレ、さんに恩を返しているだけだ。正直、俺も父上がなぜそこまでレインに」

「ん?」

「……レインさんに固執するのかはわからないんだ。もっと堅実なイメージだったが」


そう。

そこです。

私の記憶をたどっても長は堅実な方で、基本的には外敵など作りたがらない方です。

私を中途半端にでも使役していた時でさえ、大きな動きは見せなかったのですから。

しかし、ここ最近は自分から敵を作りに行っているかのように感じます。

まるで、何かにとりつかれたかのように。


……。

ちょっと待ってください。

前にそんな事例がなかったですっけ……?


「今日はそれだけだ。邪魔をして済まなかった」


長の息子はそれだけ言い残して帰っていきました。

本当に、リブレさんに悪いことをしたと思っているのでしょう。


ただ、今はどうでもいいです。


「あ!」


思い出しました!

リブレさんと会ってから最初の騒動です!

確か、王国の偉い人が何者かに操られていて、みたいな事件でした。


あの時、その誰かさんはいずれまた来るといった感じの捨て台詞を残していたような気がします。

となると、その本人かはともかく、操られている可能性が非常に高いですね。

しかし、私にはリブレさんみたいに都合のいい眼があるわけでもないですし。

どうしましょう?

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