56日目 抱擁
「……だいじょうぶ」
「……信じますよ?」
プリンセちゃんのお母様からリブレさんに会わせて欲しいと言われ、迷いましたがプリンセちゃんにも諭されたので、部屋に案内することにしました。
流石に常識ありそうな方なので信用したいですが、リブレさんが全くの無防備なので安心できません。
「こちらです」
「どうもありがとうー」
お母様は楚々とした足取りでベッドに近づき、眠っているリブレさんの隣に座りました。
そして、そのまま頭を撫でます。
「……ね、だいじょうぶ」
「そうみたいですね」
お父様が凄い拒絶反応を示されていたので、お母様もかと思っていましたが。
「レインちゃん、でしたっけ?」
「は、はい」
「心配になる気持ちもわかるわー。でもね、母親は、娘が好きになった相手を無下にすることはそうそうないわよー」
そこまで把握済みでしたか。
「でも、私にはわかりませんから」
両親はもういないですし。
自嘲気味に、心の中でそう呟く。
「レインちゃんも、こっちにおいで?」
呼ばれるがまま行ってみると、頭を抱き寄せられました。
息がっ!
「よく、頑張っているわねー」
「!!」
「プリンセから聞いたわー。あなたは頑張りすぎちゃうきらいがあるみたいねー。それ自体はとってもいいことよ? それほど自分に嘘をつかないというのはそうそう出来ることではないからねー」
「でも、たまには吐き出してもいいんじゃないかしら?」
「……」
「以前まではリブレ君がその役割を担っていたのでしょうけどー。うちの娘なんかどう? あなたにとって信用できない相手かしらー?」
ふるふる。
パフパフ。
「それならよかったわー。同じ人を好きなもの同士、恋敵という印象が強いのかもしれないけれど、それが全てではないでしょう? 人に頼るということも学んだ方がいいと思うわー」
こくこく。
ぱしぱし。
「あらあら、いきなり甘えてくれるのかしら?」
「……おかあさん、たぶん、違う」
「あら、なんで?」
「……それは、リブレさんがやってた降参の合図。苦しそう」
死ぬ!
死にます!
呼吸が!
「あら、思いっきり抱きしめちゃったからね。ごめんなさいね」
「ゲホッ。スゥー……、ハァー……。いえ、大丈夫です……。心配してくださって、ありがとうございます……」
最初こそ息が出来ないとは思いましたが、包容力が勝っていました。
しかし、ある一定時間を超えてからは逃れられない恐怖がふつふつと沸き上がり、気付いてしまってから一気に息も苦しくなりました。
恐ろしい体験でしたね……。
とにかく、お母様の言いたいこともわかります。
我ながら、リブレさんに依存していますからね。
どうにかしようとしてどうにかなるものでもないかもしれませんし、あまりどうにかする気もありませんが、プリンセちゃんくらいなら、もっと頼ってもいいのかもしれませんね。
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