恋愛に嘘はご法度です

「ねぇ、リブレ……」

「んー?」

「ここだけでも、私たちが付き合ってることにしちゃダメかなぁー?」

「ダメだな。それだけはダメだ」


恋愛とか、そういう浮ついた話に一番ダメなのは何か。

俺は「嘘」だと思う。

一番よく言われるのは浮気だろうが、これも嘘の一種だろう。

正式な相手がいるのに、それを差し置いて他の人とイチャコラしてるというわけなんだから。


嘘の何が悪いかって、いずればれるという事だ。

嘘も方便という言葉があるが、その時点から大分経った後にその嘘が露見して、「あれは君を想ってだったんだよ」とか言われても嘘をつかれていたという事実は消えない。

まぁ、とにかく嘘はいけないことなのだ。


で。


「だけどな、俺に関する話を出した時点で凄い拗れる気がする」

「そうなんだよねー……」


相手からしてみれば、意中の相手には想い人がいるが、その相手は答えられないと言っている。

しかし彼女は諦めきれないらしい、と。

もう俺がただの障害物でしかなくなる。


もうそれこそ決闘を挑まれたり。

そんなもん俺が断ってしまえば終わるのだが、そうなるといつ闇討ちされてもおかしくない。

どうにか対策を考えないといけないな。

いや、まぁ、そもそも闇討ち自体は気にするようにはしてるんだけども。

ちゃんとオーシリアにステッド・ファストで囲ってもらってから寝るようにしてるし。


しかし、今回はリオンに向けてる感情がしっかりとした好意なだけに簡単に敵対はしたくない。

どうせ決闘とかにされても死ぬし、俺が。


どうにか相手が納得する形での言葉での解決を目指したい。

……1ミリも思いつかんが。


いや、だってさ。

烏滸がましいことを言わせてもらえば、俺は選ばれた側だし。

何を言ってもどうにもならんよな。


「どうすればいいと思う?」

「もうリオン様と婚姻なさればいいのでは?」

「良いこと言うねー」


よしよしとリオンが俺の膝から起き上がってトロワの頭を撫でる。


「お前はなぜそっち側なんだよ」

「いえ、私としては前例が出来ればと思いまして……」

「なるほど、戦争だな?」


もうみんな敵だ、このやろー。

どうするかなー。

従者の部屋(?)として割り当てられた1室の隅のベッドでずんだ餅を頬張りながら考える。


「ねぇー、リブレー。私もこっちで寝たいよー」

「ちょっと待って今考え事してるから」


かまってちゃんしてきたリオンに待てをすると、ガーンという顔をしてすごすごとメイドたちの下に帰っていった。

よしよしして慰められてる。

凄い仲良くなってるな!?


いや、今はそれはいい。

もう、争いはいいことにしよう。

そう思っていないと、どうせ後でそうなりそうな気がするからな。


となると問題は。

どう俺に有利な条件を引き出すかだ。

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