代わりはいないのです

納得できないレインは必死に他の案を探す。


「なら、キラさんが持てばいいじゃないですか! リブレさんより強いですし!」

「うん、確かにキラの方が強いんだけどな。そうもいかないんだ」

「なぜです!?」

「キラ」


これは俺が言うよりキラに言ってもらって方がいいだろう。


「レイン君、僕はこの小太刀を持てないんだよ」


現れてからなぜか普通に会話に入ってくるキラ。

どこで聞いてたんだよ。


「どういうことです?」

「レイン君も持ってみればわかると思うよ」


『?』って顔をするレインに俺は小太刀を手渡す。


「これは……」

「そう、MPが吸い取られるんだ」


俺はレインから返してもらった小太刀で靄を斬りはらいながら言う。


「でも、リブレさんはそんなこと一度も……」

「そう、そこが肝なんだよ。なぜか俺は吸い取られないんだ」


まぁ、推論はあるけど。

恐らく、属性魔法に対してこの小太刀は効き目があるのだ。

これをキラに渡して、MPが吸収されるとわかった時に試してみたのだが、ステッド・ファストの解除は出来なかった。

つまり、無属性には効き目がないようだ。


「この世界の仕組み的に、魔法の得意不得意があるのはMPにその属性が含まれているかどうかという話らしい。だから、全属性持ってるレインは特に吸い取られるだろうし、雷のキラもそれなり。だけど、俺は無属性だから吸い取られないんだよ」


ほんと、魔法は努力次第でどうにかなるかもと思っていた時代が懐かしいね。

だって、俺にはもう才能センスないよって世界に言いきられてるわけだから。

もはや諦めもつくよね。


「でも、他に何か方法が……」

「あぁ、他に何かあったらぜひ教えて欲しい。だが、今は俺が行くのが最善の案だ。だから、このままでいく」


泣きそうな顔で、ただし自分の役目である攻撃の手は緩めないレイン。

偉い。


そんな偉いレインの頭に手を置いて、俺は言う。


「そんなに心配するなって。俺だって死ぬ気は毛頭ないから。というか死ぬくらいなら逃げ出すから」


今回の戦いの勝利条件は「誰1人欠けず、幻想級ファンタズマルの討伐」だ。

俺が死んだらそれはそれで負けなのだ。


「……わかりました。ただし、ほんとに生きて帰ってくるんですよ!?」

「わかったわかった。肝に銘じておくよ」



俺は突っこむ位置取りのため、レインとケインそれぞれに靄の処理を任せて距離をとる。


「リブレさん!」


と思ったらレインが近づいてきた。


ちゅっ。


かと思うとキスをしてきた。

短いキスだったが、感情を視ればわかる。

レインにとっての精一杯の励ましだ。

これでやる気が出ない奴なんていないよな。


再びレインと距離があいたのを確認する。


「キラ」

「うん」

「俺も死ぬつもりは毛頭ないけど、死ぬ以外だったらなんでもあり得ると思ってる。もし、俺の意識がなくなったりして倒せてなかったら」

「うん、その時は君を連れて撤退するよ」

「あぁ、迷惑かける」

「いやいや、迷惑をかけてるのは僕らの方だからね。まさか置いていくなんてことはしないよ」


レインの次にこの世界で付き合いが長いキラと笑いあう。

出会う人に恵まれたな。


さぁ、いっちょやってみますか!

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