ここからが本番説

「どうだ?」

「あ、やっぱり大丈夫っぽいです」


地上5メートルにきてもらったレインに確認を取るが、やはり大丈夫なようだ。

これでけっこう楽になるぞ。

なぜなら、周りのエネミーを気にしなくていい。

個体ごとでは何も脅威にもならないわけだが、なにぶん数が多いので面倒だ。

そっちの相手をしながら幻想級ファンタズマルにも注意するというのはキラでもない限り無理だ。


「よし、じゃあこの辺りでどうにかするぞ」

「と言われましても、僕には足場が見えないんですけど」

「心配するな。足場を大きくしとけばいいんだろ? オーシリア」

「了解じゃ」


10メートル四方くらいのステッド・ファストの足場が出来る。


「えっとな、大体5歩とかならどう動いても落ちることはないから」

「非常にわかりにくいですね!?」


早速迫ってきた靄を避けながらレインが文句を言う。

しょうがないだろ。

ちゃんとした単位が制定されていないのが悪い。


「そういえば、リブレさんのステッド・ファストでもあの靄は防げないんですね」

「そうなんだよ」


少し前に試してからわかっていたことではあるのだが、俺の生命線であるステッド・ファストでもあの靄はいとも容易く貫通してくる。

レインの闇魔法に対して少しなりとも抵抗できたことから、時間稼ぎくらいにはなるんじゃないかと思っていたのだが、そう甘くはなかった。

そもそも「吸収」っていう属性で、ステッド・ファストを超えてくる時点で闇魔法だろうとは思っていたが、幻想級の使う闇魔法は桁が違うってわけだな。


「なら、靄が飛んできたところの床がなくなってるんですよね?」

「そこは、オーシリア。埋めておいてくれ」

「わかったのじゃ」


俺のステッド・ファストは1枚につきMPを消費するようになっている。

大きさにも多少は比例するが、枚数に拠るところが大きい。

だから、埋める作業でMPはどんどん減っていってしまうのだが、しょうがないだろう。

そもそもMP消費が少ない魔法だ。

こんな時くらい大盤振る舞いしなくてどうする。



「リブレ君」

「! そっか、キラは乗れたんだった」


横からいきなり声が聞こえたので驚きはしたものの、キラだという事を確認して驚きも小さくなる。

ほんとにこいつはどういう原理でステッド・ファストの層を認識してるんだ?

俺とオーシリアだけにしか見えないはずなんだけどな。


「で、どうした」

「うん、王様に言ってきたよ。すぐに退却の命令が出るはずだね」

「そうか」


訓練をしてきた皆には申し訳ないが、ここからはガチでどうしようもない領域だ。

二つ名ダブル持ち、族長クラスの実力がないと足手まといくらいにしかならないだろう。

俺が足手まといではないのかと言われれば微妙なラインではあるけれども。

ギリギリ役に立っていると思いたい。

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