好きなものは先? 後?

「それは、幻想級ファンタズマルにという意味かい?」

「もちろんだ。あいつにまだ剣が通るのかどうかを確かめたい」


先ほどの俺の予想が正しければ、鉄である剣ならば攻撃は通る。

さらに、キラであれば速いのでもう1つの方の予想もカバーできる。


「なるほどね。了解。行ってくるよ」

「軽いな!」


一歩間違えれば死ぬんやぞ。


「間違えなければいいんだよ。じゃあ、行ってくる」


かっけぇ……。


「レイン、キラの援護だ。光魔法は一旦全員中止。土魔法に絞ってくれ。キラ、俺がシェイド・ハイドで一応隠すから」

「わかりました」

「いいよ」


シェイド・ハイドは対象者を影の中に隠す魔法だ。

今日の月のようなものは雲に隠れてほとんど姿を見せない。

この環境下ならその全てを陰とみなし、その影の中に隠すことが出来る。


「気休めにしかならないだろうけど、まぁないよりましだろ」

「そもそも、幻想級がどうやって僕たちを判別しているのかわかってないですしね」


一応、目のようなものはあるのだが、光ってるし、見えてるのか?

そもそも、俺たちを判別しようとしているのかさえ定かではない。

こうやって手下どもを出している以上、認識はされているのだろうが、有象無象として個別に認識はされていないような気がする。


だって、判別出来たらレインとかを真っ先に狙うだろ。

ずっと攻撃されてるわけだし。


「戻ったよ」


俺がシェイド・ハイドをかけてからまた文字通り光速で戻ってきたキラは先ほどよりは疲弊していないようだ。


「どうやら、攻撃はちゃんと通ったみたいだが、あまり疲れてないな?」

「うん、さっきよりMPを吸われる量は多かった気がするけど、慣れたよ」


皆さん、聞きましたか。

この化け物の言い分を。

「慣れた」って。

どう考えてもおかしい。


「……とりあえず、光魔法をもう一度解禁。削ってくれ」

「……了解です」


呆れに呆れた俺とレインは謎の間を置きながらも次の行動に移る。


「エルメとケインは問題なさそうだが、手が空いている奴は1体ずつでいいからあいつらの相手を減らしてやってくれ」


リスクは分散させた方がいい。

如何にあの2人と言えども、事故が起こる可能性は否定できないからな。


「レイン、ここは任せる。一旦俺はカイルさんと話し合ってくるから」

「了解です」


ここまで局面が動いたんだ。

折角の未来予測。

なにか視えていてもらわなきゃ困る。


「ということで来たんだけど……」

「どうやら順調らしいな」

「順調と言っていいのか怪しいけどな」


まぁ、犠牲者がいないってところでは順調か。


「おうともよ。最後は逃げりゃいいんだからな。犠牲者が出ないならそれに越したことはない」

「それでなんだが、なにかこの先で視えているものはあるか?」

「聞きたいか?」

「是非な」


「お前は好きなものを残しておく派か? それとも先に食べる派か?」


出た、その問い。

でも俺、この問い意味ないと思うんだ。


「好きなものは後に残しておく派だが、情報は良い方を先に聞きたい派だ」

「そうか、安心しろ。どちらもあんまりいい情報じゃないからな」


え、なんで聞いた?

ねぇ、なんで聞いた?

いい情報あるのかと思ったじゃん!

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