大きなものには大きなもので
とりあえず
全員で野営の準備を進める。
「えっと、これはどこにどうすればいいんだ?」
全く外出などしていなかったことが祟って1ピコも役に立ってない俺。
キャンプの経験があるわけでもなし、テントの立て方もわからない。
いない方が早いまである。
「リブレさん、こっちを手伝ってくれませんか?」
それを知ってか知らずか食事がかりのレインが声をかけてくれる。
「はい……」
とぼとぼと簡易調理台に向かう俺。
哀れだ。
テント張るのよりキッチンで包丁握っている方が似合ってるんだ俺は……。
「……家庭的な男の人も、いいと思うよ……?」
「気遣いありがとう……」
6歳に男としての尊厳をフォローされる俺……。
フォロー自体は嬉しいのだが、それはそれとしてなんか悲しい。
いや、いいんだよ?
男が料理出来たらいいなっていうのは。
だって女でも料理出来たら凄いなってなるじゃん。
謎に卓越した魚を捌く技術を遺憾なく発揮して下準備を着々と進めていく俺。
戦闘前最後の晩餐だからな。
全員で豪勢に食べることになってるから料理はどれだけあってもいい。
「リブレ君、これここに置いておくね?」
「あぁ……。あぁ!?」
最初は流してしまったが、そこに置かれていたのは大きなマグロのような魚。
どう捌けと?
しかもそういうのに適した包丁があるんじゃなかったっけ?
こんなちっさいので出来ないだろ。
やるしかないんだけども。
「あ、やっぱり足りない」
包丁の長さが。
2回に分けてやるか。
「よくそんなに大きな魚触れますね……。食べられそうじゃないですか……」
「……(ぶるぶる)」
レインとプリンセは少し離れたところで見学している。
プリンセはレインの腕に引っ付いているが。
「いや、普段からもっとヤバいのとやりあってる奴らが何言ってんだ」
エネミーとか基本的に論外なのしかいないだろ。
なんだよ、ゾンビって。
いてたまるかよ。
いたんだけど。
「それは別ですよ。だって、僕らは基本的に魚をあんまり見たことがないわけですし」
「それはあるかもな」
基本的に見たことがないもの、正体がわからないものだから怖いわけだし。
お化けもしかり。
いずれ科学でお化けが何なのかが解明されたりしたら怖さは薄れるんだろうな。
それでも信じない人はいるし、人それぞれだろうとは思うけど。
「こんなに大きな魚はそうはいないからな。そんなに怯えなくていいぞ。そもそも死んでるし」
「前から思ってたんですけど、リブレさんの村って海が近いんですか?」
「あ? あぁ、そうなるな、うん」
そういえばそんな設定だったわ。
一瞬本気で疑問に思ったわ。
「……行ってみたいね」
「そうですね。海を見てみたいです」
「機会があればな」
俺の故郷を訪れる機会は来ないと思うが。
海くらいは見せに連れて行ってあげたいな。
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