凡才は痛い思いをして成長するんです

「ちなみに、エルメがキレたってことは2人は手を出さなかったのか?」

「僕はなにもなかったですよ」

「なるほど?」


つまり?


「プリンセちゃんは1人1発ずつぶちこんでましたよ」

「どうしてそうなった」

「えっとですね、関与してた人たちは認めはしたものの、エルメさんにぼこぼこにされてもあんまり反省の色が見えなかったんですよ」

「うん」

「で、もういいやって気絶させる最後の一撃をプリンセちゃんが担当したんですよ」


へー。


「でも、そのときはやけにプリンセちゃんが積極的で。すぐにいったんですよ。プリンセちゃんって戦闘は好きですけど、弱いものいじめはリブレさんと違ってしないじゃないですか」

「俺もしないけどな?」


どういうイメージ?


「だから、そのときだけすぐにいったのが違和感があって聞いてみたんですよ。そしたら『わたしがやった方が周りから見ておかしいことだってことがわかるでしょ?』って言ってました」


ほー。

俺はカードに集中しているプリンセを見やる。


エルメのような人間や、エルフであるレインがとどめをさしてもなにも思わないだろう。

だが、第三者である獣人族のプリンセにやられればおかしいってことが如実に伝わるってことか。

まぁ、あれがちゃんとそれを汲み取ってくれるか疑問だが。


しかし、プリンセの頭の回転は本当に6歳とは思えないな。

どうやったらあんないい子に育つんだろうか。

性格的な意味でも頭的な意味でも。



「あ、そういえば、その時にプリンセちゃんがリブレさんと一緒のことやってましたよ」

「なにしてたんだ?」

「あれですよ。一撃に自分の体重をのせて脳を揺らして気絶させるやつです」

「あー」


キラにならってた発頸みたいなやつか。

いや、でも、あれ?


「プリンセはあのときに習ってないよな?」

「はい。あの場にはいましたが、リブレさんが鍛えられているころされかけている時に一緒に聞いていたというわけでもなかったです」


ならなんで出来るんだよ。

才能?


「あの最後の訓練あったじゃないですか」

「俺しか苦労しなかったやつな」

「どうやらあのときにリブレさんがやってるのを見て覚えたみたいですね」


結局才能だった。

なんで俺が血が滲むどころかバリバリ流してやっと出来るようになったやつを見ただけで出来るんだよ。

憤慨通り越して呆れにまで至ってるからツッコミにも力がないよ。


「プリンセちゃんは戦闘そっち方面の才能が凄いですから。仕方ないとまで思いますよ」

「それはそうなんだけどな!? そこで諦めたら俺の努力が可哀想だろ!」


あまりに不憫だ。

いくら回復魔法でレインに治してもらうからといっても痛いもんは痛いのだ。


キラが天才型というか天才そのものなので習うより慣れろでしか教えられない。

よってキラのそれを俺はやられにやられて覚えていったのだ。

おかげで痛みにはある程度の耐性はついたな、うん。

本来なら全く要らないような耐性ついてしまった。

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