もはやオーダーメイド

「……どうした?」

「あんまり見ないでください……」

「……どう?」


レインが赤面して顔を伏せてるのに対し、プリンセはワクワク顔だ。

いや、理解が追い付かない。


「いや、かわいいよ? 目の保養だよ? でも、なぜかな?」


椅子の横から「褒めて褒めて!」って感じで見上げてくるプリンセを撫でながらレインに問う。


「いえ、僕にもわからないんですけど……。なぜかプリンセちゃんがこれ持って満面笑顔で立っていまして……」

「流れそのままに着替えてしまって今に至ると」

「そういうことになります……」


プリンセはご満悦らしく、尻尾がユラユラ揺れている。


「プリンセ、これどっから持ってきた?」

「……んーと、お城でリブレさんを待ってる間に、冒険者のお姉さんがくれたよ? えーと、『頑張ってるリブレさんにご褒美ですよ! これを機にしっかり目に焼き付けておいてね!』って言ってって言われた気がする……」

「お気遣い痛み入ります!」


どんな気の回し方だよ。

いや、まずその人は誰だ。


この世界で水着というものを見たことがなかったから、ないものかと思ってたけど、文化としては存在していたのか。

この国が海とかが近くにないから出回っていなかっただけかな?

どこか海があるような場所に行ったことのある冒険者の方がいらない気を回してくれたのだろうか。



「で、なんで今?」

「そのお姉さんによれば、いきなりそれで現れればリブレさんの機嫌うなぎのぼり間違いなし、と言っていたらしいので……」

「……ちょうど、よかった」

「なるほど、わからん」


そのお姉さん的にはサプライズのようなことを言いたかったんだろうけど。

プリンセはいきなり現れる、の部分を重要視したらしい。

というか多分そのようにしか覚えられなかったのだろう。

しっかりしているといってもまだ6歳なわけだし。



ひとまず状況を理解したところで改めて2人の恰好を眺める。

レインは水色のシンプルなビキニ調の水着に、いつもの白いエプロンを重ねている。

滑らかな白い肢体に、恥ずかしさで上気した頬のギャップが何とも言えない。

素晴らしい。

プリンセは年相応のスク水にいつものピンクのレース付きエプロンなのだが、白いスク水というのに作者のこだわりを感じる。

かわいい。


というかサイズもだし、ここまで本人にぴったりな色を用意することとか出来るか?

もしかしたらその例のお姉さんによるオーダーメイドである可能性はないか?

だとしたら是が非でもそのお姉さんを見つけ出さねばなるまい。

そして感謝をささげる必要があるだろう。


「……そもそも、この服にはなんの意味があるんですか?」

「水に入れるようにするためだな。男女一緒に」


え、そうだよね?

水着の意味とか考えたことなかったけど。

水に入れる着るものだから水着だよね?


「……じゃあ」


なにかを思いつき、プリンセがさらに笑顔になる。


「……これで、いっしょにお風呂に入れるね?」


え。

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