眠いと気性が荒くなりがち

「幸い、エルフ方から誰かを差し出せなどといった要求はない。よって、侵入しておったのがキラとリブレだということはわかっておらんようじゃ」

「問題はそこなんだよな」


エルフの対応は迅速だった。

俺たちが離脱してからこの城に戻ってくるまでに連絡がきているほどの早さだ。

最早異常なまである。

しかし、その正体が俺たちとはわかっていない。


確かに俺の姿を知ってる奴は少ないだろうが、キラは昔から国に仕えてるし、多少なりとも知名度はあるだろう。

それを含めてもあの場にいたエルフ達はキラを知らなかったということになる。


更に、レインだ。

俺たちの姿を知ってるなんて次元ではなく、下手すればその能力すら知っている。

実際に交戦しているし、真っ先に俺たちを知らないか聞かれるだろう。

実際聞かれてたっぽいし。

それで、なにも言っていないというのが不可解だ。

戦ってる時はあんなにガチで殺しにきてたのに。


「あぁ! もう! わからん!」


レインが何を思って俺たちの名前を出さなかったのか、だと!?

圧倒的に情報がない!

「俺たちを守りたいから」みたいな俺たちに都合のいい理由しか浮かばん!

ま、いいや、今は。



「で、こっちはなんか変わったことあったか」

「特にはない。避難も順調。国に残り、戦うかの意思の確認も進めておる。これ以上ないほど順調と言って差し支えないじゃろうな」

「そうか」


まぁ、そうだろうな。

こういう時に他の大きな事態が起こるのはフィクションだからだ。

実際にはこんな時にそのような事態は起こったりしない。

そんなことよりすることがあるからだ。


「となると、今の俺たちに出来ることはないな?」

「そうなるのう。ハンネの解析を待つのが良いじゃろう」

「ってことは今日はもう帰っていいか?」

「う、うむ、やけに急ぐのはなぜじゃ?」

「しんどいからだよ!」


深夜の強行軍からロクに休憩もとらずにレインと戦ってきてるんだぞ!

やってられるか!

MPももう尽きてるんだよ!

最後に!

眠いんだよ!


「うむ、今日は帰ってもらって構わんぞ」

「よし、帰ろう! 今すぐ帰ろう!」


日中だが知ったことか!

寝たいときに寝るんだよ!



しかし、帰るにしろ人目を避けて帰らねばならない。

なんでこんな芸能人みたいな生活してんの。

どっちかと言えば犯罪者か。


「キラ、あのローブ貸してくれ。で、この鎧返すわ」

「いいけど、その鎧はまた使うことになるんじゃないかな」

「それでも預かっておいてくれ。そもそも国のだろ?」


邪魔だし。


「わかったよ。じゃあこれは戻しておくね」

「頼んだ」


帰ろう。



俺はローブに身を包み、普通にいたらまず間違いなく職務質問じあんになる格好で家に帰る。

ほんと、悲しくなってくるな。


「ただいまー……」


やっとの思いで家に帰り着く。

恰好が怪しかったからけっこうな視線にさらされたな……。

あれでもまだましな方ってのを考えると気が滅入るな……。


「おかえりなさい!」

「うっ!?」


ちっさい塊がお腹の辺りに突っ込んできた。


「良かった……。どこも怪我してない?」

「うん、強いて言えば今したかな……。ただいま」


プリンセの頭を撫でながらもう一度ただいまを言い直す。

1日帰りが遅くなったからな。

心配していたんだろう。

それでも突撃かちこみしないあたりやっぱりエイグより優秀だな。

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