物の扱いは大切に
「よっと……」
夕方になって、もぞもぞと俺は布団から出る。
まぁ、元ニートにしてみればいくらでも寝ていられるのでそこに苦はない。
しかし、久しぶりにちゃんと寝た気がするなぁ。
筋肉痛の時は痛すぎてちょいちょい起きてたからな。
「あ、リブレさん、おはよう」
「うん、おはよう」
俺が居間に降りていくとプリンセがエプロンしててこてこ出てきた。
お手伝いって感じがしてかなり癒される。
実際は全部自分でできるわけだが。
6歳でこれって超絶凄いよね?
「杖使いが荒くないかの……?」
後ろからお盆を持ったオーシリアがよろよろとついてくる。
見れば、料理ののったお盆を運ばされているようだ。
実際にはオーシリアの方がはるかに年上なんだろうが、疲労具合から見るにプリンセにこき使われていたみたいだな。
もはや哀れである。
「あ、主! ひどくないかの? この娘が……」
「きりきり働いて」
「はい……」
なんという上下関係……。
この二人の間に何があったんだ……。
まぁ、オーシリアに疲労という概念はないはずなので酷使するのも間違っていないのかもだ。
表情にありありと出ている疲労感は気のせいだろう。うん。杖だし。
「わしも疲れるんじゃぞ!? ほれ、杖も乱暴に扱ったら折れるじゃろうが!」
現実から目を背けようとした俺の前にオーシリアが飛び出てきて必死に訴える。
うーん、それもそうか……。
「プリンセ、ちょっとは手加減してやったらどうだ?」
「だってオーシリアさんの覚えが悪くて全然進まないんだもん」
あ、一応「さん」付けはしてるんだ。
「なんでまたオーシリアに家事を叩きこもうとしてるんだ?」
「……オーシリアさんはリブレさんの
なるほど。
「で、本音は?」
「……今日ついていけなくて悔しい……」
プリンセは俯いて目をそらす。
「それでついてくるオーシリアにあたってたのかよ……」
「とばっちりもいいとこではないかの!?」
ほんと、びっくりするほどオーシリアに非がないな。
「今回はついてこれないけどな。プリンセならすぐに俺が頼るようになるって」
「……ほんと?」
「そりゃそうだろ。既に昨日も戦闘で頼っただろ?」
「うん……」
「また今度助けてくれ」
「わかった」
よし、一件落着。
「わしの努力はなんじゃったのかの……?」
「こんばんは」
しばらくして、キラが俺を迎えに来た。
「行くか?」
「そうだね。行動できるのは夜だけだし、早く行っておくに越したことはないだろう?」
まぁ、本来なら寝静まるのを待つべきなんだが色々とやることもあるのでそうも言ってられないな。
「よし、行くか」
俺は軽鎧を着てその上からローブを羽織る。
松明を手に持ち、外に出る。
「よっしゃ行くか」
「うむ」
「うん」
「やっぱ空からか?」
「多分そこが一番手薄だろうからね。それがいいんじゃないかな」
「よし、オーシリア」
「了解じゃ」
ステッド・ファストに俺とオーシリアがのり、後ろを振り返るとキラが普通についてきていた。
「あれ? キラこれ見えてるの?」
「ん? 見えてないよ」
「ならなんでのれるんだ?」
キラは微笑む。
「見えなくてもわかるよ」
え、こっわ。こっわ!
なんだそのデンパは!?
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