事態の変化
「よく無事に戻ったの。帰って早々悪いが、現状について説明しておくぞ」
ランガルに戻った俺はそのままキラに運ばれて例の如く謁見の間で王様と会っていた。
「ほんとに悪いぞ。俺が何時間動いた後だと思ってるんだよ……」
大体10時間死と隣り合わせで動き続けた後だぞ。頭なんか働くわけない。
全身疲労が凄すぎて座ってるのでさえしんどいからな。
「なら横になってもらっててもかまわん。とにかく今はこの国の現状についてお主の意見も聞いておきたいからの」
「……なにか問題でも起こってるのか?」
「いや、それはお主がダンジョンに発つ前に言っていたことがおおよそ当たっているという認識で構わんよ。浮浪者が逃げた者の家に住み着くとはな。先に聞いていたおかげで兵の派遣も速やかに行えている。避難自体も順調といってよいじゃろう」
「じゃあ、何の話だ?」
王様は少し言いよどんだ後で口を開く。
「エルフ達のことじゃよ」
王様の話をまとめると、エルフ達になんの動きもないことが不安だということだった。
いくら相互不干渉といっても一応自らの国に住んでいる人達のことだからな。放っておけないということだろう。
「? 俺たちちゃんと伝えに行ったよな?」
「えぇ。わたくしたちは確かにお伝えしましたわ。どうやらこちらの気遣いをないようなものとしているようですわ」
うわ。ルーリアもキレてるっぽいぞこれ。
「本当になんの逃げる素振りも対応する素振りもないんだな?」
「無論じゃ。24時間体制で見晴らせておるが、全く慌てる素振りがないのじゃ」
「一般市民の端から端まで?」
「その通りじゃ」
……それはおかしいな。どれだけ長が「問題ない」と言っていてもそのまま信じられないのが一般市民というものだろう。それが真実だったとしてもだ。
人は深読みする生き物だからな。あることないこと騒ぎ立てることにおいて圧倒的な才能を持っている。
多くが信じていてなんの動きも起こしていなかったとしても、少数はどうしても何か行動をしてしまうものだ。
その様子がないってことは、
「
「わしらもその意見じゃ。幻想級を破るほどの武力ともなるとわしらも静観してはおれん。エルフはかなり昔から続く種族じゃ。もちろん
ということは幻想級への対策をなにか持っていても不思議はない」
ふむ、しかしその実態は謎、か。
「で、それを俺に言ってどうするつもりだ?」
意図を理解した俺はにやりと笑いながらそれでも王様に聞く。
「そこで、じゃ。お主にはわし直々の命としてエルフ達の様子を探ってきてもらいたい。もちろん、国としてお主に依頼する形にはなるからの。最大限のバックアップは行わせてもらうぞ?」
王様も笑い返してくる。
つまり、こいつはこう言っているのだ。
望むところだ。
「もちろん、国のために働かせていただきますよ」
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