ダンジョンは偶発的に

「わはは!久しぶりだな、リブレ君!」

ケインが俺の肩に手を回しながら満面の笑みで言う。

「やっぱりあんたかよ…」

荒事と言えばこいつになるんだけど、キラかもっていう期待は少しはあったんだよなぁ。キラはキラで容赦無さそうだけど脳筋こいつよりは幾分かましだろう。


「キラはどうしたんだ?」

「む?あぁ、彼はあれでもかなりの地位にいるからな!ほいほい出てこれないんだ!」

前までほいほい動いてた気がするけどな。さすがに事態が事態なだけあってそうも言ってられないってことか。


「で、ルーリアに言われてきたのがあんたか。俺を鍛えてくれるんだろ?」

ケインがついてこいと言うので歩く道すがら自分がどんなことをされるのか探り出そうとする。

「その通りだ!まぁ、俺はあまり指導などしたことがないので上手くできるかはわからんがな!」

「お前なんで来たんだよ!」

そしてなんでルーリアもこいつに頼もうと思ったんだよ。


「いや、大丈夫だぞ?一応、キラ君にもアドバイスを受けてきたからな!」

「それこそケインである必要なくない?」

「いや、これは俺が適任だと思うぞ?」

「怖い」

こいつからは{面白がる}ってのしか視えないしな。

こういう時相手の考えがわかるんだったら簡単なんだろうけど、俺には感情かそれに類するものしか視えないからな。


「ところで、リブレ君はダンジョンの話を覚えているか?」

ダンジョン?あ。

「あれか。王様が俺のことを試そうとしたときにキラとレインと一緒に送り込もうとしたやつか?」

「それだな!あれが今どうなってるか知ってるか?」

知るわけないだろ。


ダンジョン。

偶発的に発現するらしいありがちな洞窟のようなものから砦のようなもの、果てには塔のようなもの。

もちろん、塔や砦はそう簡単にできるようなものでもないらしいが、洞窟のようなものならかなりの頻度というか、狭い範囲に複数個できたりもするらしい。

で、そのダンジョンは放っておけば放っておくほど中のエネミーが強くなっていったり、広くなっていって攻略が困難になるらしい。

だから国などが冒険者たちに依頼して、早いうちに攻略することを推奨する。もしできずに強くなってしまったときは国が兵を派遣して攻略不可能なレベルになる前に攻略してしまう。


「さぁ?その言い方的にはまだ残ってるんだろうけど?」

「流石だな!その通りだ!君たちに攻略してもらおうと思っていたが、硝石がらみでそうもいかなくなっただろう?」

「そうだな。あの時はもうそんな話はなかったからな」

「そこで、街の冒険者たちに依頼したわけだ。だがな、それが思ったよりも上手くいかなかったようでな?」

そこでケインが足を止める。


「で、ここがその問題のダンジョンなんだが…」

そう言ってケインが示したところには下向きに人一人が入れるような穴が開いていた。

「ここに一人で潜ってもらうことになるな!」

うん、知ってた。多分この話が出たくらいからこうなるだろうとは。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る