要人との会談って本来難しいよね

「…残念ながら、お主が今レインに会いに行くことは認められんぞ。言ったであろう。我らとエルフの関係は複雑なのじゃよ」

すぐに行動を開始しようとした俺をキラに抑えさせて、王様がさらに続ける。

「正式な手続きを踏んでいくならともかく、お主を勝手に既に要人となっているレインに会わせることはできんのじゃよ」


「正式な手続きなんか踏んでもどうせ会えないんだろ!?なら俺が暴走したことにしといてくれよ!」

俺は王様がわざわざレインをと示したのかの意味を汲み取る。神の啓示を受けたとされるレインを見下している人間と会わせるはずがない。そもそも俺はランガル国に所属しているわけではない。正式な国の人間ではない俺にこれから長となるレインを会わせろと言われても相手にされないだろう。


「キラ、そやつは本気で動く気はなさそうじゃ。離れてもいいからカイル殿に聞いたことを話してくれるか」

「はい」

ばれてた。最初は本当に行こうとしていたが、止められるならやめておこうと思っていた。

今までここの皆は俺の我儘は基本的に許してくれていた。プリンセを勝手に連れてきたときなんかはよく許してくれてたなと思っている。

しかし、ここで止めるということはよほど無理なことなのだろう。

俺も入る方法考えられてなかったし。そもそもキラが入れなかった場所に俺が入れるとは思えない。


「…そうか。3か月後…」

キラの報告を聞いた王様は渋い顔を浮かべる。

「避難をするにはすぐにでも行動を開始しないと間に合わないような期間だな」

「しかし、カイル殿はそれを勧めておられました。それ以外の可能性はかなり低いとも明言されておられます」

「カイル殿が言っておられるのであればその通りなのだろうな。よし、わかった」

そう言って王様がバルコニーへ出ていく。恐らく、国民に状況の説明と避難を進めていくという旨を伝えに行ったのだろう。

さすがに国を背負う奴の決断力は物が違う。


「なぁ、マレイユさん。本当に俺にはレインに会う方法はないのか?」

「えぇ、ないでしょうね」

そんなあっさりと…。

「今のところはあなたができることは一つもありません。無理に動こうとしても事態を悪化させるようなことにしかならないでしょう」

…でしょうね。

「もちろん、こちらからアプローチは試みますが、あなたの予想通り、期待しないほうがいいでしょう」

さらに追い打ちをかけてくる。そんなに追い詰めたいわけ?


「ですから、考え続けてください。あなたの得意分野でしょう。あなたならわたくしたちには考え付かないことも思いつくことがあるでしょう」

…?これは励ましてくれているのか?

「それだけしか取り柄がないのですから」

うん、最後のやつはいらなかったよね。

その日はマレイユさんに促されて家に帰ることとなった。プリンセを連れて。

明日からどうしたもんかな。

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