油断大敵って便利な言葉だよね

「さて、力仕事部門を任されたケインだ!わはは!」

正直こいつに任せるのは不安だったが、今回に至っては適任だ。

「俺たちの仕事はとりあえず、だ」

「岩を作る?」

「その通り。この国には採石場などはない。岩石地帯は無いからな。そこでリブレは考えた。地面削れば岩になるんじゃね?とな!!」

「いやそれ考えたのお前だろ!!」

俺そんな脳筋じゃないから!!

二つ名ダブル持ちのケイン様にあの態度…。やっぱ凄い人なんだ…」

いらん誤解が広まってる気がする…。


場所を移動して技術者サイド。

「あ、えっと、僕がリブレさんにこれをやれと言われましたレインと言います。よろしくお願いします」

レインに任せていた。

「え、あの子ってエルフ?」

「エルフなんかに任せて大丈夫か?」

「っ!」

こうなることはもう予定調和と言える。しかし、予想していてもこの人数からの不審の目はきついものだ。


「さて、俺の人事に疑問があるやつはいるか?」

「大ありだよ!そいつは信用できるのかい!?」

「そうだ!エルフが俺たちと関わったことなどないぞ!」

へー。

「じゃあ聞くが、エルフと真剣に話をしようと思ったやつはいるか?」

俺の静かな一言で騒いでいたやつらが静まる。

「まともに関わろうとしたことがないくせによく言うな。相手に歩み寄ろうとしてたならいい。けど、そうじゃないやつが吐いていいセリフじゃないなそれは」

言った本人は気まずそうにしている。

「みんなもだからな。レインは俺のパーティーメンバーで前の戦争で敵の足止めと戦争を終わらせた威嚇攻撃のアシストをしたやつだ。こいつがいなかったら今頃お前らの数パーセントは戦火の中だからな」

「リブレさん、言い方が大げさです…!」

俺もされてるんだからいいだろ!?一蓮托生!

「絶対使い方違います…。せめて腐れ縁とかです」

そうとも言う。


「大変失礼をした。命を救っていただいた恩人とは知らず、固定観念だけで判断していた。どうか謝罪を受け入れてほしい」

「いえ、わかってもらえたなら大丈夫です。エルフが閉鎖的な種族っていうのは否定できないですし」

理解が深まったようだ。良かった、良かった。

レインをこっちのリーダーにしたのは器用ってのもあるが、大人数にエルフに対する偏見を少しでも緩めておいて欲しかったんだ。これだけの人数がこれを聞いていれば少しはみんなに伝わるだろうから。


「じゃあ、説明を始めますね。僕たちは力仕事班が運んできた大きな石を綺麗に切ってそろえることになります…」

やり方は教えたし、もう俺より上手い。大丈夫だろ。

石畳を敷く際の粘土はエルメさんに任せたし。獣人の方々が来た時の受け入れ方のマニュアルもキラに渡した。あとは細部を詰めていくだけだな。



そう思っていた矢先のことだった。

「え?」

床が抜けた。いや、違う。

「そんなのありかぁぁぁぁーー!!!??」


その日から、序列保持者ランカー78位のリブレの姿は確認されなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る