一騎打ちってほんとにあったのかな

「全員止まれー!!」


草原の向こうからやってきた虎族の一群と相まみえる。


「ここで待ち構えているということはそちらは王国の方々という認識でよろしいかな?」


向こうの偉そうな感じの人(?)が口を開く。


「そうだな」


虚勢を張って、俺が受け答えを担当する。

そもそも口が上手いの俺しかいないし。

可能性のあるハンネはいまだに気絶してるしんでるし。


「で、我々を止めようとその人数ですか」


相手陣営から失笑が漏れる。



ま、下に見られてるのは承知のうえだ。


「そんな感じだな。ただ、できればこちらとしても戦いにはしたくないんだ。余計な軋轢を生むことになるしな」


和平を望んでいるこちらにとってはだが。


「軋轢もなにも一方的な殲滅が行われるだけですよ?」


向こうにはなんの関係もない。



「そこでだ。こちらの実力を知ってもらうために、代表者による一騎打ちを提案する」


そもそも向こうは数で勝っている。

問答無用で飛び掛かられたらしんどいが……。


「おもしろい。受けてたとう」


虎とは元来プライドの高い動物だ。

首領となるような実力者ならそれも顕著だろう。

ここまでは予定通り。



「こちらからはこの二人をだす。そちらも代表者を決めてもらっても構わないだろうか」


あくまで下手に。

機嫌を損ねて流れを断ち切ってしまうのは一番警戒しなければならないことだ。

全てが崩れてしまう。


「あいわかった。こちらからは、この二名をだそう」


示された二頭が前に進み出る。



そろそろいい?


「キラ、獣人種って人と動物が混ざってるんじゃないの?」

「そうだよ」

「あれどう見ても普通の虎にしか見えないんだけど!?」


そう、想像と違い、相対している一群は大きめの虎の集団だったのだ。

よって二名というより二頭という表現が正しいだろう。


「戦闘時や移動時はあの姿になるらしいね。そのほうがいろいろと都合がいいんだと思うよ」


そりゃ野生そのものってことだからそういうときには便利だろうね?

でもさ!

ほら、骨格とかさ!

どうなってんの!?

ネコ科って逆関節じゃん?

変身時とかえぐい映像になりそうだけれども!?


「今そこそんな重要ですか?」


たまらずレインが口を挟んできた。


「今からキラさんたち戦うのに、そんな問答してないで集中させてあげたほうがいいんじゃないでしょうか?」



「それは場合によりけりだぞ。むしろリラックスして普段通り動けるほうが大事だってこともある」


特にキラはその速さが重要だしな。


「ふはは! 獣人と戦えるやれる日が来るとは!」


ケインばかはあんな感じだし。



「では、俺が立会人を務めさせてもらう」


自分たちが負けるとは微塵も思ってない虎族の首領はそれを快諾する。



「では、始め!!」


俺の号令と共に戦いが始まる!




そして終わっていた。

キラとケインの勝利という形で。

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