EX1 入学 編 - nuova stagione -
121 親友への手紙
ナータへ、お元気ですか?
早いものであれから二か月以上が経ちます。
残存エヴィルの活性化が始まり世の中は大変なことになっていますが、そちらの生活はおかわりないですか?
たいした事はできないと思うけれど私も精一杯がんばってます。
あ、がんばるって言っても心配しないでね。そんなに危ないことは……
やってるけどでも大丈夫だから。
私前よりずっと強くなったんだよ。
今は『白の生徒』として新代エインシャント神国へ向かう旅の途中。
昨晩、フィリア市にいたころの夢を見ました。
思わず懐かしく思いこうして筆を執っています。
ナータたちと過ごした日々は今の私には夢のよう。
けれどそれは紛れもない現実で、私たちはあの平和な日々を守るために戦っている。
そう思うことが何よりも力になっています。
何度も何度も言うけれど、絶対に元気で帰ってくるから。
そしたらいっぱいいっぱい遊ぼうね。
あ、ごめんなさい。もう出発しなきゃ。
短いですが今日はこの辺で筆を止めます。
帰ったらお土産話がたくさんあります。
私がいなかった間のフィリア市のことも聞かせて欲しいな。
唯一無二の大親友、ルーチェより。
※
「超絶美少女インヴェルナータ様へ……」
私は背後に気配を感じ慌てて手紙を隠した。
「きゃあっ! 何勝手に読んでるのよっ!」
「さっきから呼んでるのにお前が気づかねーからだろ」
ダイがその真っ黒な髪を掻きながら全く反省のない声で言う。
「集中してたんだよっ。人の手紙を勝手に読むなんてデリカシーがない!」
「うるせーな。読まれたくなきゃ人のいないところで書け。つーかメシの時間だから早くしろ」
「うるさい、だったら声をかけてよ! ダイのばか! えっち!」
「だからお前が気づかなかったんだろ……別にお前の手紙なんか興味ねーし。そもそも誰に書いたか知らねーけど出す宛てなんてないだろ」
ダイの言うとおりいくら手紙を書いても出すことはできない。
残存エヴィルの活性化で戒厳令が敷かれてから、国境を超えて個人的な手紙を出すことはできなくなっている。
私たちみたいな身分のしっかりしない冒険者の手紙ならなおさらだ。
「いいんだもん。いつか帰ったとき直接わたすんだから」
「それ手紙の意味ねーだろ。おまえバカか?」
「いいの! 今の気持ちを書き残すことが大事なんだから!」
まったくダイは女の子の気持ちが全くわかってない。
ま、お子様だから仕方ないか。ふふん。
生まれ育った街を出てからもう二か月。
私の一番の友だちは今も元気でやっているかな。
時々思い出すとせつなくなる。
私は一日だって忘れたことないよ。
今の冒険の日々を思うと夢のようだけれど、私にも少し前まで平凡で楽しい日常があった。
繰り返し続く毎日を愛おしいと思えるようになったのは、きっと離れ離れになって友だちの大切さを再確認したから。
だから私はこの気持ちを忘れないように書き留めておく。
そうすることで彼女が傍で見守っていてくれているような気がするから。
「じゃ、先に言ってるぞ。さっさと来いよな」
この憎たらしいお子様を含め、現在いっしょに旅をしている四人も、もちろん私にとってかけがえのない仲間。
でもフィリア市のみんなだって同じくらいかけがえのない友達だから。
特に小さい頃からずっと大親友って言っていいくらい仲良しだった、美人で素敵な私の一番の友だち、ナータ。
ふと懐かしさがこみ上げて昔のことを思い出す。
小さい頃に出会い、一度は離ればなれになり、また再会したあの頃の事を……
※
それは私がフィリア市を旅立った日から一年と少し前の話。
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