第9話 『金の斧 銀の斧』


 うーっす。

 今日はあんま時間がねーからよ。

 さっそく始めんべ。


 あぁ?

 そう言えば、俺はいつも誰から童話を教えてもらってるのかって?


 そりゃおめー、マドカさんだよ。

 たまに違う人からも聞くけどよ、ほとんどマドカさんよ。


 あの人、すんげー物知りで、いっつもお世話になってんだよ。

 ま、俺の心の師匠ってところよ。

 年下なんだけどよ、俺より精神年齢は上だと思うぜ。


 とにかくすげーたくさん昔ばなし知ってんの。

 俺ぁ童話が好きだからよ。

 マドカさんリスペクトしてんだ。


 あ?

 マドカさんはいくつだって?


 えーっと、今年幼稚園の年長組になるって言ってたから、たぶん6歳だな。

 前にも言ったべ?

 リスペクトに年齢とかまじ関係ねーから。


 じゃ、今日はそのマドカさんから聞いた話をするぜ。


 すげー昔よ。

 とある村にきこりがいたのよ。


 きこりはよ、いつものように木を切ってたんだよ。

 そしたらよ、うっかり手を滑らせちまって。

 近くの池に愛用の斧を落としちまったんだよ。


 いや、この時のきこりの気持ちわかるぜ。

 俺もよ、仕事で使ってるナグリを川に落としちまったことあんだよ。

 せつねーんだよな、あれ。


 でよ。

 きこりが途方に暮れてたらよ。

 なんと湖から女神さまが現れてよ、こういってくるワケ。


「お前が落としたのはこの金の斧か、銀の斧か。それともこの普通の斧か」


 ってよ。


 その時よ、俺ぁ思ったのよ。

 俺なら、金の斧って答えるぜって。


 だってよ、そうやって聞いてくるぐれーだからよ、女神さまは俺がどんな斧を使ってたか知らなかったわけだべ。

 なら、金の斧つって、それをもらったほうが得だろってよ。


 ……でもよ。

 そう答えたら、マドカさんに怒られちまったよ。


「うそついたらだめなんだよ! ちゃんと本当のこと言わないと、友達がいなくなるよ」


 ってよ。

 

 俺ぁ、自分の浅はかさを恨んだぜ。

 マドカさんの言うとおりだぜ。

 頭も悪ぃ、学もねぇ、そんな俺が正直さを失ったらおしめーだよな。


 ってことでよ、もしこの木こりと同じ状況になったらよ。

 俺ぁ正直にこう言おうと決めてるのよ。



「女神様、そんなことより俺ぁお金が欲しいっす。ニンテンドースイッチが買いたいんっす。だから金の斧をください」



 ってよ。

 そしたら、マドカさんもよ、「スイッチはあたしも欲しい!」つって認めてくれたぜ。


 でよ。

 木こりも正直に「普通の斧を落としました」つったらよ、女神さまは金の斧くれたんだってよ。


 マジでめでたしめでたしだよな。



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