第6話 忘れたころの空き缶

 カウンセリングルームには担任の田中義一郎と三谷朱人がいた。


「昨日、三谷先生に空き缶を投げたのは君だね。見ていた生徒がいたんだよ」

「違います。私は空き缶なんて投げていません」


 嘘はついていない。私は空き缶を蹴ったのであって投げてはいないのだから。

 やったやらないの押し問答になったが、私は「投げていない」の一点張りで抵抗した。これでも嘘はついていない。


「じゃあそうなんでしょう。わたしはこれで」


 三谷は出ていった。後頭部をさすりながら。

 あの空き缶は三谷の頭に命中したのだろう。それは気の毒だった。



 私も部屋を出ようと立ち上がったが田中はそれを制した。


「君にはもう一つ聞きたいことがあるんだ」


 田中は私をじっと見つめていた。

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