異世界よ、茨城の力を知るがいい 〜神の力を手に入れた俺の能力は、茨城の概念だった!? 〜

アステリズム

プロローグ 宇宙、アポロ14号から見えた、光の柱

 俺の名前はミト・ヒタチ。


 水戸市のミトに日立市のヒタチ

茨城県民丸出しの名前を嫌いになった事は無い。俺の故郷は最高だからね。


 さて、そんな俺は父の影響か、昔から探検大好きマンだった。知らない場所を探索し、新しい物を発見し、ワクワクするような冒険を求めるばかり。


 父は割と偉い研究員だった。

フィールドワーク大好き人間で、自分で現地まで足を運んで探索する。それを見て育ったもんで、俺もその研究チームにあちこち着れていかれたもんだ。


 まぁ、俺は親父程頭が良く無いんで、何をしてるかはサッパリだったけど、それでも最高に楽しかった。


 そんな生活を続けるうちに、いつの間にやら高校生。


 身長170cmキッカリ、若干赤みがかった髪に平均的な体重。進路に迷う普通の高校生、青春真っ盛りの夏休みの話。青春なんて大して無かったけどね……うん。


「いやぁ、面白い話を聞いたよヒタチ。なぁ、アポロ14号の話を知ってるかい?」


「月に行ったって奴?」


「そうさ、そのミッションで、クルーが地上に『光の柱』を見たんだってさ。宇宙からね」


「光の柱? 宇宙からねぇ。いや待てよ、まさか行く気か!? 海外か!?」


「ハッハッハ! 心配するな、すぐ近くさ」


「すぐ近く? また九州とか、台湾とか?」


「いいや、この日立市さ。ヒタチ、あの御岩神社だよ」


 後に、クルーの一人が測量してまで訪れたのは、女神アマテラスの逸話、天の岩戸伝説が残る場所。地元、茨城県日立市の御岩神社だった。


「はぁ、相変わらずのパワースポットぶりだわ。ホントに神様とか居そうだなぁ」


「神様というのは、科学が進めば進むほど、いないと違和感を感じる気がするねぇ……ところでヒタチ君、進路は決まったかい? 良ければウチはどうだい? 新物質……興味あるだろぉ?」


 声をかけるのは、新物質研究機構のお偉いさん。親父の趣味に付き合うのは、筋金入りの研究マニア達。


 茨城県には意外と研究所が多い。主につくば市だけどね。因みに今回は10人、朝っぱらから各分野のフィールドワーク大好き人間が集まっている。


「無理っすよ!俺にそんな頭あると思います? 」


「新物質発見は情熱さ!フィールドワーク!探検!冒険!そして実験!楽しいよォ……楽しい……楽しい……」


 ね? ヤバいやつしかいない……。いやきっと親父の周りだけだろう。類は友を呼ぶっていうし。


「しかし光る石ねぇ、案外ここいらの岩には放射線とか出してたりしてねぇ、青い光……チェレンコフ……」


「こんな所で起きるわけないでしょ……ガイガーカウンターも反応してませんし。しっかし神話の場所かぁ、案外宇宙鉱石だったりして?」


「ロマンがあるねぇ! しかし、う〜ん、反応は無いねぇ、こりゃスカかな!」


 六時間の調査で、見つかった物は特に無し。とはいえ、この景色にこの空気、疲れていた皆はどこか、満足な顔をしていた。さすがパワースポットと呼ばれるだけはある。


《……可能性……可能性の力……》


――――ん?


「親父、今なんか言った?」

「いや何も? なんだ、神様の声でも聞いたかぁ?ご利益あるなぁ」


「いや、ちょっと……ちょっと歩いてくるわ」


「あいよーどうせ後二時間はいるからね〜」


 見付けたのは崩れかけた祠。

どこにでもありそうな、しかしどこか不思議な感じがする、そんな物。だが、なんだか無性に気になる。何故かは分からないが。


「なんだろう、なんでこんな……ん?今光ったような……?」


 祠近くの地面が一瞬青く光ったような気がして、持っていたスコップで掘ってみる。1時間ほど掘った場所にあったのは、何の変哲もない石ころだった。でも妙に、いや、まん丸だ。地面を埋めた後、それを持って親父たちの元に戻る。


「なんか気になってさ、祠の近くを掘ったら出てきた」


「掘った……? なんか、丸いなそれ」

「おっ、発掘物か? 来たか!?こりゃ来たかぁ!?」

「帰って調べますかぁ、面白そうですし」


 はい、ヒットでした。なんとビックリ。見つけた物は未知の新物質。実験してみれば、特定の振動を与えたり、特定の振動波で見ると、光って見えるらしい。


「ヒタチ……これはヤバい、これは……世界を変えちまうシロモノだ……お前、どうやって見つけたんだ?」


「――――――――は?」


 本腰を入れて結成された秘密研究チームは、やがて地下に巨大な鉱脈を発見した。俺達が得たものは、莫大なエネルギー。無限のエネルギーだった。


 新物質の情報が流出し、世界中は大パニックになった。そりゃ経済は荒れるは、遠い国では戦争は起きるわで。


「お、親父、俺達とんでもないもん見つけちまったんじゃ……」

「いや、人間の進化が足りなかったんだろう。こうなるのは必然だった」


 そして日本に、いや、ここ茨城県に核ミサイルが発射された。どこが撃ったかは誰も知らない。だが、直撃を表すアラートが鳴り響いた。


「嘘だろおい、そんな……そんな!俺がこんなモノを見つけちまったせいで!俺のせいじゃないか」


「ヒタチ!地下に行かないと死ぬぞ!」


「可能性の、力」


「――――ヒタチ?お前、そいつはエネルギーを出すだけだぞ!」


「可能性の力、そうさ、可能性の力だ!ああ、皆を守りたい、皆を助けたい! 俺は!守る!」


 最初に見付けた物質に願ったんだ。みんなを守ってくれと。


《キミは今、運命を切り開いた。キミは選ばれたんだ》


 ――――その時確かに、声が聴こえたような気がした。


 その時、球体だったはずの新物質が俺の身体を包み込み、体内へと入り込んだ。そして、手が輝きながら、『守』という字が空に浮かび、緑の風が広がった。


 風はどこまでも広がり続け、そして、接近する核ミサイルは樹になって墜落した。


「な、何か出た……?」


「ヒタチお前……もしかして、超能力?」


「マジか」

「マジだ」


「これは、実験だな!」

「――――ですよねぇ〜」


 新物質が体内に溶け込んだ事例は、どうやら俺だけらしい。後の研究で分かったのこのは5つ。


 ・思考で形が自由に変化する。

 ・理屈が分かればそれを実現できる。

 ・エネルギーを無限に放出する。

 ・破壊もできず、加工もできない。

 ・起動状態では構造すら理解できない。


 あの事件以来、新物質は世界各国に解放された。最終戦争をやらかしかけた人類は一致団結したわけだ。


 後に『イバライト』と呼ばれる、新たなる人類の可能性の発見だ。因みに住民投票だよ? 発見者の俺の案が通ったぜ。


 あれよあれよという間に未来が来た。映画のような、まさに理想の未来が。核すら消したヤバい物質だ。地球の上じゃ何が起こるかわからない。


 ということで、イバライトの危険性を考慮して実験は木星のカリストステーションにて行われている。俺は結局、新物質研究機構に所属し、ありとあらゆる実験に協力した。ぶっちゃけモルモットだが。


 イバライトを使用するのには複雑な思考が必要だ。しかし俺の場合、チョロっと考えるだけで簡単な力は使えるんだ。


 そんなわけで人類は、イバライトを用いてSF映画の様な技術を次々と手に入れた。


 特に新型のAIは優れた知性と人格を持ち、人権が認められて一つの種族になった。俺の親友。ダイゴとカシマがそうだ。


 そして4年の月日が経ち、俺は人類初のハイパードライブ実験艦、外宇宙有人探査航行用超光速ドライブ搭載型実験艦、うーん長いな。


 略してワープ艦「イナ」のテストパイロットをさせられ、親友のAI二名と共に外宇宙へと旅立った。俺だけしか、イバライトを制御出来ないんだ。


「いいかいヒタチ、お前はまた、何かを見つけるかもしれない、いや、行った先は何も無いかもしれない」


「それ、行く前に言うセリフか? 何も無いと流石に困るぜ」


 出発前に親父と話した会話。下手をすれば、最後になるかもしれない、そんな言葉。


「若いなぁヒタチ、いいか? 何も無いってことはな、そこからまた作れるって事なんだよ。何も無いのなら、その分可能性が広がるのさ」


「可能性ねぇ、茨城もなーんもないもんな」

「お前がそれ言うのか、今は見つけたじゃないか。つまりそういう事さ。冒険してこい!」


「ああ、行ってきます」


 親父に見送られての新たなる旅立ち、その筈だったんだけどなぁ。


《やっほー!聴こえるかな?》


「ダイゴ、カシマ、今のは何だ!? 」


「通信ではありません。未知との遭遇、現在調査中」


「だんな様、防御フィールド、オンラインですわ」


 ――――この声、どこかで。


《えっと、今から君達を異世界にすっ飛ばします!これからヨロシクね!》


「えっ?」

「ハイ?」

「調査中、調査中」


 知らない場所を探索し、新しい物を発見し、ワクワクするような冒険を求める。


 どうやら俺の夢は、いろんな意味で叶ったらしい。

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