第5話
アリから逃れたトカゲは、腹が空いていることに気づき、満たすために餌を探すことにした。
トカゲは、今日は何を食べようかと考える。
いつもであればアリも獲物の対象にしていたが、先ほどのことがあるため、アリはやめておきスライムにしようと考え、スライムがいそうな近場へと足を進める。
だが、目的の場所にたどり着いてもスライムはおらず、仕方なく他の場所へと向かうが、そこにもスライムはいなかった。
3箇所目、4箇所目へと向かったがそこにもおらず、その時になってようやくおかしいと気づく。
これはおかしい、異常だ、と。
そもそも、それだけ動いていればスライムの1匹や2匹遭遇してもおかしくはないのに、今日はそれすらない。
それどころか、他の生物と遭遇すらしていない。
だが、トカゲは、なぜこうなっているのかまでは気づかない。
しかし、このままでは飢えてしまうので、何か食べれるものはないかと、歩き続ける。
そして、しばらく歩き続けていると、争っているような物音が聞こえる。
トカゲは、どこから聞こえてくるのか、と周囲を見渡すと、近くに木が生えているが見え、その木を登ることにした。
木に登ったトカゲは、周囲を見渡し、物音のした所を探る。
すると、蛇とアリたちが争っている様子が、目に飛び込んできた。
蛇の大きさは2m近くもあるのだが、その蛇にアリたちが次々に噛み付いていく。
だが、蛇も体を捻り、噛み付いてくるアリを振り払うが、噛み付いているアリ全てを振り払うことはできていない。
なぜなら、アリの数は20匹や30匹どころではなく、ゆうに50匹を超えているからだ。
しかも、アリは列を作りながら、続々と増えている。
流石にこの数では、蛇も太刀打ちできないだろうと、トカゲは予測した。
その様子をしばらく見ていたトカゲは、どう動くべきか悩んでいると、蛇とアリが争っている場所に何かが近寄っているのが目に入る。
それは一つだけではなく、いくつもだ。
何が近寄っているのだろう、と見つめていると、細長いものが見え、そこから近寄っているのが蛇だとわかった。
どういう理由なのかは分からなかったが、近くにいた蛇が集まってきたようだった。
そして、蛇たちは争っている場所にたどり着くなり、アリへと襲いかかる。
蛇の大きさは2mから3mくらいで、数は8匹だった。
この援軍によって、アリたちは混乱しているようで、襲っていた蛇に向かうもの、新たにきた蛇に向かうもの、どちらに向かうのか悩んでいるもの、と動きがめちゃくちゃになって、場が乱れる。
中には逃げ出すアリもいた。
それを見ていたトカゲは、食事にありつける好機、と捉えて急いで木から降り、争いの場から離れたアリへと向かう。
争いの場から離れ、1匹だけとなったアリを見つけたトカゲは、気づかれないよう近寄り、背後から噛み付いた。
そこでようやく襲われたアリは、トカゲに気づき足を動かして逃れようとするが、逃すまいと前足でアリの体を押さえつけ、口に力を入れて噛みちぎる。
そうすると、アリの体から力が抜けていき、抵抗が弱まる。
トカゲは噛みちぎったものを飲み込むと、弱まったアリを引きずり、先ほど登っていた木まで戻る。
木の下まで戻ったトカゲは、そこでアリを本格的に食べ始めた。
まずは、胸部を、次に腹部を食べていくが、その最中いつも以上にあたりを警戒していた。
頭以外を食べ終えたトカゲは、木に登り、争い場から1匹だけ離れたアリを探しては、襲って食べるということを三度繰り返す。
4匹目のアリを食べ終えたトカゲはようやく満足し、再び木へ登り、蛇とアリの争いがどうなっているか眺めることにした。
トカゲが見たところ、蛇とアリの争いは一進一退に感じた。
アリたちは蛇に噛み付いていくが、蛇はそれを振り払っていく。
その際に、負傷したアリもいて、動きが鈍い、もしくは動けなくなっているものが、周囲にいる。
だが、それを補うように、次々にアリたちが現れているため、戦況はどちらかが有利とは見えなかったのだ。
そんな様子を見ていたのだが、しばらくすると新たな変化があった。
それは、上空に飛んでいた鳥たちが、動けなくなったアリめがけて急降下してきたのだ。
争っている蛇とアリたちは、そのことに気づかず、1羽目の鳥が動けなくなったアリと掴んで飛び去った後に、初めて鳥たちの存在に気づいた。
アリたちは、鳥たちが動けなくなっているアリが目当てだと気づくと、そのアリを掴んだところを見計らって飛びかかった。
鳥は慌てて飛んで逃げようとするが、アリに噛み付かれ飛べなくなる。
そうなると、鳥たちは、飛べなくなった鳥を助けるために、襲っているアリへと攻撃を始める。
これによって三つ巴の乱戦となり、さらに争いは激しくなっていった。
なかなか決着を見せず、いつまで続くかと思われた争いは、ある時を境に終息へと向かう。
その兆しは、理由はわからないが、あるときからアリの援軍がパタリとやんでしまった。
それどころか、争いの場に数匹を残して退いていった。
そうなれば、残されたアリは、あっという間にやられてしまい、残ったのは傷を負った蛇と鳥たちだけとなる。
蛇たちは傷を負いはしているのの、動けるアリがいなくなると、死んだアリを食べ始めた。
一方、鳥たちはというと、死んだアリを掴んで飛び去っていく。
その中には傷を負い飛べなくなっている鳥がいたのだが、周りにいた鳥たちは飛べなくなった鳥を放って死んだアリを掴んでは飛び去っていく。
残された鳥は、悲しげに鳴いたが、鳥たちは戻ってくる様子はない。
そのことがわかったのか、残された鳥は、ひょこひょこと歩き移動を始める。
この争いを見届けたトカゲは、この結末に驚いた。
援軍が現れたとはいえ、あれだけの数がいたにもかかわらず、アリたちが敗北を帰したことに。
トカゲだったら、この争いから生き延びることはできなかっただろうと。
鳥については攻撃する手段がないため獲物として始めから埒外だったが、改めて、蛇に手を出すのはやめよう、と思ったトカゲだった。
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