お姉さんだらけのハーレム地獄!! ~ポンコツで巨乳のお姉さんが家に侵入してきてから俺の貞操と命が危ないんだが~
可笑林
引きこもり受難編
邂逅(現行犯逮捕)
階下で物音がしたのに気が付いたのは、午後三時を回った頃だった。
カーテンを閉め切った部屋では外の風景から時間を推し量ることができないので、俺はベッドの横のデジタル時計の表示を無気力な目で眺めていた。
おかしい。
この家には俺しか住んでいないはずだ。それなのに階下から明らかに人の気配がするのは奇妙だ。
ベッドの上でだらけていた体に、ジワリと冷や汗が湧いた。
もしかして……空き巣?
確かにここ最近はトイレ以外ではほとんど一歩も部屋を出ない日が続いている。もしかしたら誰も住んでいないと思われて空き巣に侵入されたのかもしれない。
それはまずい。空き巣に鉢合わせた場合、激昂した空き巣犯に殺害されてしまうケースも多いらしい。このままでは俺の命が危なかった。
なら部屋でやり過ごすか……?
いやだめだ。空き巣がこの部屋まで入ってこない保証はない。
どちらにしろ空き巣と鉢合わせる可能性は排除できない。
そうだ……! 警察に通報だ。俺が対処するのはそれからでいい。
枕元に置いたスマートフォンを手に取ろうとしたその時――
トスン……トスン……トスン……
階段を上がってきている……!
まずい……! これだと通報している暇はない! 今すぐ自分の身を守らなくては!
俺はベッドから静かに、しかし迅速に起き上がると、本棚の上に放ってあった木刀に手を伸ばした。中学生のとき、京都に修学旅行に行ったときに買ったものだ。まさか役に立つ時が来るとは……
ドアの陰に隠れ、不意打ちを狙う。一撃だ。一撃でしとめる……!
ことここまでくれば最悪の場合、空き巣をその……殺めてしまってもいい。正当防衛ってやつだ。
俺は息をひそめて、空き巣が俺の部屋に侵入するのを待った。
トス……トス…………
トス…………
トス……
……
部屋の前で立ち止まった……!
来る……!!
ギィ……
扉が完全に開いたその瞬間、俺は扉の陰から飛び出した。
「食らえこの空き――」
巣……と叫んで木刀を振り下ろそうとした俺は、心臓が止まりそうなほどの衝撃を受けた。
女性だ。
ドアを開けて部屋に入って来たのは二十代そこそこの女性だった。
「おぁっ!?」
思わずつんのめって、俺は木刀を振り上げたまま部屋の床に倒れ込んだ。奇襲は失敗だ。情けない!
慌てて振り返ると、部屋に侵入してきたその女性がぽかんとこちらを見下ろしているのと目が合った。
綺麗な黒い髪には葉っぱがくっついている。庭から侵入してきたのか……?
お互いが見つめ合うほんの数秒間。俺は立ち上がり今度こそ空き巣をしとめるべく木刀を振り上げる……のではなく、その女性から視線を外せないでいた。
疲労感の浮かんだ少し物憂げな瞳、すっと通った鼻梁、薄い唇、薄暗い部屋の中でもわかるほどに白い肌。
俺の部屋に侵入してきた空き巣のお姉さんは、驚くほど美人だった。
そしてなにより――
(巨乳だ!!)
そう、お姉さんは巨乳だった。
こんな命の危機が差し迫った状況でもそんなところに目が行くのは男のサガと言うべきか。しかしそんな不甲斐ない思考が吹っ飛ぶほどにお姉さんの胸は豊かだった。うーん空き巣にしておくには惜しいおっぱいだ……いや俺はなにを言っているんだ。
そんな俺の雑念も、空き巣のお姉さんの目が驚愕に見開かれることによって晴らされた。ようやく俺の存在に気が付いたらしい。お姉さんは大きく体をのけぞらせて叫んだ。
「な、なんですか君はーーーーーッッ!?!?!?」
「いやそれこっちのセリフーーーーーーッ!!!!!!」
理不尽すぎるお姉さんの言葉に思わず床に座ったままツッコんでしまう。
「あんた人ん家でなにしてんだよ! 空き巣だろ! 通報するからな!」
「なんでわたしの名前知ってるのよ!?」
「は? 名前??」
俺は激しく混乱した。
「とぼけないで! なんで私が
空き巣さん(?)は錯乱したようにそう叫ぶと、はっとした表情で怯えた様子で両手で自らの豊満な体を抱くようにした。
「もしかして……ストーカー……?」
「そんなわけねえだろ! 『え、怖……』みたいな目で見るな! 初対面だろ! 全然知らねえよあんたなんか!」
しかも考えうる限り最悪の出会いだ。
もしかしてこの人とんでもなくポンコツなのではないだろうか。
「なによ! 年増にはストーキングする価値もないってわけ!?!?」
「なんの話!?」
年齢気にしてるの……? そんな年にはとても見えないけど……
「とにかく通報するから! その場から動かないでください!」
「うそ!? 私を閉じ込めてどうする気!? やだ近寄らないでこの変態! ストーカー! 通報するから!!」
「だからこっちのセリフだーーーーッ!!」
俺が悲痛な声を上げると、お姉さんは恐怖に歪んだ顔でずりずりと後退した。すごい勢いだ。
でもそんなに後ろに下がると……
「ふにゃっ!?」
ドスンッ!
そんな短い悲鳴がして、お姉さんは階段から落ちて行った。あーあ……怪我してないといいけど……
木刀をその辺に捨てて(いらんわこんなもん)、俺は久しぶりに部屋から出て階段の下を覗き込んだ。
「きゅぅぅうう~~~……」
お姉さんは目をぐるぐる回して床に伸びていた。見た感じ大きな怪我はなさそうだ……
俺ははやる鼓動を押さえながら、ゆっくりと階段を下りて行った。
(やれやれ……面倒なことにならなきゃいいけど……)
そんな俺の淡い期待は、儚くも裏切られることになる。
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