第5話 エピローグ

7(七瀬)

 七瀬たちの事務所兼住居に帰ったあと加奈は即金で今回の依頼料を支払った。


 伊吹はそれを数えると、確かにと言って手元に引き寄せる。


「あの、ひとつだけ聞いていいですか」

 七瀬は頷いた。


「お2人の同業者には死んだ人を生き返らせることができる人もいるんでしょうか」


「それは、わたしの知る限りはいません。そういう力を持った術を開発しようと心血を注ぐものは古今東西にある程度います」

 七瀬は、私の家にも、と言いかけてその言葉は呑み込んだ。それは今言うことではないと思ったからだ。


「いることにはいますが、その試みは必ず失敗しています。そればかりかもっと大きなものを失うことになったケースも多いです。きっと死者のは復活というのはできるできない以前にやるべきではないのかと」


「そうですか……」

 加奈は消え入りそうな声でそう呟いた。


「あの、さっきは叩いてすいませんでした。実はあのとき、わたしに意志疎通を取ってきた魂があったんです。多分死者の魂で。こういうとき哀座さんを動かそうと思ったら、優しくするより突き放すほうがいいって。

 哀座さんのことを加奈って呼んでて、哀座さんのことよくわかってて、すごく気にかけてたんだと思います」


「それって……」

 加奈は右手を口元に持っていって目を見開いた。


「そういう人がいるからきっと哀座さんはまだ死んじゃダメだと思います。あとわたし昨日は強がってあんなこと言いましたけど、本当は学校とか行きたいです。でもそういうわけにも行かないから。だから図々しいかもしれないけど、せめてわたしに勉強教えてくれませんか」

 七瀬はまくし立てるようにそう言った。


「言っておくけど、私は結構厳しいよ」

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