伝説の剣? part3
「お前……俺が見えるのか?」
「ええ……『視みえる』わよ、ちゃんと」
「ど、どんなヤツ!? どんな感じなの、コイツ!?」
なぜか食い気味にララが尋ねる。おい、そんなことを訊いてる場合か。
そうね……。とエルマは俺をまさしく値踏みするような目で見て、
「髪と瞳は黒。身長は……まあまあ高いほうかしら。身体の線は少し細めで……ふふっ、顔はどこか幼いけれど、そこがとてもカワイイわ」
「へ、へぇ……そんな感じなんだ。ふぅん……」
ララはどこか頬を朱くしながらチラチラと横目で俺を見て、セリアさんは目を丸くしながら、
「それは少し意外かも……。私はてっきり……」
てっきり? てっきりなんですか?
「そんなことよりもじゃ!」
と、なぜかやや怒ったようにガロン爺さんが口を開く。
「お主は何者じゃ。その剣に宿っているのは、とある男の霊のはず。なのに、なぜ女が……?」
「そんなの決まっているでしょう? さっきあなたが言っていた伝説とやらが間違っているのよ」
「間違っている?」
「ええ。だって、相手を殺したのは夫ではなく妻――私のほうなのだもの。つまり、その剣で自殺をしたのもあの人ではなく、私なのよ」
その顔に浮かぶのは十代少女の笑みではなく、陰湿な『女』の笑み。
……今の話が嘘だとは、思えない。
だとすると、俺たちが取るべき選択は、
「解った。じゃあ、さっさとこの街を出よう」
「え!?」
と、ララ。
「な、なんでよ!? アンタ、この伝説の剣が欲しかったんでしょ? っていうか、そのためにアタシたちは――」
「いや、まあ伝説の剣じゃなくてただの呪いの剣だったわけだし、それに俺は二人の水着姿が見られただけで満足だ」
「アンタ……解っちゃいたけど、やっぱりそれが目的で……!」
ララが握り拳を固めながら歯ぎしりする。あ、またぶん投げられそう。
「でも、待って、ハルト君」
と、セリアさん。
「彼女は……エルマさんの中にいる人は、ずっとこの場所に縛られてしまっているのよね? なら、放っていくのは可哀想よ」
「それは……は、はい、その通りですね。いや、実は俺もそう思っていました。是非そうしましょう」
「……何が『実はそう思っていました』よ」
ララが冷めた声でボソリと言う。
「っていうかやっぱり、アンタはアタシよりセリア姉が好きなんでしょ」
「……え? い、いや、なんだよ、それ……」
唐突な問いに、思わず動揺してしまう。見ると、セリアさんもどこかギクリとしたような顔をしている。
そんなことを言われて、なんて言えばいいんだ。俺にとってはララもセリアさんも同じくらい大切な存在だ。どちらのほうが好きだなんてことは――
で? と、ララ自身もどこか気まずそうな顔をしながら言う。
「考えを正してどうするの? まさか一緒に連れていこうなんて言うんじゃないわよね」
「や、やっぱり……それはダメかしら?」
セリアさんがララの機嫌を伺うように言う。
「ダメに決まってんでしょ。信用できないヤツを旅に同行させるなんて……そんなのどう考えても危険過ぎるじゃない」
とララがまるで子供を叱るお母さんのように言うのと同時、エルマが口を開く。
「何を勝手に話を進めているのかしら? まさかあなた達、ここから無事に出て行けるなんて思っているんじゃないでしょうね」
ニヤリと笑うと、周囲に魔力の気配がむっと立ちこめた。見ると、洞穴の闇があったはずのエルマの背後が、いつの間にか岩壁に塞がれている。
ガロン爺さんが怯える子供のようにララの腕に掴まる。
「マ、マズいぞ、出口を塞がれてしもうた!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます