エピローグ

 さて、雨代わりに水属性魔法でもぶっ放して俺も消火に協力するか。っていうか、里長を家の中に置き忘れてきたけど大丈夫だろうか、と思っていると、





「……ありがとう」





 頭の中に少女の声が響く。





 この声は俺だけでなくセリアさんやララにも聞こえたらしい。二人、ハッとしたように横を見ると、そこにはシルヴィアが立っていた。





清浄な淡く白い光に包まれながら、その手には俺達が掘り起こした土色の麻袋が大事そうに抱えられている。





 シルヴィア、とララが苦しげに口を開く。





「ごめん……。それは取り返したけど、まだマルセルは井戸の中に……。でも、ハルト、もう大丈夫なんじゃない? ヤンが何かしてくることもないんだし、今ならあの井戸を――」


「言っただろう。まだそれはできない」


「え……? ど、どうしてよ!? アンタならあの封印を解けるんでしょ!? なら、早く解いてあげなさいよ! マルセルはずっと苦しんでいるのよ!」


「それは解ってる。だが、危険だ。あの井戸は……『魔界』に通じている可能性がある」


「魔界に……?」


「ああ。人を狂わすほどに濃い『魔』が溢れてくる場所なんて、そこしか考えられないからな。とすると、その封印を下手に解いたりすれば、この里全体がどうなるか解らない。だから、無理だ。少なくとも、今は」





と、俺はシルヴィアに視線を向けて言う。シルヴィアは俺の本質を既に見抜いているように、じっとこちらを見つめている。





「悪いな、シルヴィア……。今はまだ、姉さんを助けてやることはできない。でも、いつか必ず、またここに戻ってくる。その時はきっと俺達三人、もっと色んな力と知識を身につけて帰ってくるから……どうか、その時まで辛抱してくれ」


「ハルト……」





 ララが呟いて、そして悔しげに俯いて言う。





「ホントにごめん、シルヴィア……。確かに、今のアタシ達じゃまだ力不足みたい……。でも、ハルトの言うとおり絶対帰ってくるから! それまでアタシ達のこと待ってて!」


「――――」





 シルヴィアは何も言わないまま、静かに闇の中へ消え始める。





 だが、その消えていく顔には、ほんの微かに笑みに似た柔らかさが浮かんでいた……ような気がしたのは気のせいだっただろうか。





 翌日、俺達はクエストの報酬の受け取りを『未達成』を理由に断り、再び旅路についた。





 里はまるで眠りに就くように、深い霧の中へ姿を消した。





『セリア・ネージュ・ベルナルド


 レベル15


 物理攻撃 29


 物理防御 39


 魔法攻撃 41


 魔法防御 46


 素早さ  27


 最大HP 58


 最大MP 117


 残0』








『ララ・ニュイ・ベルナルド


 レベル22


 物理攻撃 45


 物理防御 37


 魔法攻撃 32


 魔法防御 33


 素早さ  36


 最大HP 71


 最大MP 93


 残0』



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ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました!

続編は構成を少し変えようかと悩んでいることもあり、

早めに更新できるか、それとも少し時間があいてしまうか、自分としてもまだ不明です。

また、公募に向けてのプロットも作成中で、近日中に初稿作業に入ろうとしています。

ので、少し気長に待っていただけると嬉しいです。


『魔に憑かれた屋敷』を読んでいただき、ありがとうございました。

重ねて感謝を申し上げつつ、ここで一旦筆を置かせていただきます。

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