第21話 避ける ④
「賑やかですねぇ」
「そうだね。うるさいぐらいだねー」
お昼前の商業都市を歩く。リンさんの言う通り賑やかというよりもはやうるさいぐらいの都市の中。
「でも、このうるささは嫌いじゃないなぁ。なんかキラキラしてるよね!」
うるさい都市の中はキラキラしている。その通りだと思う。この都市のうるささは活気に溢れている証拠。色んな人達が頑張っている証。それはキラキラしてるみたいに感じるのは私も分かる。
「ギルドのうるささもこんなキラキラだといいのにねぇ……」
「……そうですよねぇ」
都市の中を抜けていき冒険者ギルドの方へと進んでいく。進んでいくに連れ景色も変わっていく。キラキラした輝きの店が並ぶ景色から武骨な感じの店や怪しい感じの店が並ぶ景色へ。そして、その一番奥にあるなんというかギラギラ? ギスギス? してるようなギルドへ。
「ああん!? やんのかてめえ!」
「てめえが言い出したことだろ! 殺すぞクソが!」
ギルドに入る前から聞こえる罵声の応酬。ああ、さっきまでのキラキラが恋しい。
「……入ろっか」
「……入りましょうか」
あまり乗り気じゃないけど、仕方なく二人でギルドの扉を開け中へ入る。中へ入ると予想通りの光景が広がっていた。
「死ね雑魚が!」
「てめえが死ねカス野郎!」
ギルドの中では喧嘩が起きていた。二人の男が睨み合い罵声を浴びせ合う。わあ、片方でっかい。そして、それを止めることなくむしろ煽り、それを肴にして酒を飲む野次馬達。なんてことはない。いつも通りの光景。あっ、殴り合いが始まった。
「ランチ二つお願いします」
私達はそんなことに目もくれずランチを注文する。ここに来てから一週間。もうこの光景にも慣れた。って言うより前にいた田舎町のギルドも似たようなものだった。どうして冒険者ギルドはこうもギスギスしてるんだろう。
こんなのだから冒険者ギルドは都市の隅っこの方にある。常に喧嘩が絶えずギスギスしてて街のみんなから嫌われている。だから、冒険者ギルドの方に行くのいつも嫌なんだよなぁ。街の人からの視線が痛い。
「はっ! クソ雑魚が! 二度と俺様に逆らうんじゃねえぞ!」
どうやら喧嘩は終わったみたいだ。勝ったのはでっかい方。縦も横もでっかいなあ。顔もいかついし怖い。関わらないようにしよう。
「てめえらもだ! 俺様こそが最強だ! てめえらも俺に逆らうな! てめえら全員俺の下僕だ!」
喧嘩に勝ったでっかい方が喧嘩を見ていた野次馬達へと言う。あーあ。なんであんな煽る様なこと言うんだか。ほら、さっきまで賑やかだった野次馬達もシーンとして殺気立ってきた。
もう喧嘩は止めて欲しい。いや、やってもいいから外でして。私は絶対巻き込まないで。
「ぷっ。ミッちゃんミッちゃん。あんなので最強だって。あれだね。井の中の蛙湖を知らずだね」
「それを言うなら海ですよ」
湖じゃなくて海ですよ。大海を知らずです。リンさんってちょくちょく間違えるのよね。可愛いしいいけど。
「ああ!? 誰だ今の言った奴は!?」
やばっ! 聞こえてた! ひえー。こっち見ないで。違います違いますから。私でもリンさんでもないですから。私達はランチを食べにきたただの善良な冒険者ですから。
「……はい! この人だよ!」
ちょっとリンさん何言ってるんですか。言った人なんて居ないですよ。それなのにこの人って。そんな嘘ついておかげで巻き込まれた人が可哀想でしょ。それに人を指差すのは駄目ですよ。まあ、今は私だから許しますけど。……え?
「ほおー。てめえか」
「は!? え!? はあ!?」
リンさんは私を指差しニコニコ笑う。それを見たでっかいのは私の方へピクピクと何かを堪えるように笑いながらこっちへ来る。
そんな……。師匠が弟子を売るなんて……。
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