メル・アイヴィー・フロム・ザ・エクソプラネット
南雲 千歳(なぐも ちとせ)
第1話
──夏。
外出用のいつもの白いワンピースに丸い帽子を被り、ショッピング街の洒落た石畳の上をゆるりと
私は、その警戒心を起こさせる鳴き声を耳にするなり、立ち止まった。
帽子越しに日光に当たって少し蒸れた私の頭の中に、
軽く目をつむって耳を澄ますと、その鳴き声は、私の立っているこの綺麗な模様をした石畳より、かなり上の方から聞こえて来る様だ。
立ち並ぶ街路樹の先の方か、建物の壁などに止まって、鳴いているのだろう。
今はもう馴れたが、この
そんな
角を曲がると、カフェやブティックが並ぶモダンな感じの上り坂の向こう、遠くの方に、大きく発達した
雲を見て更に神経質になった私は、ビリー・ジョエルの『ストレンジャー』と言う曲を思い出して奮い立ち、坂を上がり始めた。
かつて、私は、この日本とは違う、別の国家で生まれた。
いや、もっと本当の事を言えば、私は異国から来た
何故なら──我が祖国、オーリア連邦共和国のある場所は、この地球上ですら無いのだから。
この星に来て以来、ずっと隠し続けている、私ことメル・アイヴィーの正体。
それは、この惑星に住む全ての地球人類にとって未だ
行き先に向かって歩いていると、複数の蝉の声が、ジーワジーワと、遠くの方から、絶え間無く聞こえて来る様になった。
それを聞きながら、私は手の甲で
もう、
晴れた日には、犠牲が多く出る──。
遠くから聞こえる、ジージーと言う蝉の鳴き声。
それは、私がかつて母星である『エムロード』に居た時──愛機に乗って作戦行動中、敵や味方の防衛施設や航空機から発せられる電波、その多くは索敵用のレーダー波の照射を受けた際に、操縦席前面の装置ががなり立てる警告音に良く似ていた──。
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