ファウナの庭設定資料集
白武士道
ファウナの庭 編
〈最初に〉
■ 五十音順に記載しています。
■ 解りやすさを重視するために、度量衡は現実基準のものを使用します。
■ 作中と表記や内容に若干の差異があるものがあります。
■ 筆者の言い訳もあります。
■ ネタバレもありますので、本編を一読されてからがよろしいでしょう。
〈あ行〉
アクイラ【人物】
女性。20歳。身長:167㎝。体重:58kg。体格:84/62/85(C70)。
第三騎士団所属。明るい赤毛のポニーテールが特徴の女騎士。
役職はイール地方駐屯中隊長で、階級は十騎長。双剣遣い。
本作は『異世界生物の生態を描写しよう』という内容なので目立たなかったが、対人戦闘においては中々の強者。大戦には参加していなかったものの、戦後軍縮を受けた騎士団でやっていけているのだから実力は確か。
その強さ、役職、凛々しい外見から、村々の娘さんからは王子様――完璧な存在だと思われている。ミランたちも最初は騙された。
が、その実態は完璧とは程遠い、とてもずぼらな性格。
清掃や整頓、披露する場面はなかったが炊事も苦手であり、おおよそ家事全般では足手まとい。ただし、力仕事だけは得意。
幼少期のトラウマが原因で虫に対して極度の恐怖感を持っているが、周囲の人間からの期待を裏切るのが心苦しく、それをひた隠しにしている。
ファウナやフローラとは形は違えど、アクイラもまた才能に恵まれた人間。若くして中隊長の地位にあるのがその証左。周囲からは騎士として大成することを望まれており、根が真面目なのでそれに応え続けてきたが、それ故に失敗することや他人から失望されることに怯えている。
四章はそんな彼女が自身の仮面と向き合う話。
これまで仕事一本の人生。また、役職的にも性格的にも自分の強さを誇示しなければならなかったので恋愛経験はあまりない。なので、ちょっとしたことで赤面する。こんなテンプレ女騎士初めて書いた。
五章の冒頭で私服姿を披露するが、その際、村娘のようなと描写されているのは、ミランを意識して女らしい服を選んだから。出会う前だったらオフでも鎧姿だった。
意外に可愛いものが大好きで、作中での「貴重な調度品」とは王都にて期間限定で発売された猫型ぬいぐるみのことを指したりする。
物語終了後でもミランと交流がある。ひょっとしたら、害獣討伐で肩を並べて戦うこともあったかもしれない。
名前は鷹の意。まんまである。
イール地方【地理】
レスニア王国貴族バーウェル伯爵領。
行政の中枢は辺境都市ヴェラス。
清貧を尊ぶ師匠と、そんな師匠に何とかして炊き立てご飯を食べさせようと奔走する弟子が暮らしているのも、そこ。
領地の半分以上を未開拓の森が占める田舎だが、バーウェル伯爵が善政を敷いていることもあって領民からの支持は篤い。
森林資源が多いため、大戦時には鉄を打つために大規模伐採が行われている。
古の信仰【文化】
太古の人々が信仰していた宗教観。
自然崇拝を中心に、アニミズム的な解釈も入り混じったもの。
巨木や巨岩、そして巨獣を神と崇める。
ウェルゴス帝国【国家】
大平原最大の国家。
中央平原を平定し、大平原統一を掲げて大戦を引き起こした。
ウキマネキ【生物】
脅威度:なし。
春ゼミの一種。
これが鳴き始めると雨季が始まるので、その名で呼ばれている。
ミランにとっては成虫も幼虫も食糧である。
羽毛竜【生物】
脅威度:★★★★☆。
レスニア国内に生息する有翼爬虫類。現生竜。ハネトカゲとも。
名前の通り、羽毛を纏った竜。竜種の中では最小。外見は鳥類に近い。
渡り竜と違って、国内の四季に適応した種。なので羽は抜け落ちないし、常にもっふもふである。
内温性の特性が強く、気温変化に柔軟に対応するが、体温を安定させるためのエネルギーコストの問題で極端な大型化はできない。
森の奥地や山岳で暮らしていることや、気性が穏やかなこともあって人間を襲うことは少ないが、いざ戦うことになれば竜の名に恥じない脅威となる。
作中でファウナが触れているが、彼らは卵生なのか胎生なのかいまいちはっきり分かっていない。
普通に考えれば卵生なのだろうが、その卵が未発見なので、作中時代の動物学で断言できないのである。
筆者の過去作において、その卵を取り扱った短編があり、読んだことがある知人はファウナの台詞にニヤリとしていた。嬉しい反応をしてくださる御仁よ。
オーベルテール【名称】
この世界の名前。
おおくち【生物】
脅威度:★☆☆☆☆。
夜行性の爬虫類。その別称。
外観はほぼトカゲ。いや、夜行性なのでヤモリと称するべきか。
ヤモリには人里に紛れて暮らす種が多いが、おおくちは主に森林に生息する。
名前の由来になっている楕円形の大きな口が特徴。
体格は25~40cmほどで、小型の哺乳類や昆虫類を捕食する。
爬虫類――地を這うものという分類の通り扁平なシルエットをしており、あらゆる隙間に潜む事ができるほか、足裏に生えている微細な体毛によるファンデルワールス吸着によって、あらゆる場所に張り付くことができる。
噛みつかれて傷口から感染症になることはあるだろうが、サイズ的に人間が直接的な害を被ることは滅多にない。
ただし、作中に登場した個体は小型のワニに匹敵するほどの大型で、人間ですら餌の対象になっている。
また、逃走のための手段である自切を陽動に使って狩りをするなど、トカゲの域を逸脱した高い知性を持つ。この個体に限り、脅威度は従来を大きく上回る。
……のだが、大きかったばっかりにミランに美味しく食べられてしまった。
王立学院【組織】
王立賢人養成所に同じ。
王立騎士養成所【組織】
かつてのレスニア王国が常備軍を擁するにあたり、高品質兵士を量産するために組織された養成所。
ぶっちゃけて言えば軍の士官学校。卒業生は騎士として各騎士団に任官する。
単純な軍事教練だけでなく、将来的には政治的な配慮が必要になる状況への投入も想定されるため、基礎教養も履修しなくてはならない。
男女共学。多額の入学金が必要なので、主に貴族や豪商の子弟が入学するが、一般からの受け入れもそれなりにある。
代々武官を輩出していた家柄(武家)からは受けがよろしくない。腕一本で王家に貢献してきたかられからすれば、武芸とは武者修行にて斬り覚えるもの。机で学ぶなんて生温いという考え。
ここを舞台にしたファンタジー学園ラブコメとか書いてみたい。
国立とか王立とか表記ブレがあるのは……ごめんなさい。筆者のミスです。
王立賢人養成所【組織】
王立の学術的研究機関。ありとあらゆる学問の研究する学び舎。
大図書館と呼ばれる塔を中心に構成された研究都市であり、城壁に囲われた王都にありながら、なおも城壁で隔離されたゲットー。
その歴史は古く、レスニア王国の建国以前から前身となる組織がすでに存在していたそうな。そのためか、王立とは名ばかりで、学問の自由を建前にかなりの独立自治を強いている。
その一つが公開規定であり、賢人養成所が蓄積した知識は、それが国王であっても勝手に閲覧することは許されない。仮に漏洩騒ぎになれば関係者は徹底的に粛清されるし、そのための戦力も秘密裏に保有している。
その中枢たる大図書館――ありとあらゆる英知の結晶は、現代よりも数世紀先のテクノロジーが集約しているものの、そこに至る権限はただ一人(?)を除いて誰も持っていない。
作中で王立学院と呼ばれている通り、教育機関としての側面もある。
どんな才人であっても、まずは賢人見習いとして王立学院に所属しなければならない。そこで基礎教養課程を修了し、正式に所属することを選んだ者は国家賢人として認定され、各学部に籍を置いて日夜研究と研鑽の日々を送る。
学術分野としては文理に大別され、学部としては人文と博物に二分される。
作中において博物学は自然科学的な意味で用いられるが、これはファンタジー世界に科学という言葉を使うのはどうかと思案した結果。
ファウナやフローラが所属する博物学部には動物学、植物学、鉱石学、医学、薬学、天文学、農学、魔法学などの学科で構成されている。その他の学科については実は詳しく考えていない。リベラルアーツに類するものはあるだろうが。
最も新しく、勢いに乗っているのは魔法学科。ただし、賢人養成所の理念は開発と普及、つまり「誰でも使える」という部分が重要なので、選ばれし者じゃないと使えない魔法に関する研究は、古風な賢者からは良い顔をされないのだとか。
〈か行〉
〈影〉【生物】
脅威度:測定不能。
別世界の生物の影。七色に光る極彩の平面。
次元の接合面を通じて、この世界に存在を示した。
いずれ顕現化する〈影〉たちに対抗するために、イール地方の生態系は変化していったのではないかとファウナは予測している。
花草茶【文化】
野草、香草を原料とした飲料。要するにハーブティー。
本来の茶は庶民では手が出せないほど高級なので、その代用品。
それぞれの家庭でブレンドが違い、持ち寄って飲み比べをするのが庶民の娯楽として定着している。
余談だが、ミランがファウナとフローラに出した虫糞茶は実在する。
もう一度言う。実在する。
カネオトシ【生物】
脅威度:なし
辺境の森に生息する食虫植物。
名前の通り、釣り鐘のような形状をしている。大きさは手のひらサイズ。
表面はでこぼこしており、止まり木効果がある。それにつられて羽を休めに来た羽虫を誘引性の甘い香りで内側におびき寄せ、粘着質な繊毛で拘束して捕食する。
サイズもたかが知れているので、人間の脅威になることはない……のだが、作中に登場した個体は食虫どころか食獣の域にある。
ある条件下において真下に熱源を感知すると、内部の水圧を調整して捕虫器を切り離して自由落下。生き物を閉じ込めて溶解させるという、自身には何の益もない不可解な生態を持つ。
このことから、フローラはカネオトシを「単なる食虫特性を持った着生植物ではなく、宿主との相利共生植物だ」と推察し、森の栄養循環を調整する種ではないかと考えている。
もっと言えば、〈影〉に対抗するための強力な個体を生み出す土壌作りを行っていたのではないかとも。
作中ではフローラが被害に遭った。
余談ではあるが、こういったシチュエーションでは服がボロボロになってあられもない姿を晒してしまうというのがお約束というものである。だが、作中そのような描写は見られなかった。
何故かと言えば、服というものは基本的に植物性繊維でできているからである。
食虫植物の消化液ならプロテアーゼやキチナーゼといった蛋白質分解酵素と推測されるし、実際、浸透して触れた肌から炎症を起こしている。
ウールやシルクであれば可能性はあるが、動物の毛というものがそもそもが分解され難いもの。加えて作中時期が夏なので羊毛はないだろうし、いくら国家賢人であっても制服が高級な絹とは考えにくい。残念だが。
……いや、待てよ。
服は無理でも下着ならばいけるのでは?
救出当初、裾がめくれるのをやたらと嫌がっていたし、シルクの下着だった場合、溶けてノーパンだった可能性が微レ存……と、この項目を書きながら思うのだった。
貨幣【文化】
お金。
レスニア王国では金貨、銀貨、銅貨の三種類が流通している。
ミランの言では、金貨十枚で庶民が一年遊んで暮らせるとのこと。
ちなみに、これが確立する前は鉄貨を用いていたらしい。
使われなくなった鉄貨(古銭)がいかなる理由で再活用されるようになったかは炊き立てご飯で語られる。
神【文化】
ぶっちゃけてしまえば、なんだかすごいものの総称。
古の信仰においては巨石、巨木、そして巨獣などが該当する。
狭義で言えば、神域より現れた獣を指す。
基本的には崇め奉られるが、多くの場合は畑を荒らしたり、人間に危害を加える荒神ばかりなので、それを諫めるために辺境の人々は〔神狩り〕という非人を作り上げた。
神狩り【文化】
古の信仰における神――巨獣を狩る役割を持った者たち。
作中ではミランが該当する。
古来より災害は自然(神)の怒りと考えられおり、人間は社を立てたり、供物を用意したりすることで、その怒りを鎮める努力をしてきた。
ところが、地震や津波と違って、獣害というものは森の神の怒りでありながら、人間の力でどうにか対処できる領域の話であり、古来より戦って解決してきた側面がある。
しかし、それでも神は神。生活にためには仕方ないとはいえ、神を誅する行いは古代人の宗教観的に罪深く、その穢れを大いに恐れた。
そこで、自分たちの代わりに穢れを背負わせるスケープゴートを用意した。それが〔神狩り〕である。
彼らは文化圏においては非人。
人間側ではなく自然側に属する存在と定義され、神でもなく人でもない中途半端な存在として扱われてきた。神聖な存在故に差別もあっただろう。
だが、それも時代の流れとともに風化していった。
自身を〔神狩り〕と定義する少年は、神を見失いつつある時代に何を思うのか。
一人の少女との出会いを契機に物語は動き出す。
最古の国家であるレスニアが建国される以前の時代を指す。
古の信仰の最盛期。
砂鉄の収集方法の一つ。
砂鉄を含んだ岩石や土砂を川や水路の流れを利用して破砕、比重差によって砂鉄のみを取り出すというもの。
つまり、この世界の製鉄はたたら製鉄である。
鉄穴流しによる砂鉄収集は河川下流域に大量の土砂が流出し、農業灌漑用水に影響を与える。鉄穴流しを行う時期を農閑期にしたり、堆積した土砂を耕して田畑にするなど工夫はしているものの、それでも本来の地形を変えてしまう環境破壊であることには違いない。
騎士【職業】
レスニア王国には常備軍を擁するため、職業軍人というものが存在する。
それが騎士である。
騎士は武官、すなわち軍事方面の官吏。中でも士官階級を指した言葉。
地の文でアクイラの部下を兵士と書き分けていたのはそのため。
士官階級はざっくりと十騎長、百騎長、千騎長の三つ。
レスニア王国騎士の訓戒として「鷹は飢えども穂を摘まず」という文言が掲げられているため、騎士関連のネーミングには猛禽にまつわるものが多い。
騎士団【組織】
国家の防人たる自衛組織。
首都防衛を担う、家柄・実績・忠誠心の第一騎士団。
国境防衛を担う、完全実力主義の第二騎士団。
辺境各地に点在し、臨機応変に遊撃を行うものの、左遷先最有力候補の第三騎士団に分かれる。
あ、第三騎士団所属のアクイラは別に左遷されたわけではなく、自ら望んでそこにいるのであしからず。
近衛騎士団という王室直属の騎士団も存在するが、予算の出所が違うので指揮系統としては独立している。現実世界でいえば宮内庁の管轄。
貴族【文化】
国王より各地方の統治三権(司法、立法、行政)を委任された者たち。
地位の高い順に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五つの爵位がある。
多大な特権を有する反面、その子弟には兵役などの義務が課され、「位高きは徳高き」という理念の下、領民に範を示す生き方が求められる。
裏設定ではあるが、赤の貴族と白の貴族の二種類がある。
作中時代から一世紀ほど前、王妃が双子の王子を出産し、やはりと言うか何というか、王位継承を廻ってどろどろの家督争いがあった。
貴族の派閥も真っ二つに割れた。兄王子派の貴族が赤の軍勢、弟王子派の貴族が白の軍勢に分かれ、二大勢力による内乱が勃発したのである。
結果は、白の軍勢の勝利。弟王子が政権を握った。
かくして戦犯となった赤の貴族は重くて身分剥奪の上、処刑。軽くて爵位の降格、土地の返還などの罰が与えられた。
それから一世紀が過ぎても、赤の貴族は肩身が狭い思いをしている。
RPG風に言えばブレストアーマー。
内臓が収まっている胸部、腹部を重点的に防護するための鎧。
それ以外の部位については皮革鎧などで補うしかないが、致命傷を防ぎつつも、高い運動性を維持できるため、戦場を迅速に駆けまわる騎兵や、前線で陣頭指揮を執る士官階級(十騎長や百騎長)が好んで使う。
作中ではアクイラが装備している。
夏至祭り【文化】
夏至の時期に開かれる祭り。
農作において水と同じくらい日光は重要で、日照時間が足りないと冷害になる。一年を通して最も太陽が地上を照らす夏至の日に、光の恩寵をもたらしてもらえるよう祈願するのである。
作中で語ったように、娯楽が少ない農村は何かにつけて祭りをする。雨季の前には雨乞いの祭りを、夏の中旬には厄病除けの祭りを、収穫の後は豊穣祭を。
まさに「酒が飲める酒が飲める酒が飲めるぞー」を地で行く世界なのだ。
煙玉【道具】
野犬対策として旅人が携帯するアイテム。
香辛料や悪臭を放つ昆虫の粉末などを混ぜたもの。犬散らしとも。
除虫効果を持つ植物を使用するものある。こちらは虫散らし。
元服【文化】
成人の儀。
レスニア王国では16歳で成人と認められる。
ごきぶり【生物】
脅威度:MAX
解説不要の黒光りする生き物。じゃあ、なんで載せたし。
国家賢人【職業】
王立学院に所属する職業的な知識人。法衣と称される白い制服を纏う。
作中ではファウナ、フローラが該当する。
国家賢人の研究成果は政治、軍事、工業、農業といった分野に活かされ、国家の発展に一役買っている。
ほとんどの賢人は学院の研究棟で自身の研究に明け暮れているが、フィールドワークを好む賢人もいる。
筆者にとっては便利な舞台装置。
なぜって、ファンタジー世界に実在するかどうか微妙なものは全部こいつらが開発したと言えば一応の説明がつけられるから。
米【文化】
表作として生産される作物。
庶民も食べることはできるが基本的には贅沢品である。都市部でも米と麦を5:5くらいで炊き混ぜるのが一般的。
米は王侯貴族の税の対象である。しかし、米=稲は植物なので生産量というものが厳密には予測できない。なので、相場というものが生まれる。
米が足りなければ高騰するだけだが、逆に余れば価値が下がる。つまり、支配者たちの収入が相対的に減ってしまう。
それは困るということで編み出された解決案の一つが、四章で語られた酒造統制である。要するに「米が余った時は酒蔵に回して価値を調整すればいいや。ついでに酒税を課してしまえば一石二鳥やで」ということ。
〈さ行〉
下着【文化】
お色気要素として作中にしばしば登場するもの。
下着の発祥は思いのほか古く、紀元前まで遡ることができる。
一般的なファンタジー世界(いわゆる中世ヨーロッパ風)の文明水準でも、その役割を担う衣類は存在するだろうが、いわゆるランジェリー・タイプは近代以降にならないと台頭しない。
それじゃ、本編で描写される下着は実用一点張りの色気もへったくれもないものなのかと言われれば、それはノーである。断固ノーである。下着と描写したからにはランジェリー・タイプでないと駄目なのだ(握り拳)。
多種多様なジャパニーズ・ファンタジーが量産され続けるこのご時世において、下着がどうとか、トイレがどうとか、風呂がどうとかとかの設定なんて些末な問題でしょ? ね?(同意を求める視線)
とはいえ、そういう世界だからで済ませるのも何なので、一応の言い訳を。
作中世界において産業革命なんてまだまだ先の話なので、移動・運搬のほとんどは馬が担っている。
ところが騎乗する際、何も履かない状態でまたがると、何とは言わないが、年頃の男女に生えるアレが背中に当たってしまい、くすぐったくて馬が言うことを利かないのだそうだ。
その問題を解決するために脚絆が生まれたわけだが、基本的にそれは実際に馬に乗って働く男の衣装であった。性的役割の違いが、男女の衣装の違いなのである。
しかし、いざとなれば女であっても馬を駆らねばならない。
例えば、悪党に襲われたお姫様が逃げるために馬を拝借しても、ドレスの下に何も履いていなかったら馬が言うことを利かず、逃走は失敗。そのままお持ち帰りされてしまう。
そんな薄い本的展開を回避するために、王侯貴族の女性用に丈の短い脚絆が考案されたのだが、とある国家賢人が皮膚病予防の観点から保湿、快適、衛生、おまけに体型維持の面で更に改良を加えた。特にデザインに関しては偏執的なこだわりを見せ、それが後世において下着として民間に普及したのである。
よくやった国家変人。
余談だが、基本的に素材は綿。高級なものだと絹が使われる。
さらに余談だが、この世界ではゴム製品はまだ発展していないので、構造的に紐で結ぶタイプが主流である。決して筆者の趣味ではない。
え? ゴムがないならワイヤーもないだろう?
胸を支えるほうはどうするのかって?
それはだね、家畜化した蜘蛛の糸(同一の太さなら強度においては最高峰)を縒り合わせた硬糸というものがあってだね、そこに着目した国家変人が(以下略)
『上手に質問しさえすれば、自然は知りたいことをみんな話してくれる』【台詞】
元ネタはジャン・アンリ・ファーブルの言葉。
ファウナがこれを引用しているからって、この世界にファーブルが存在しているわけではない。きっと昔の賢人が似たようなこと言ったんだよ。うん。
神域【文化・地理】
文明の手が届いていない、自然のままの土地。
古の信仰では自然物には神が宿るとされ、人間の手が入っていない原生林は神の領域として認識される。
そこからやってくる獣は神の遣い、あるいは神そのものとして崇められている。
まだ人類の生存圏は狭いので、あちらこちらに原生林は存在するものの、文明が発達すれば発達するほど、それは神聖なものではなく単なる自然資源として見なされていく。
生理特性【生物】
生物の体温調節において、自身で熱を生み出す生物を恒温動物(内温性)、外部から熱を得るものを変温動物(外温性)として二分化していた。
ところが、後の研究で生物の体温調整システムは二分化できるほど単純じゃないことが発覚し、こういった表記は年々廃れてきている。
……のだが、それは現実の話。
作中世界の文明レベルではまだまだ恒温・変温の分け方が主流。
生態考察においてもそれを基準にせざるを得なかったという筆者の弁解。
作中では、変温動物は体温調節に外部熱源を利用しているため、摂取した栄養を効率的に体格拡張に費やせるので大型化しやすいと解説している。
杜撰な解釈だが、竜を出すためにはしょうがない。
セトゲイノシシ【生物】
脅威度:★★★★☆。
大戦時の環境破壊で棲み処を追われ、イール地方にやって来た猪。
ミランからは渡来の神、異邦の神と呼ばれている。
名前の通り、背中に棘がある。これは体毛が変化したもので、動物学的には針毛という。現実世界ではハリネズミなどもこれに該当する。
もともと猪という生物は体が大きいので外敵が少なく、その幼体であるうりぼうも縞々模様の森林迷彩があるので生存率が高い。その上で、これほど直接的な防衛手段を持っているということは、本来の生息地には彼らを食らう捕食者がいることを間接的に示している。
また本種の特徴として、背中の棘のせいで動物界では至極スタンダードな後背位での交尾ができない。なので、人間でいう対面側位のような形で交尾を行う。繁殖形態としては悠長だが、それだけ天敵が少ないことの証左である。
脅威度的には〈森の王〉に匹敵するものの、序章でミランにあっさり射殺されてしまう出オチ要因。ただし、それは神域の腕前を持つ彼だから可能だっただけで、並の猟師では束でかかっても敵わない。頭もいいしね。
数ある避難先にイール地方を選んだ理由は、いずれ顕現化する〈影〉に対抗するためではないかとファウナは睨んでいる。
せめて炊き立てのご飯を【作品】
ファウナの庭と同一世界観の中編小説。
リアルが忙しくて更新が止まっていますが、ちゃんと最後まで書きます。
村長【人物】
トゥアール村の村長。
年配ながら時代の流れに柔軟で、〔神狩り〕を非人として扱うことに疑問を感じたり、年若いミランが迷いなくその道を進んでいることを心配している。
物語の外の話ではあるが、彼の働きかけがなければ、ミランは村に踏み入ることも許されなかっただろう。
〈た行〉
大戦【歴史】
中央平原の覇者ウェルゴス帝国と、レスニア王国を主導とした反帝国連合による有史最大の戦争。その戦禍は各地に大きな傷跡を残した。
ファウナの話では、終盤で巨大な〈力〉と〈力〉が衝突したそうだ。
大平原【地理】
異世界オーベルテールの大陸にある平野部。
北の山岳地帯から海にかけて広がる平原地帯。
大雑把に北部平原、中央平原、南部平原と三つに分けられる。
現実で言えば日本列島の総面積に匹敵し、十を超える国家が点在する。
物語の舞台であるレスニア王国は北部平原の最果てに位置しており、大平原の国々の中では山岳地帯を擁する数少ない山国としての側面がある。
トゥアール村【地理】
イール地方の端っこのほうにある村。人口100人程度の寒村。
物語の舞台であり拠点。神域と隣接する場所。
名称の語源は「とある村」。
度量衡【地の文】
作中では主に尺貫法が使われている。
これに関しては書き始める時に「オリジナルの単位だと読みにくいだろうな……でも現実と同じ単位だとファンタジー感ないな……」と悩んだ結果。
正直、やらなきゃよかったと後悔している。
〈な行〉
皮革鎧の一種。RPG風に言うとソフトレザーアーマー。
なめした皮(を革という)を使用した鎧。
なめしただけなので柔らかく、体の動きを妨げない。金属鎧と違ってがちゃがちゃ音もしないので、隠形が必要な盗賊や狩人には必須の防具。
余談だが、ワックスを塗って固めた革を使ったものは
RPG風に言えばハードレザーアーマー。こちらは防御力が上昇した分、可動域がやや狭いので、どちらかといえば貧乏戦士向きである。
人間ですら~美しいとは思いませんか!【台詞】
第一章の/2にて、ファウナが生物の神秘性を誇らしげに語った台詞。
遡河回遊魚は鮭、蝙蝠の超音波はエコーロケーション、正六角中の空間充填構造はハニカム構造。普段耳にしない言葉のオンパレードだったと思われる。
回りくどい表現になったのは、作中に外来語や現代語を使うことに抵抗があったから。作中にどれだけ現代の言葉や度量衡を持ち込むか、ファンタジー書きの諸兄ならば一度は悩んだことがあるかと思われる。
その上で、筆者はあえて極力外来語を用いないという縛りを課している。
が、後半に行くにつれ「やっぱこれはねーわ」と思い直し、読みやすさ重視のためにルビを振っていたりする。意志が弱い。
沼貝【生物】
脅威度:なし。
水田や流れの緩やかな河川に生息する淡水巻貝。
グレンボタルやビャクレンボタルの幼虫の餌。
沼貝がたくさん生息している環境は水質が良好な証である。
藻を食べ、沈殿物を食べ、懸濁物を濾過して水質を浄化する彼らは水稲耕作において益虫としての扱われる。繁殖力も高いので食用としても有り難がられ、農民の貴重な動物性蛋白質となっている。
食用の場合は主にスープの具材として使用される。ただし、食べる場合は真水で泥抜きして、過熱する必要がある。まあ、淡水の生物は基本的に寄生虫問題があるのでこの種に限った話ではないのだが。
作中では食べることはなかったが、炊き立てご飯のほうで実際に食している描写がある。
野熊【生物】
脅威度:★★★★☆。
のぐま。
野生の熊。外観や生態は現実世界のものとほぼ同じ。
この作品の世界観において、ちょこちょこ遭遇する割に被害が半端ねぇエネミーベストスリーに名を連ねる。ちなみに残りは犬と蜂。
普段は森の中で生活しており、臆病だが、餌が不足すると人里に降りてくる。
「イールの熊は火を恐れない」という台詞があることから、獣除けで使われる火は効果がないと思われる。
〈は行〉
ファウナ【人物】
女性。16歳。身長:145㎝。体重:39kg。体格:69/55/78(A60)。
本編のヒロイン。
王立学院博物学部、動物学科所属の国家賢人。大戦後の生態調査の任でイール地方へとやって来る。
腰まで届く長い金髪と空色の瞳、日焼けとは無縁の白い肌が特徴。
自覚はないが美少女で、笑顔は太陽に、姿は妖精に例えられる。
妖精というだけあって幼女体型なのだが、それをコンプレックスに感じている。ちっこいとかちんまいとかつるぺただとかは禁句。なのだが、割と頻繁に自虐する癖があり、何かにつけて勝手に自爆している。
胸よりも先にお腹が当たるという表現があることから、俗にいう胃下垂(イカ腹)で、腹筋が弱いと思われる。それを抜きしてもファウナのバスト事情が残念なのは事実だが。
さらに残念なことに、カップ数もちょっと盛っている。
ファウナにジャストフィットするサイズはAA(60)なのだが、女性の体というのは日によって変化する。エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンの関係で日常的に大きくなったり小さくなったりするのだ。ファウナの場合、一つ下のものをつけると胸が張った時にきつくなるので一つ上のものをつけている――というのが当人の解答。見栄もあるのだろうが、仮にそれが本当だったとしても……。
ただし、尻は大きい。太腿もそれなりにむっちりしている。研究職故の不摂生が下半身にくるタイプ。
頭はいいが、運動神経は悪い。まず転ぶ。とにかく転ぶ。しかし、転び方にコツがあるようで傷を負うことは少ない。
あらゆる生き物が大好きで、最大限の敬意と知的好奇心で向き合う。
かつては才能や適性に殉じることが個人の幸せと考えていたが、在野の老賢者と出会い、それだけが生き方の指針ではないと知ったことで、才能に縛られた人生について疑問を持つ。
だが、自分勝手に生きたい道を選べるほど、彼女の才能は安くなかった。
周囲の期待、そして自身の才能の価値を知るが故に、できることとやりたいことの狭間で揺れ動いていくが、ミランとの出会いで迷いが晴れる。
人間を憎みつつも、それでも自分は〔神狩り〕なのだから。最後には人間の側に立つものだから――そう宣言するミランの誇り高い在り方に感銘を受けたファウナは、自分のやりたいこと=自分の在り方を貫く矜持を見出す。
以降は彼を護衛として雇い入れ、生態調査を進めていく。
ミランに対しては尊敬の念しか自覚していないが、フローラのアピールに無意識に嫉妬するあたり、最初のほうから恋愛感情を抱いていたようだ。
ファウナの正体、それは史上初となる第七系統の魔法の遣い手。この魔法が実用化されれば、作中でもフローラが語ったように文明の大きな転換期となる。
物語終盤、神域の奥で蠢く〈影〉に遭遇したファウナは、この世界における自分の役割を自覚。自身の人生と世界の救済を天秤にかけて後者を選ぶ。
――その決意に敬意を。
願わくば、彼女がまた笑って庭を歩ける日が訪れんことを。
名前は動物相の意。まんまである。
フローラ【人物】
女性。16歳。身長:156㎝。体重:49kg。体格:86/58/83(F65)。
博物学部、植物学科所属の国家賢人。
専門は救荒作物の開発と量産。ファウナとは学院時代からの友人。
ツインテールにした銀髪に鮮やかな紅い瞳が特徴。
自覚のある美少女で、その姿は月明かりの百合に例えられる。
大好きだった兄を奪った戦争を憎んでおり、その根絶のために賢者を志した。
戦争根絶のためには優れた食糧生産を、その時間を稼ぐための長期間の平和には強い武力=魔法の普及が必要と考えており、貴重な魔法系統を持つファウナに将来を期待していたが、ファウナがその道を選ばなかったことで友情がこじれてしまう。
学科移籍の話で逃げ出すように生態調査に出向したファウナを追いかけてイール地方へやってくる。
ミランと同じ境遇の、けれど正反対の考えを持つ人物。
彼との語らいによって、自身が戦争の憎悪に支配されていたことに気づき、大事なものを失う前に取り戻せたことを感謝している。
善かれ悪しかれ、やりたいことは何が何でもやりとげる意志の強さを持つ。
それは、本当にやりたかったことを「素質がない」という理由で諦めなければならなかった悔しさから、努力で手に入れられるものはすべて手を伸ばしたいという思いの表れ。同時に、かつてのファウナの同じく「才能を持つ者は、持たざる者の代わりにその道に殉じるべき」だと思っている。
そんな性格なので、植物学科所属のくせにやたら芸達者だったりする。
また、人格よりも才能、技能で人を見る癖があり、効率的だからという理由で下着の洗濯もミランに任せている。羞恥心もあまりないが、自分の魅力はしっかりと把握しているようで、面白半分に色仕掛けをしてくる。ミランのストレスの原因は間違いなくこいつだ。
物語終了後はファウナと共に学院へ戻ったが、ファウナが帰ってくる時は一緒についてくるだろう。
名前は植物相の意。まんまである。
ベヴァリッジ博物記【道具】
博物学の基礎教本。同名の賢者の著書。
永劫未完の書であり、これを完成させることが後世の博物学部の使命。
蛇【生物・食べ物】
脅威度:★★☆☆☆
説明不要の爬虫類。
有毒の種が多いので、そこそこ脅威度は高い。
作中ではやたらとミランが食べたがる。もはやエネミーと言うより食糧。
蛍【生物】
脅威度:なし
おしりひかるむし。
止水域に生息するグレンボタルと渓流に生息するビャクレンボタルの二種類が確認されている。
漢字で書くと紅蓮、白蓮となる。
言うまでもなく、元ネタはヘイケボタルとゲンジボタル。
源平合戦では平氏は赤を、源氏は白の旗を掲げたのが紅白の由来だとか。
〈ま行〉
魔犬【生物】
脅威度:★★★★☆
野生化した戦闘軍用犬。
戦争が終わったことを知らないまま、終わらない戦争を繰り返す哀しい獣。
おおよそ人間の手に負えない怪物だが、人間の因果応報、自業自得によって生み出されたものであるため、自然の怒りを象徴とする神ではない。ミランからは堕神と呼ばれる。
その戦闘技能は対人用に特化しているため、人間の手で倒すことは難しい。
もし、ミランが協力しなければ騎士団は膨大な犠牲を払ったことだろう。
魔法【技術】
意志の力で世界に影響を与える能力。
加熱・冷却・流動・放電の第一から第四までの基礎系統と、重力・光子の第五、六の上位系統。
そして、未発見ながらも時間や空間に作用するであろう第七系統が存在する。
炎を生み、冷気を放ち、風を巻き、稲妻を操る。そういった超常の力であるが、意志ある者すべてが習得できるであろう技術。
え? 三章でフローラが「先天的素質が不可欠」のようなことを言ったじゃないかって?
彼女の言う素質は、絵の才能のようなもの。
絵を描くこと自体は誰しも習得し得る技術だが、プロとして大成できるのはその中でも一握り、という意味合い。
人間は誰しもが無意識に世界へ干渉しているが、それは大海原に小石を投げ込むくらいの影響で、せいぜい分子一つ、二つに振動を与える程度に留まる。ほとんどの場合、物理現象を恣意的に操作する域にまで到達しないものの、稀にそういったことを自然にできる人間が存在する。それが魔法使いである。
かつて魔法は後天的習得が不可能な『特権』のようなものと認識されていた。
しかし、ある時、後天的に習得した人間が現れたことで、出力は予め定められたものではなく、何らかの要因で変化するものであると認識を改め、特権から技能へ格下げされ、学問の対象になったという経緯がある。
ただし、それが何によってもたらされているのかは現在に至っても完全には解明されていないので、「後天的に使えるようになった奴は、眠っていた特権が目覚めただけじゃね?」と魔法学科に反目する学閥が存在するのも事実。
ここだけの話、意志持つ者であれば行使し得る力なので、遣い手が人間だけとは限らなかったりする。
というか、そもそも魔法という現象は――
魔法学科【組織】
王立学院において、魔法を研究する最新の学科。
学科長は世界初の後天的魔法使いであるラフロイグ女史。
マルガリータ【人物】
ロートヴァルト王国の宰相にして女王陛下の親友。愛称はリッタ。
筆者の友人が書いてくれたスピンオフ作品の重要人物で、ファウナの庭には登場はしない。
この世界においては三指に数えられる魔法使い。
『まるで未来から完成品を持ってきたような』【地の文】
ロートヴァルト王国の魔法を表した地の文。
おそらく、ほとんどの読者には意味が不明だったと思われる。
もともとこの作品は身内で読みまわす小説として書くつもりだったので、筆者の過去作や、それをスピンオフしてくれた友人の作品から引き継いだ設定がわずかに残っている。これもその一つ。
友人が書いてくれたロストプリンセスというスピンオフがめちゃくちゃ面白いんだよな、これが……。
ミラン【人物】
男性。16歳。身長170cm、体重60㎏。
この物語の主人公。現代では希少となった〔神狩り〕。
自然と調和、孤独を愛する古の狩人。
そのため自然への敬意を忘れた現代の人間……特に、戦争の従事し、父親を失う遠因を作った騎士を軽蔑している。
しかし、現代文明の象徴たる賢人の身分にありながら、自然に対して純粋な敬意を持ち、環境破壊の愚かさを顧みるファウナと出会ったことで、人間もまだ捨てたものじゃないと評価を改めるに至る。
そして、自身が騎士に対して抱く憎悪もまた、魔犬と同様に戦争によってもたらされたものだと悟り、それを乗り越えるために、同じく戦争に囚われた魔犬と戦う道を選んだことが物語の起点となる。
始終、その在り方に変化がない人物。その変わらない自己同一性は、様々な問題で悩む同年代の少女たちに影響を与えた。
若いながら卓越した弓の遣い手であり、序章では夜間の風下という劣悪な条件下でセトゲイノシシの心臓のみを射抜くという神業を見せる。しかし、生活に必要な狩猟はほとんど罠猟で済ます合理的な面も。
基本的に食う、寝る、狩るの三種類の行動しかしない。
唯一の文化的な趣味は花草茶のブレンドの研究。意外と凝り性で、やるなら最善を尽くすタイプ。その性格は家事全般にも表れており、女性陣は立つ瀬がない。
自然から得られる糧は何でも食べるが(何でも過ぎて悪食の域)、中でも捕獲・処理が手軽な蛇肉が好む。作中で「蛇肉食べたい」旨の発言をするが、残念ながら実際に食べる描写はない。トカゲは食べたけど。
色気より食い気を地で行き、空腹時はファウナの尻を見ても「どうして桃じゃないんだ」と不平を漏らすほど。ただし、腹が満ち足りている状況では年相応に情欲を持て余しており、五章では誰が言ったかドラゴン級ラッキースケベを展開する。
文化圏に属していないので文字が読めないという設定があるが、筆者の実力不足で活かし切れなかった。そういう設定だったらさぁ、ミランが文字が読めないのを分かったうえで、「おまじない」と称してファウナが手のひらに「好き」って書いちゃうとか、そういう甘酸っぱいシーンを入れるもんだろうがよぉぉぉ。
名前は鳶の意。
鳶は森と人里の狭間に暮らし、それぞれを行ったり来たりして生活する鳥なので、ミランの設定的にぴったりだなぁと思って採用した。
麦【文化】
米の裏作として生産される作物。
イモ類と並んで庶民の主食。麦酒の材料でもある。
麦酒【文化】
庶民の酒。麦を発酵させて作られる。
麦を用いた自家酒は太古の昔から存在し、家庭内で製造、消費されていた。
レスニア王国にも酒税は存在するものの、米を用いた酒にしか適用されず、麦酒は粗悪な酒という建前で見逃されている。要するにどぶろくのような扱い。
ただし、あくまで自家生産・自家消費に限ってのこと。それを販売すればたちまち御用となる。夏至祭りでタダで酒を振る舞っていたのはそういうことなわけだ。
〈森の王〉【敵】
脅威度:★★★★☆。
イール地方における最上位捕食者。その称号。
長らく名前だけの存在だったが、六章で正体が熊だと判明する。
初代は大戦時の資源確保のための伐採で棲み処を失い、怒り狂って近隣の村々を壊滅状態に陥れそうになるところを、ミランの父によって討伐された。
しかし、ミランの父も無事では済まず、その時に受けた傷が悪化したことでこの世を去る。
本編では二代目対決となったわけだが、そこはやはり王。あのミランをあっさりと窮地に追いやった。
ファウナが助け舟に入らなければ、ミランは父親と同様の運命を辿っていたことだろう。
〈や行〉
野犬【生き物】
脅威度:★★★☆☆
やけん。
野生の犬。まんま。
この作品の世界観において、ちょこちょこ遭遇する割に被害が半端ねぇエネミーベストスリーに名を連ねる。ちなみに残りは熊と蜂。
野犬は一体ごとの戦闘力はそこまで高くないが、群れで現れるため厄介。組織的な行動を取り、チームワークで自分よりも強い相手を倒す。脅威度は単体ではなく集団での数値。
あまりにも野犬被害が多いため対抗策が確立されており、基本的には犬散らしと呼ばれる香辛料と悪臭を放つ昆虫の粉末を混ぜた煙玉で撃退できる。
馬陸【生き物】
脅威度:なし
ヤスデ。
ムカデのような外見をしているが、ムカデと違って非常に温厚な多足類。
驚いた時に渦巻き状に丸くなるのが特徴。
主に森林に生息している。所謂、分解者の役割を持ち、地面の落ち葉を食べて、その排泄物に含まれる栄養が土壌に還元して樹木を育む。
人間の世界においても田畑を肥やしてくれるので益虫と言っても過言ではないのだが、嫌われるのはやはり外見の問題か。
ただし、完全に無辜の被害者かと言うとそうでもなく、自分の身に危険が迫ると毒素を放出して威嚇する。この毒の成分は青酸化合物で人体にも有害。頭痛、吐き気などの症状が出る。場合によっては中毒死に至る。
一匹一匹は小さいので脅威でも何でもないのだが、作中のように大量発生して毒を噴き出すと手に負えない。
作中では30cmの個体も確認されているが、想像すると筆者もちょっと引く。それを見て喜ぶファウナってやっぱりおかしい。
野猪【生き物】
脅威度:★★★☆☆
やちょ。
ルビを振らないと読めないであろうランキング第一位。
猪はとても優秀な生き物である。
どこが優秀かというと、雑食性で餌を選ばないのでどんな環境でも生きるし、体が大きいため天敵も少ない。繁殖力も高いので個体数もなかなか減らないし、頭も良いので簡単な罠は学習して見破ってしまう。
おまけに強い。走る速度は時速40~50kmくらい。逃げれば人間の足じゃ追いつけないし、ぶつかればただじゃ済まない。顎の力も人間の指なんて簡単に食いちぎるほどに強い。
なので、農耕民族からは昔から害獣王として嫌われてきた。哀れ。
お肉は美味しいんだけどね。
〈ら行〉
ラフロイグ学科長【人物】
王立賢人養成所における魔法学科の長。女性。
世界初の後天的魔法使いであり、魔法という力は特権ではなく技能であることを世に示した人物。魔法学の第一人者。
竜【生物】
有翼爬虫類の総称。作中では羽毛竜、渡り竜が該当する。
ドラゴン。説明無用、問答無用のモンスターの王様。
ファンタジーを書くならやっぱり出したいよねということで実装された。
この世界の竜には古代竜と現生竜がおり、現生竜はそれぞれの項目が用意されているので、ここでは古代竜について語ろうと思う。
古代竜は爬虫類(有翼ではない)で、現生竜よりも遥かに巨大な体をしていた。顎の化石の形状から考察するに、そのほとんどが草食性であったとされる。翼を持った肉食性の種もいたが圧倒的に少数だった。
体が巨大であるのは、外温性動物の特性である低燃費によって体躯の拡張が容易だったから。また、体が大きいことはそれだけで他の肉食動物から襲われるリスクを減らすことができるので、どんどん大型化が進んだ。
それだけ体が大きいと血液循環に支障が出るのが常なのだが、彼らは気嚢と呼ばれる特殊な呼吸器を持っていたので体の隅々まで酸素を運ぶことができた。
加えて、爬虫類は汗腺を持たないために体を冷やすことが苦手とされ、排熱面に課題があったのだが、呼吸時に空気を大量に取り込むことで体の内側から冷却することで解決。気嚢は体温調節に面でも重要だったのである。
しかし、古代竜のほとんどは地表の寒冷化に適応できずに滅びてしまう。
外温性動物だから寒さに弱かったというのは間違い。むしろ、大きな体はベルクマンの法則によって寒さにはめっぽう強い。
直接的な原因は食糧事情。古代竜を支えていた食草群が四季の発生によって種が変化したり、絶対量が減少したりしたことが要因。
そして、草食竜を食べていた肉食性古代竜も後を追うように滅び、最終的に作中時代には近縁種の二種類しか生き残らなかった。
時代の変化に取り残された彼らが抱く思いは、同じく時代の流れに取り残された古の狩人と通ずるものがあるのかもしれない。
レスニア王国【国家】
物語の舞台であるイール地方を擁する小国。
大平原の北部に位置する最古の王朝。背後に大山脈を擁する数少ない山国。
反帝国連合の枢軸となった国家。
騎士養成所と賢人養成所――武と知の高品質化を実現し、小国ながら文明水準は最高峰。単独で周辺諸国と渡り合うだけの国力を秘めている。
が、大戦後の疲弊で現在は軍縮を余儀なくされている。まあ、これには新たに戦争の火種を残さない政治的な配慮もあるのだが。
北国なので冬は厳しい。雪もめっちゃ降る。が、その雪が春になって膨大な水源として恵みをもたらすので安定した農業生産が可能。
また、気温が低いため、暑さに弱い牛の飼育することができ、畜産による乳製品や革製品も豊富。
何よりも山岳資源が豊富なため金属類――特に鉄の生産量は大平原トップクラス。純度の高いレスニア鉄は輸出品にもなるほど。
余談ではあるが、レスニアを含む北部平原では山が身近な存在なので、凹凸の顕著な女性、ぶっちゃけて言えば巨乳が魅力的だとされる。豊穣の女神は山脈の擬人化。山や森の恵みを最大限活用しているレスニア王国であればやむなしか。
逆に中部平原はシンデレラバストな女性(農作に適した平地の象徴)、海を擁する南部平原は毛髪の量が多くて色が濃い女性(波や海草の象徴)が魅力的とされる。
ファウナが自身のつるぺた具合にコンプレックスを感じていたのはレスニア王国の価値観で育ったからであって、仮に別の国が舞台であればフローラに対してドヤ顔していたかも知れぬ。
ロートヴァルト【国家】
大戦時、レスニア王国と同盟を結んだ国の一つ。
かつては悪の大臣の暗躍でウェルゴス帝国の傀儡だったが、『消失王女』フランティスカの活躍で政権を奪取。その後は反帝国連合に名を連ねる。
老賢者【人物】
在野の賢人。
誰に望まれるわけでもなく、誰に期待されるわけでもなく、ただ自分が知りたいからという理由で蝉の研究をしている。
その生き方に意味はない。あるのは意思だけ。
そう語る老賢者の言葉は、幼いファウナの人生観に亀裂を入れた。
〈わ行〉
渡り竜【生き物】
脅威度:★★★★★。
渡りの特性を持つ有翼爬虫類。現生竜。トビトカゲとも。
本来は南のほうに生息しているが、冬が来ると海を渡って大平原にやってくる。
竜の項目で寒さに強いと書いたが、それでも環境的には冬は食料不足になりがちなので、より安全な選択をしたのだろう。
体が小さい幼体時には慣性恒温が期待できないので、体温保持のため羽毛が生えているが、成体に近づくにつれて抜け落ちていく。
雨季の到来と共にやってくるので、大平原には竜巻、竜の巣など、彼らの生態にちなんだ言葉が生まれたという設定。
積極的に人間を襲うことはないが、それは到来時期が夏だから。夏は合戦の時期でもあるので戦死者が野晒しにされている。そこらに餌が転がっているのに、わざわざ狩りはしないのである。おまけに外温性動物ゆえに燃費がいいので、そこまで貪欲ではない。人間以外にも普通に熊やら猪やらを食べるので、程よく上位捕食者の削減に貢献している(現実でも、ニホンオオカミが絶滅したことによる天敵不在によってイノシシやシカが害獣扱いされるほどに増えたらしい)。
地上の生物種の中では最大の体躯を誇り、脅威度も最大。
討伐するには一個中隊(ざっと100人)が必要だとされる。
そんな巨体が宙を舞うには翼だけでは揚力が足りず、体内で生成した可燃性ガスの貯蔵によって浮力を得て、飛翔をサポートしている。
また、この可燃性ガスはドラゴンブレスにも利用される。基本的には雑魚散らしの牽制技だが、やっぱり竜は火を吹かなきゃね。
しかし、火を吹いたが最後、彼らは補助浮力を失ってしまい一定時間、飛ぶことができなくなる。その間に攻め立てるのが基本戦略。
爬虫類は寿命の限り成長するとされているので、ガスの浮力があってもそのうち自重を支えられなくなってしまう。飛べなくなった個体は老成竜と呼ばれ、最後に降り立った土地に永住し、いざ暴れれば災害レベルの脅威となる。
現代における最強種ではあるが、緩やかに滅びの道を歩いている。
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