第11話 貧乳剣士と烈火の騎士2

怪しい人についていってはいけません。


世界の形がどれだけ違うとしても、このルールだけは絶対不変である。

世の中というのは危険であふれている。

隣を歩いている人間が、殺人鬼か変態か、はたまた普通の人なのか、なんてことはいくら考えたところで実際のところはわからないのだ。

だから目に見える危険には近づかない、これが自分の身を守るために一番重要なのだ。


だが生きていれば目に見える危険だろうと、勇気をふり絞って立ち向かわなければいけない時もある。

そう例えば


王位継承のために15歳以下の少年が大好きな変態貧乳剣士を自分の騎士として任命し一緒に旅をしなければいけない時、などがこれに当たる。


いつ性欲が爆発して襲い掛かってくるかわからないモンスターと行動を共にするというのは、とてつもないリスクをはらんでいる。

しかし自分の夢、ひいては祖国の民のためとあれば、多少危険であってもそれを乗り越えなければいけない。

危険を回避し続けることが成功への道だとは限らない、立ち向かわなければいけない困難を見極め、それに挑むことのできる人間が、後々大きな成功をつかむのだ。


そう、


ムラムラした変態女に押し倒されて、乳首を吸われそうになったとしても、それは夢のために容認すべきリスクなのだ。

しょうがない、これも夢のためだと思ってこのまま身を任せよう・・・



「こんなリスク容認できるかああああああああああああああああああああああ!!」


とある森の中、少年であり王子である『ショタ』は今まさに貞操の危機を迎えていた。

一瞬自らの頭の中に諦めることをを推奨するモノローグが流れたが、すんでのところでなんとか踏みとどまることができた。

だが状況は最悪、地面に組み伏せられ体は完全に抑え込まれている。

なんとか腕で体を引きはがそうとするが、全く止まる気配がない。

このままだと・・・


「もう我慢できないのおおおおおおおおおおおおお!そのピンク色の乳首の味を確かめさせてえええええええええええ!」

変態モンスターに骨の髄までしゃぶられてしまう。

この変態女ならば長い旅をしていればいつか襲われる日が来るかもしれない、とショタは旅立つ際に内心覚悟を決めていたが、まさか旅立って5分でその危機に見舞われるとは思ってもいなかった。

「お願いよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!先っちょ!ほんの先っちょだけでもいいから!?ね?先っちょだけで我慢するから!」

「絶対嘘でしょ!?このテンションの変態が先っちょで我慢するはずないよ!」

襲いかかる変態こと『ドク』は、人間とは思えないスピードで舌なめずりをしながら、徐々に衣服がはだけ露わになったショタの乳首へと迫っていく。

はた目から見てもわかるほどやせ細っている彼女の体のどこにこんな力が秘められているのだろうか。

これが人の執念、業が生み出す力なのかもしれない。

極度の興奮状態にあるのか、ねっとりとしたよだれがショタの体へと落ちていくのも気にしない。

その様はまさに獲物に襲いかかる野獣だ。


「ド、ドク!?け、契約したよね!?僕の剣となって僕のために戦うって!それなのにこんなことしていいの!?」

「ハァ・・・ハァ・・・もうだめ・・・止まれないの!だってしょうがないじゃない!目の前にこんな・・・こんなおいしそうな美少年がいるのよ!こんなの我慢できるわけないじゃない・・・いやむしろショタ君が美少年すぎるのが悪いのよ!?だから・・・おとなしく舐めさせてえええええええええええ!」

「話を聞く気がない!?」


もはやドクを言葉で説得するのは無理だろう。

かと言って力で押し返せるかと聞かれれば、それも無理である。

所詮は王室育ちの15歳の少年、襲いかかっているのが肋骨が浮き出るほど痩せている女性といえど、欲望によって限界を超えた人間の力には抗えない。

そしてここは人気のない山奥、眼前に迫る変態、導き出される結論は一つ


凌辱


この二文字がショタの脳内をよぎった。

だがショタはイメージしてしまった恐ろしい光景を振り払い、決してあきらめなかった。

(ダメだ!ダメだ!ダメだ!一国の王子が山中で変態に襲われて凌辱されたなんてあってはならない!)

そう彼が背負っているのは一人の人間としての尊厳だけではない、一国を背負う王族としての責任感がショタを何とかギリギリのところで奮い立たせている。

しかし、無情にも現実(変態)は徐々に迫りくる。

無力な彼にできることはたった一つしかない。


(助かるかどうかは完全に賭けだけど・・・もうこれしか手はない!)


ショタは深く息を吸い込み、


「誰かああああああああああああああああ!助けてえええええええええええええええええええええええ!」


思いっきり叫んだ。


生き残るために発せられた渾身の叫びは、森中にこだました。

返ってくるのは静寂のみであった。


「フヒヒヒヒ!かわいい声で鳴くじゃないのぉ!でもいくら叫んだところで無駄よ!こんな山奥に人なんているわけないじゃない!・・・おとなしくしていなさい・・・あなたはここでアタシにペロペロされる運命なのよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

三流の悪役が吐くようなセリフと共に全力で襲いかかる変態。

(流石そんな都合よくはいかないか・・・もう・・・ダメか・・・・!?)

ショタも諦めてかけた


その時


シュン!!


恐ろしいスピードで「何か」がドクに向かって飛んできた。


「ッ!!」


すんでのところでドクは体をひねり、その飛んできた「何か」をかわした。

先ほどまでの蕩けた表情が一変し、一瞬で真剣な顔に変わった。

「何か」はドクにかわされた後も勢いは衰えず、そのまま背後にあった木をなぎ倒し、ドクがいた場所から10メートルほど離れるとその動きをピタッと止めた。

「あれは・・・槍・・・?」

ドクは怪訝そうに言う。

それもそのはず、槍が空中に浮いているだけでも不自然なのだがさらにその上


燃えているのだ。


赤々と灼々とまるで太陽のごとく、その槍は燃え盛っていた。

(この力・・・相当の使い手がいるみたいね・・・さっきの奴らとはケタ違い・・・)

臨戦態勢をとり次なる襲撃に備えるドク、

一方ショタはその槍を見た瞬間、


「よかったぁ・・・間に合ってくれたぁ・・・」


安堵の気持ちから涙を流した。


「え?ショタ君?それってどういう・・・」

ドクが疑問を発したその瞬間、


「王子から離れろ!この暴漢め!」

槍の飛んできた方向からすさまじい怒気のこもった声が聞こえてきた。

「誰!?」

ドクは腰の剣に手をかける。

声のする方を見ると一人の男が立っていた。


「我が名はウィルゲルス騎士団レッカ・ロウ・リコンデルト!貴様のような悪を焼き払う烈火の騎士だ!」

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