塗り潰される破滅の歴史

02-01 武具創造【怠惰】



 あれから数日が経過した。

 闘技大会が月末に近かったこともあり、すでにAFOを始めてから一月が経過していることになっているな。


「連続ログインボーナス、あったらよかったのにな……」


 毎日欠かさずログインし、リョクたちと共にスキルや魔法の修業や解析を続けていた。

 その結果……今のままでは、何かが足りないことに気づく。


「まあ、当然ながらモブだしな。才能の限界なんてすぐに辿り着いちゃうか。……と、いうわけで称号チェックをしてみよう!」


 話に一貫性がない? ああ、だってどうでもいいから切り捨てましたので。


 初めから分かってたことだし、無いなら別の場所から取りよせればいい。

 そのために月を改めた今日、作戦を実行するのだから。


「まあ、それはともかく、面倒臭いからどんどんやるぞ……まず、新規獲得称号リストカモンッ──!!」


---------------------------------------------------------

戦闘系

『魔法書目録(封印魔法Lv1)』:レベルが上昇することによって、封印できるものが増える

『禁書目録(禁書魔法Lv1)』:とても長い詠唱が必要な代わりに強力な威力を持つ。魔法はレベルに対応したものを、禁書から閲覧することによって登録される

『武器保管庫(武器換装Lv1)』:登録した武器に即換装できる。レベルが上昇することで登録できる武器が増える

『指導者(指導Lv1)』:指導をする際にさまざまな補正が入る。レベルが上昇することで補正が増える


特殊系

魔中鬼の王デミホブゴブリンキング』:???

天地創造士ユニバース・クリエイター』:???

『第一回闘技大会優勝』:???

---------------------------------------------------------


「……またいろいろと増えてるな。便利なのが少し、あとはまた変なやつばっかりだ」


 まずは、魔法系──どちらも恐ろしい。


 確率は低いが、相手が能力を使えなくなる封印魔法。

 下準備が大変だが、思考詠唱や無詠唱のおかげで詠唱のリスクがほぼない禁書魔法。


 どちらも特殊な条件で習得できる魔法なだけあり、消費MPが多い代わりに凶悪な効果が説明文に記されている。


「……しかし禁書ってどこにあるんだ? シスターに会えば教えてくれるか?」



 続いて(武器換装)、【武芸百般】が使える俺には非常に便利なスキルだ。

 登録できる数はレベル依存なので、早めに上げておく必要がありそうだ。


 お次は(指導)。

 たぶん、俺がゴブリンたちのレベリングをしてる時に出たんだろうな……。

 そこまで扱いたわけじゃないんだが、特殊系統の称号である『魔中鬼の王』がある時点で、ある程度育てたことが分かるか。



 あとは……まあ、いいか。

 優勝したら貰えたヤツと、国を整えていたら手に入れたヤツだ。

 おそらく優勝の方は【闘?】となっていたヤツ、同じ『?』だしこれも職業関連なんだと思う。




「さて次は唐突だが、聖・魔武具創造いってみよー。いや、切り替えは早い方がいいし」


 今までこれをやらなかったことには、いくつかの理由がある──


 ・膨大な魔力:まだ足りないが、スキルの効果でどうにかなった。

 ・明確なイメージ:『ぼくのかんがえたさいきょう』の用意が必要。


 今回、一つだけ創りたい物が決まった。

 なので今、それを実行することになる。


 ちなみに消費MPは万単位、ポーションで何度か魔力をドーピングしないと駄目だ。

 それも飲みすぎで中毒を起こし、数日実行に間が空いてしまうのはご愛嬌。




「さぁ、さっそく始めよう」


 とはいったものの、細かいことを気にせずとも構わないだろう。


「今回は“魔武具創造”をやってみるでござる。どのスキルのかはお楽しみに」


 自分のイメージを強く持ち、まずはイメージ……うーん……えーと……よし、できた。


「特にカッコイイ詠唱は浮かばないし、そのまま発動させようか──“魔武具創造クリエイト・イービルアーム”!」


 詠唱でもないただの一言、それを漏らして発動させた魔武具を生みだす能力。


 それを読み上げた瞬間、体の中に溜め込まれた膨大な量の魔力がごっそりと失われる感覚に襲われる。

 一気に虚脱感を覚え、眩暈や吐き気が押し寄せてきた。


「うわー、演出が派手だー」


 それでも発動には成功したようだ。

 目の前で激しいスパークが迸り、空間の裂け目からナニカが現れようとしている。


 ただの雷光ではなく、昏い闇色のスパークな辺りが良い演出だと思う。


「さぁ、生まれよ! 我が魔武具!」


 そんな無駄に盛り上がったテンションの果て、そこに現れたのは──


---------------------------------------------------------

堕落の寝具 製作者:メルス


魔武具:【怠惰】 自己進化型

ランク:X 耐久値:∞


今代の【怠惰】所持者が創りだした寝具

一度入ったものは、二度と出れなくなる絶妙な温さに誘われる

また、この寝具は意思を宿しており、攻撃や主以外の者を拒絶する


装備スキル

(自我ノ芽)(結界魔法)(快適調整)(睡眠成長)

(生命力自然回復・極)(魔力自然回復・極)

(精神力自然回復・極)(?)(?)(?)(?)……

---------------------------------------------------------


 シングルサイズの布団だった。


「そう、欲しかったのは布団でござる!」


 いろいろとツッコミたいだろうが、ここは一先ず落ち着いてもらいたい。

 先に行っておくがこれは失敗じゃないぞ、本当に布団が欲しかったんだ。


 普通ならしっかりとした武器とかが欲しいと思うが……俺は違う。

 なんせ、15個(?)もあるんだしな!

【怠惰】をイメージした時、最初に頭の中に浮かんだのが布団だったんだ。


「そう、この世界で最高級の布団とか言っても、地球の物は再現できない……ならば、自分で用意した方がいいだろう!」


 決して揺らぐことのない安住の地……それが今、俺に足りなかった物だ。


 そこから派生を重ねた結果──


 ・揺らがないための(結界魔法)

 ・安住の地になるための(快適調整)(○○力自然回復・極)


 それに、まだまだ残るスキルスロットと謎のスキル(自我ノ芽)。


 これは……いったい何なんだろう?

 まあ、名前と俺の性格からしてある程度は分かるが、鑑定がまったく効かないしな。



 閑話休題そのうちわかるだろう



「……とりあえず入ってみるか」


 俺はそう考えて、布団の中に入る。


「ふぉっ! 何、この完璧な肌触りと中の温度! これだよこれ、眠い時に布団に入った時のこの感覚! これならすぐに……寝、れそう……だ、ぁああ危ない!」


 マジで寝るところだった。

 たぶん、装置の方が俺の脳波を読み取ってログアウトさせるとは思うが、段階を踏めば寝ることもできる。


「それを設定してからだな、とりあえず今は封印しておこう」


 うん、これは人を堕落させてしまう。

 スキルの実践検証は……後日するか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る