EP4 日野青葉は自分が女子だと思う
青葉は連絡をしようと思う
「おっはよー!」
朝、学校にたどり着いたあたしに挨拶してきたのは、珍しく夏樹ではない人物だった。
「……おはよう」
「昨日は楽しかったね。前衛の楽しそうだなって思ったけど、でも魔法の火力の大切さも思い知らされたよ」
「そう……なんであたしに言いに来たの?」
「一緒にやったじゃん!」
「いや、夏樹とかでもいいと思うけど」
「私はまだ鷲宮くんとは青葉ちゃんがいないと話せない仲だよ。私には青葉ちゃんが必要なの」
なんか小さく泣いてるふりしてるけど、いつも別の男子に話しかけるノリでいけば夏樹とも話せると思う。だけど、わざわざ茶番入れながらもこう言ってくるってことは話したいとかなのかな。
「またお昼に誘えとかそういう事?」
「それもだけど、それ以上だね!」
光莉は泣いてるのが演技だったのを隠す素振りもなくケロリと元のテンションに戻った。
「それ以上って?」
「前に言ったじゃん! 今度どっか遊びに行こうって」
そういえばそんなことを話していた記憶もなくもない。
「あたしとってことでいいの?」
「鷲宮くん誘えるなら誘おうよ! 春の中間テスト的なのも終わったし梅雨がくるまえにお出かけしたい!」
「まあ言いたいことはわかるけど」
梅雨の前に出かけるってところだけ。ついでに金田は候補から外れるのか、それとも勘違い継続中の結果の気遣いなのか。
「だから、夏樹くんをお昼に誘うよ」
「わ、わかった」
最終的に勢いに乗せられたまま朝の時間が過ぎていく。ちなみに夏樹が来た時に「昼暇?」ってあたしが聞いたら「どこ?」って返ってきて、そのやり取りを見てた光莉に後で「以心伝心だね!」って言われたのは別の話になる。
そんな午前中の授業があっという間に終わりって昼になった。
今日は光莉が明るいところで食べたい気分ということで緑色に染まっている桜の木の下で食べる。
「なんか不思議な感覚だ……」
「あたしも」
「え? なんでなんで?」
わざわざ夏に桜の木の下を選ぶ感性の人物に会ったことがないからとか言っても光莉はピンとこないんだろうな。
「まあ……いいよ。別に嫌とかじゃないしな」
「うん。光莉は気にしなくていい。それより、話があるんでしょ」
「えっ? あ、そうそう!」
光莉は食べてたパンを飲み込んで本題に入る。急がせたのはちょっと悪かったかな。
「鷲宮くん、日曜暇?」
「今度のか?」
「うん。まあ今度じゃなくてもいいけどさ」
「まあ暇だけど」
「遊ぼう!」
ストレートでわかりやすいけど内容が全く伝わってない光莉のそれに夏樹も反応に困っているのが表情でわかる。
金田相手だったら「どこのダンジョンだ?」とか「いやもっと詳しく説明しろ!」って反射的に突っ込み返すんだろうけど、光莉にはそれができないらしい。
「どこで何するの?」
「うーん。やりたいことある?」
「あたしは別になんでもいいけど……」
「あ、そういう感じか。まあ俺もやりたいことはないな」
出不精というわけじゃないけど夏樹は根っこはゲーマーだ。つまり自分からでかけたがることがゲームセンターでイベントとかじゃないとほとんどない。遊園地とか行けば普通に楽しむんだけど。
とはいえあたしも隠してるだけで似たような感じだからな。あえて言うならライブとかでかけるから夏樹よりは外出る用事が多いくらい。でも、イベント事が必須ということになる。
「えー。2人のこと知りたいんだけどな。じゃあ今回はひとまず私のことを知ってもらうってことで、ショッピングいこう!」
「了解した……一応聞くけど日曜部活ないのか?」
「今週はおやすみなの」
「なら安心だな」
夏樹は意外とこういうところを気にする。ズル休みがダメと思っているわけじゃなくて、自分の方が合わせれば回避できるなら自分が合わせたいと思うやつだから。
あたしも良くそれでいろいろと合わせてくれた記憶がある。
「まああたしもそれでいいよ」
「おっけー! じゃあ、集合場所とかは後で連絡するね」
「俺の連絡先教えてたか?」
「青葉ちゃんに言えば伝わるでしょ?」
「まあたしかにそうだな」
「スマホ教室に置いてきちゃったから、お出かけの時に教えるよ。なんかごめんね」
「いや気にしないでくれ」
「さらっとあたしの了承なしにあたしら連絡役になってない? 別にいいけど」
「任せたよ!」
光莉はサムズアップとウインクの合わせ技であたしにそう言ってくる。ただ、そのウインクには「これで連絡する理由できたね!」みたいな意図を感じずにはいられなかった。
そんなことしなくたって別に連絡はたまにとってるんだけど……それを光莉に教えて上げる理由もないか。それに最近はゲームで会ってるからか個人的な連絡はとってないしね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます