ヒカリ式チュートリアル
夕飯とお風呂を済ませてから改めてスマホを確認する。
『おけおけ! じゃあ2時間後ぐらいからで。ゲームはじめたらメッセか電話頂戴!』
『了解』
『ちなみに私の夕飯はお姉ちゃん特性のハンバーグだっ!』
『そう』
いくらなんでも反応適当すぎたかな。
あたしは改めてヘッドギアをつけてベッドの上に寝転がる。そしてゲーム世界に入ってからすぐにボイスチャット――つまりは通話を光莉もといアオにかけた。
1コール目が終わる前にでられて正直驚いた。
『あ、きたね』
「うん」
ゲーム内だからボイチャでもすでにアオになりきっている。
『正直、いまピンチ』
「えっ? どこにいるの?」
『あの最初のでっかい街の西の草原だけど』
リヴァイアスの西の草原なら、アオのレベルと装備ならピンチになるようなことは少ないと思うけど。もしかしてレアモンスターとかと遭遇したのか。
あたしはそう思ったところで、1つの勘違いに気づく。
よく考えるとゲーム内の常識を前提にあたしは考えていたけど、アオはまだそういうことを知らないはず。つまりソロでフィールドに出ていって囲まれたりしている可能性が高い。
「ちょ、ちょっとまってて! 今向かうから!」
『うん。頑張る』
ボイスチャットを繋ぎながら走り出した。
幸いにもあたしがいたのはリヴァイアスの中心に近い場所だった。草原なら数分でたどり着くことができるはず。問題は草原含めてフィールド自体が広いため、特定の一人を探すほうで時間がかかるかもしれないということ。
人混みをかき分けながら西門を駆け抜けて草原へとあたしは到達した。
「門でてからどっちいったの!?」
『確か少し道沿いに進んでから右、うわっ!?』
「大丈夫?」
あたしは道沿いに武器を構えて小走りしながら会話を続ける。このゲームは一部のボスを除けばボイスチャットなどをしたままプレイが可能だ。たまに別のゲームをやってる友人と通話してる人を見るけど集中力がよく保てると思う。
少し道沿いに走りながら右側を眺めていると遠目でモンスターが集まっている場所を見つけた。おそらくこのフィールドに一番でてきやすい角のついたウサギのモンスター【ホーンラビット】だと思う。
でも、初心者剣士だと数に囲まれるとたしかに苦戦するかもしれない。何より防具的に耐えきれない気がする。
ひとまずあたしは武器を改めて構えて攻撃をいつでもできる状態にしながら、モンスターが集まっているところでを走って向かう。徐々に近づいていき身長差もあって囲まれていた人物を視認してボイスチャットを切った。
「よいしょー!!」
あたしは勢いよくそのままモンスターの一体にメイスを振り下ろした。マジックナイトのままでメイスも普段から使っているものを使ったせいで一撃でHPがなくなって倒れる。
「あ、きた」
「きたじゃないよ!」
「ごめん」
「まあ、謝らないでもいいけど。ひとまず死なないようにして」
「了解」
その後、ホーンラビットは10数匹いたけれど、ひとまずあたしが2分程度で一層して今回は無事助けることができた。
あたしはアオを引き連れて西門近くの休憩所まで移動する。
このゲーム内には料理などもあって喫茶店を開いているクランなどが、開いている時は外からも入れるようにしている喫茶店などもあるけど、アオにそれを説明するのが時間かかりそうなのが今日はここにした。
「ありがとう」
「大丈夫大丈夫。私も通った道だから」
現実だと口調が逆転するのがわかっていると気を抜いて普段の青葉がでそうになる。ただ、マイルームじゃない限りはヒカリでいなければと思う。
「それで、何を教えればいいのかな?」
「……基本?」
ものすごく大雑把であり大切なんだけど、どこから説明すればいいかわからない答えが返ってきた。
「うーんと、じゃあ最低限覚えておいたほうがいいこと」
「うん」
「まずこのゲームはパーティープレイが基本ぐらいに考えて、可能な限り誰かと一緒にプレイすること。そういうゲームだからあんまりマナーが悪い人は多くないから。それと、クラスによってできることが大きく変わるし限られるから使ってるクラスができることは最低限調べておくことかな」
「わかった。剣士は……前衛?」
「だね。他にやりたいのがあったら変えてもいいけど。何かある?」
「うーん」
「雰囲気だけでも教えてくれれば、それにあったクラス紹介するけど」
「ロマンあふれる大火力」
なかなか難しいことを言ってくる。
「人とか育て方によるけどそうだね。魔法使い系統で特に火属性か闇属性あたり。もしくは戦士とかで重量系武器をもってプレイするのが火力が出やすいと思うよ」
「剣士は?」
「大剣使えば結構な火力は出ると思うけど、戦士とかで両手でしか持てないハンマーを持ったりするよりは劣るかな。代わりにコンボとかが決めやすかったりするから」
「そういうこと……魔法使いやってみたい」
初心者がチュートリアルクリア後にもらえる防具は全クラスで装備できるものだけど武器は選んだクラスのなんだよね。せっかくなら魔法使いでやっておけばよかったかもしれないけど、まあいっか。
「じゃあ、とりあえずメニューのクラスってところを開いて――」
その後、しばらくクラス変更についてなどをレクチャーしてからあたしが持て余していたダンジョンで拾った魔法使いの装備をプレゼントして準備をしていった。
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