第64話
ジョンの大きなデスクにある電話が鳴った。
ジョンのオフィスはマカティ(Makati)シティのビジネス街にあり、その中でも人目を引く高層ビルの一画に設けられている。実はこのビル全体が彼の祖父が創業した会社のものである。
会社は、彼の祖父が小さなアイスクリーム屋から全国トップシェアのファーストフードチェーンに育て上げたものであり、今は彼の父が社長、彼はマーケティング室長を務めている。電話を取ると、秘書がパレス、彼の家のことを皆そう呼ぶのだが、からの電話だと取り次ぐ。
「坊っちゃま、お連れになった女性のお客さまを何とかしてください!」
執事長からの電話だった。
「どうかしたのか?」
「メイドを集めて、あちこちを掃除して歩かれているのですよ。プールにでも入っておくつろぎ下さいと、何度申し上げてもお聞きにならず、バルコニーとか、トイレとか…。いくら坊っちゃまの大切なお客様だとしても、旦那様と奥様がご旅行でご不在の時に、こうあちこち触られては、私の立場がございません!」
ジョンは思わず吹き出した。
「わかった。帰ったらよく言っておくよ」
ミス・マキらしいな。ジョンは受話器を置きながらつぶやく。
ふと思い出し、デスクから写真を一枚取り出した。朝、麻貴から渡されたのだ。
『この写真を撮った場所を調べられるかしら。やってくれるなら、家の仕事を手伝うから…』
ジョンは麻貴の言葉を思い返しながら、ここに写っている男と麻貴の関係を思いあぐねた。
仕方ない。彼はインターフォンを押して、部下を呼ぶように命じた。
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