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「それってしっかりと魔法自体を制御できているのか?」


 竜二はそれだけの五人の神を持つミラにそれだけの負担がかかることが分かっていた。


「一応ね。支配されたとしても意識を保つことができるからそこまでは心配ないけど……」


「ふん、それでも自由が利かない支配のされ方はダメだろうな」


「それなら未だに竜の魔法を完璧に覚えきれてないあなたは、私の事が言えるの? まだ、一、二個しか覚えていないんでしょ。それにその魔法も実戦になれば、使えるものになるかどうかも分からないんだし……」


 そう言って、ミラは魔導書まどうしょを閉じた。


 その後は二人でゆっくりと街を探索しながら、レストランで食事をしたり、近くの公園で昼寝などをしながら時間が過ぎるのを待った。


 竜二の師であるサーシャ・ノグワールは、今日のこの時間まで一切姿を現さない。


 昨日の修行終了後から姿を暗まし、明日の朝には顔を出すと言っていた。


 考えてみれば、炎の魔女である彼女が、気まぐれに竜二の面倒を見るのも少し変である。それにこのたった一日の休息日にどこで何をしているのだろうか。




 そして、一日の休息が夕時に差し掛かった頃————


 竜二とミラは、オレンジ色に染まったマードックの街の栄えている道を歩いていた。人々が行き来し、夕食の買い出しをする街の人が大勢いる。


「それにしてもこの地での修行は効果があるみたいね」


 手を口元に近づけて、フフフと微笑みながらミラは言った。


「おそらくサーシャさんは、例の火の墓にいるんじゃないかしら? だって、今まで言わずにいたけど、あの地は昔、彼女の師匠の墓があると聞いたことがあるわ。そして、この日はもしかすると……ね」


「なるほどな、だからなのか……」


 その言葉を聞いて、なんとなく察した竜二を見て、ミラが微妙な顔つきになった。


 そして、言いたげそうにそわそわしている彼女は、一呼吸おいて欠伸をする。


「お前、話をしているのにあまり緊張感解かないんだな」


「あるわよ。だけど、夕方になると眠気が走るのよ。私、こう見えても早寝の方だから……」


 そう言われると、竜二は「あ、そう」としか返す言葉が無かった。大体、十一時か、十二時といった所だろうと頭の中で想像する。


「いつも十時半ごろには寝ているわ」


「は、早いな……。話は戻るんだが、サーシャさんの師ってどういう人だったのか知っているか?」


 話は戻り、サーシャの師がどんな人だったのか、そして、炎の魔女は人に魔法を教えず、人嫌いなのか。色々と不点に残ることはあるが、まずはその事からになるだろう。


「炎の魔導士である師匠から学んだんだろ? あの魔女に教えるくらいだ。それだけすごかった魔導士に違いないはずだ」


「そうね。だけどそれは不正解よ。彼女の師は、そこまですごいとも言えない普通の魔導士だったと聞くわ」


「……そうなのか。俺はてっきりすごい魔導士だと思っていたんだが……」


 そう言われるとミラが表情がやわらかくなり、話のテンポが良くなる。

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