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「洗いざらい吐いてもらうぞ。じゃないと、俺もこれから行動しにくくなるからな。さあ、話してもらおうか、兄ちゃん」
『分かってる、分かってる。ちゃんと話すつもりでいるさ。これはお前たちを日本においてそっちの世界に住んでいた時の話だ。俺は若い頃、ミラがいるギルドに所属していたことがあるんだよ』
「兄ちゃんがギルドにねぇ……。そういうのは嫌いじゃなかったのか? 世間性とか、堅苦しいの……」
『まあ、そうなんだが……。俺の所属していたギルドは皆が毎日楽しそうに喧嘩して、酒飲んで、寝る。毎日が祭りみたいなところだったよ』
竜二の言葉を聞いて、電話越しで紫苑はニヤリと微笑した。
「要するに兄ちゃんは騒がしくて馬鹿がいるギルドがお気に入りだったというわけね」
『そう言われると言い返せないところがたくさんあるんだが、そうだな。そして、ミラは俺がいた時はまだ小さな子供、お前と一緒ぐらいだったな。やんちゃで、他の子どもたちといつも喧嘩や遊んでいた記憶しかない』
紫苑は愉快そうに、竜二にも想像できるくらい笑っている。
『それにしても俺が抜けてからのギルドの様子を時々耳にしていたが、あのミラがあそこまで強くなっていたとは思わなかったな。たぶん、今、俺と勝負したら確実に俺が負けるレベルまでは強くなっているはずだ』
「……あいつ、そんなに強いのか?」
『ああ。ミラ・アルペジオは昔から天才少女だ。あいつの魔法はこの世で恐ろしいかもしれない。だが、それが時に、危ない事になる。あいつはたぶん、炎帝竜を本気で倒そうとしているんだ。……だが、それではあいつが逆に殺されてしまう』
「じゃあ、なんであいつにそれをやめさせないんだ?」
『マスターに止められているんだよ。だから、俺も……手出しできないんだ。まあ、マスターも何か考えがあるんだろうけどな。本当は止めないといけないのが普通なんだが……お前がいれば何とかなるだろう』
「なんで、そこで俺任せになるんだよ。魔法なんて使ったことねぇーから」
なんで自分がそれに巻き込まれなければならないのか。竜二は深々と溜息をついた。
それにしても、本当にミラはすごい魔導士なんだと改めて思った。
『と、言うわけでどんなことがあってもミラと炎帝竜の戦いだけはお前に食い止めてほしいんだよ。お前が戦えばもしかすると、魔導士上面白い事になるのかもしれない。いや、それだけではないだろうな』
「兄ちゃん、俺をからかっているのか?」
『いやいや、そうなればいいなって思っただけだ』
自分の兄は一体何を考えているのか、竜二は考え込んだ。
紫苑の思惑通りに行くのかは別として、そうしなければならないのだろう。
さてどうしたらいいのやら……。悪魔のたった一言で世界が変わるとするならば、それを予言する者はいないだろう。
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