第23話 頭髪以外のものでしたら、なんでも差し上げます
昇降装置が中々上がってこないため、螺旋階段を使って降りることにした。
しかし、50階から1階まですべて階段で降りるのは少々無謀だったようだ。いくら下れども1階に辿り着く気配がない。
とうとう彼らは断念し、途中階の昇降装置を使うことにした。
「ここ何階なのかな?30階くらいかな?」
「どうでもいいだろ。エレベーターならあっという間だ」
ようやく昇降装置の扉が開いた。三人は我先にと中へ入っていく。
ところが中には先客が二人いた。一人は頭に布を被った中年の男、そしてもう一人は――――
「テディ!」
「皆さん…!なんで勝手に部屋から出てるんですか!」
「“なんで”じゃねーよ!てめぇらよくもハメやがったな!」
「ひっ!」
シメオンの怒声に驚き、テディが中年男性の背中へと身を隠す。
「す…すみません…」
男性は白い布を取って坊主頭をさらけ出し、陸人達に向かって深々と頭を下げた。
「私はアウロスの里長、この子の父親でございます。この度は大変ご迷惑をおかけいたしまして…」
「事情を説明してもらおうか」
「はい…。あの魔物が我々の里を乗っ取ったのは今からおよそ数か月前のことでした。身よりのない可哀想な少女だと思い、油断していたのです。やがて彼女は塔を乗っ取り、“お前達の髪を捧げろ。でなければ里の者を皆殺しにする”と我々を脅してきました。多くの髪を食べれば美しい髪になれると信じているのです。しかし我々の髪をいくら食べても、彼女は満足しませんでした。もっと多くの髪をよこせというのです。ですが我々にはもう捧げる髪がない…」
「それでテディは髪の生えてる人を探しに、里の外へ出てきたんだね」
「はい…。シメオンさんのモコモコの毛を見て、これだと思いました。上手く行けば毛玉を喉に詰まらせて死んでくれるんじゃないかなぁって」
「君、何気に怖いこと言うね…。まぁ、無理もないけど」
「どうにかあの魔物を追っ払う方法ないですかね?」
「そう言われても…」
「なんとかお願いしますよ~。お礼もちゃんと払いますから。ねぇ、父上」
「はい。頭髪以外のものでしたら、なんでも差し上げます」
「それなら俺に任せろ」
今まで黙っていたオーガストが、急に口を開いた。
「つまりあの魔物のお嬢さんは、ただ綺麗な髪になりたいだけなんだろう?年頃の乙女の純粋な願いを叶えてやればいいだけではないか」
「どうやって叶えるんだよ」
「ふふふ…。まぁ見ていろ」
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