第236話 2着では納得がいかないらしい。
半裸のお嬢様方に囲まれた状況で迎えた、東3局1本場。
その隣に座る
その隣に座るアイシュさんは、両手で胸を隠したまま、やや右を向いて僕の視線を避けている。少し
この局も、僕は、まあまあの
血液が下半身に集まってしまっていても、今のところ悪影響はない。
途中でカンナさんのポンによって、2回ほどツモを飛ばされてしまったにもかかわらず、6巡目にピンフのみの手をテンパイした。
カンナさんからあがってしまう訳にはいかないので、ここは当然ダマである。
7巡目にカンナさんが僕の当たり牌を切り、東2局に続いて2回目の見逃し。
うっかり「ロン」と言ってしまったら、僕がカンナさんに失望されるだけでなく、アイシュさんとカンナさんの仲まで険悪になってしまう恐れがある。
ここは何としても、カンナさんに頑張ってもらいたいところだ。
「――ロン!」
9巡目にツモ切った【1索】が、
「2900の1本場で、3200だ」
「はい」
おそらく升田先輩も、カンナさんからは当たれないし、下高先輩からは当たり牌が出てこないので、自分でツモるか、僕からあがるかしかないのだろう。
升田先輩は、ほっとしたような表情で、
これで升田先輩がプラスになり、2強2弱の状態になった。
カンナさんもそうだが、ラスボスであるはずの下高先輩が、まだ1度もあがっていないのは不思議である。
僕は升田先輩に点棒を渡し、この時に備えて着込んでいたセーターを脱ぐ。
このセーターは、
「リーネさんは、メガネかリボンを外してください」
「それなら、先にメガネにするわ。ミチノリさんは、この時の為にメガネをリーネに掛けてくれたのね?」
「はい。その通りです」
リーネさんは、僕が先ほど渡したファッションメガネを外す。
このメガネは、リーネさんのヒットポイントを1ポイント増やす為のアイテムなので、実質的にはノーダメージである。
「お姉さまっ、覚悟! ――リーチ!」
続く東3局2本場。
誰も鳴かずに終盤まで進んだ局面で、ついにカンナさんがリーチを掛けた。
普段は鳴きを多用して、トイトイやホンイツを狙ってくることが多いカンナさんのリーチは、かなり不気味で、どんな牌で待っているのかは全く読めない。
「カンナちゃん、私は出たところから、あがらせてもらうよ。――リーチ!」
同順、升田先輩が、カンナさんの現物である【2索】を、そのまま横に向けた。
ツモ切りの追っかけリーチである。
「えー! チー先輩もテンパってたの?」
カンナさんは、升田先輩にツモもられても、振り込んでも「全裸確定」だ。
しかし、その条件は下高先輩も同じ。
2人リーチの、この局で、ほぼ勝負が決まると言っていいだろう。
「もうカンナしゃんに勝ち目はないのでしゅ! 潔く負けを認めるのでしゅ!」
「大丈夫だって! このまま流局するだけでも、お姉さまに勝てるんだから!」
カンナさんは、お姉さまがテンパイしていた場合の事は考えていないようだ。
この根拠のない自信は素敵だが、振り回されるアイシュさんは気の毒である。
下高先輩は、こんな絶体絶命の状況でも、左手で自分の胸を隠しながら、無言で牌をツモり、手の内からカンナさんが1巡前に切っている【東】を切る。
升田先輩は「ツモ切りリーチ」で、先ほどカンナさんが切った【東】には何の反応も示さなかったので、僕には安全な牌に見える。
ちなみに僕の手牌は、まだイーシャンテンなので、ベタオリ一択だ。
升田先輩のリーチを避けてカンナさんにわざと振り込むというのも難しいし、そんな事をしようとして、下高先輩に振り込んでしまったら目も当てられない。
この局は、安全なところから3人の勝負の行方を温かく見守る事にしよう。
「そう簡単には、ツモらせてもらえないかー。このまま流局かな?」
「カンナちゃんも、私も、なかなかツモれませんなー」
リーチを掛けた2人ともツモれず、お互いに振り込みもしない。
僕はベタオリして様子を見る事が許される状況だが、下高先輩は、このまま流局してしまった場合、ノーテンだと「全裸確定」である。
それなのに、僕の目からは下高先輩がベタオリしているようにしか見えない。
下高先輩は【東】を切った後、【1筒】を合わせ切りし、続いて【東】を切る。
そして、最後にもう1枚【東】を切った。つまり【東】のアンコ落としだ。
「もしかして流局? お姉さまはノーテン?」
ここで、下高先輩がノーテンだと全裸確定だが――
「はい。ですが、これで、2200、4200ですわね」
――ノーテンどころか、これが下高先輩の初アガリである。
「なんですと!」
「やられたーっ! 私、全然気づかなかった!」
なるほど。下高先輩はベタオリしていた訳ではなかったのか。
2人のリーチに気を取られていて、僕も全く気づいていなかった。
あの【1筒】をチーできていれば……、自分の手牌を見ると【2筒】と【3筒】が1枚ずつ存在していたが、後の祭りだ。
「ミチノリさん、これはどういう事なのかしら?」
「流しマンガンです。2から8までの数牌を1枚も切らずに、1と9と字牌だけを最後まで捨て続けた場合に成立する、特殊なアガリです」
流しマンガンはメジャーなオプションルールで、ネット麻雀でも採用されている場合が多い。「生娘寮ルール」でも正式なアガリ役であり、本場も加算されるし、供託されたリーチ棒も回収できる事になっていたはずだ。
「これは、見事にやられましたな」
升田先輩は下高先輩に4200点分の点棒を渡し、セーラー服を脱ぐ。
足利先輩も、驚いたような顔をしながら、一緒にセーラー服を脱いだ。
僕は、2200点分の点棒を渡した後、ワイシャツを脱ぐ。
「リーネは、リボンを外せばいいのね?」
「はい。お願いします」
「アイシュちゃん、私がスポブラを脱がせてあげるからバンザイして!」
「しょんなことをしたら、ダビデしぇん輩に見られてしまうのでしゅ!」
「じゃあ、先にパンツのほうがいい?」
「しょれは、もっとダメなのでしゅ!」
カンナさんは、アイシュさんのスポーツブラを強引に
「私は、もちろん、このまま続行よ! もう見られても恥ずかしくないし」
全裸続行――これは、全裸になっても降参しなければ、追加失点するまで続行できるというルールである。つまり、ただの「悪あがき」だ。 (第82話参照)
「カンナしゃんは、頭の中がテンパっているのでしゅ!」
「カンナちゃん、ブラにパッドは入れてなかったんだ? 成長したねー」
「でしょっ? もう、お姉さまと全く同じサイズなんですよ!」
全裸まで追い込まれても精神的に余裕があり、最後まで勝ちをあきらめない。
このカンナさんの姿勢は、僕も見習いたいところだ。
「やっぱり、オトナはすごい! まさに起死回生ですねー!」
「ツモが悪すぎるという事ですわね。でも、それを生かす方法もありますのよ」
鹿跳先輩は、床の上に脱ぎ捨てられている黄色いブラを拾って、下高先輩に着けてあげてから、自分のTシャツを着る。
アイシュさんの背後の床には、2人分のセーラー服やスカートなどが無造作に脱ぎ捨てられており、カンナさんの黄色いブラとパンツが目立っていた。
升田先輩から下高先輩にオヤが移り、東4局。
「――ロン!」
5巡目に、オヤの下高先輩が両手で手牌を倒す。
下高先輩のオヤは、すぐに蹴らないと危険であることは分かっているのだが、その前に僕が振り込んでしまった。
待ちは【北】で役はチートイツ。しかも、カンナさんの切った【北】を無表情で見送った直後である。こんなの僕には回避できない。
「2400ですわね」
「はい」
僕は下高先輩に点棒を渡した後、Tシャツより先に制服のズボンを脱ぐ。
上半身ハダカになるよりは、シャツとトランクスのほうが無難だろう。
「すみません、リーネさん」
「このくらい、平気よ」
リーネさんはセーラー服を脱ぎ、長袖のインナーシャツ姿になる。
鹿跳先輩は、パンツの上にショートパンツを穿く。
下高先輩は、スカートより先に長袖のインナーシャツを着ている。
「お姉さまは、どうして私の【
「
「オトナは、ここからトップを狙う気なのですかー?」
「せっかくオヤが回って来たのですから、当然ですわね」
下高先輩は、脱衣勝負ではなく純粋に点数でトップを取るつもりでいるらしい。
「私は、お姉さまから相手にされていなかったって事⁉」
カンナさんは、お姉さまに見逃された事を、とても悔しがっているようだ。
続いて、東4局1本場。
「――ポン!」
2巡目に、升田先輩が切った【中】をカンナさんがポン。
「――ロン!」
そして、4巡目に僕が切った【8萬】をカンナさんがロン。
アガリを2回も見逃してあげた相手にロンされるのは複雑な気分だ。
「お姉さまのオヤは、やっぱり、すぐに蹴らないとダメね。
ノミ手だけど、1本場だから、1300点!」
「はい」
僕はカンナさんの差し出した右手に点棒を載せる。
下高先輩のオヤを蹴ってくれたのはありがたいのだが、連続失点は痛い。
僕はTシャツを脱いで上半身ハダカになり、残る衣類はトランクスのみ。
リーネさんはスカートを脱ぎ、見覚えのある花柄のパンツを見せてくれた。
「はい、アイシュちゃん、もう1度バンザイして!」
「自分で着れましゅ! カンナしゃんは、とっととパンツを穿くのでしゅ!」
カンナさんはトップレスの状態でパンツを穿く。
点棒は僕の方がずっと多いはずなのに、なぜか着ている服の枚数は同じである。
現在の途中経過(東4局まで)
甘井道程 with 真瀬垣里稲 +12300
下高音奈 with 鹿跳存美 +4000
升田知衣 with 足利芽吹 ▲4800
搦手環奈 with 安井愛守 ▲11500
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