第2話


「オキク!あんたの憧れの先輩はもうすぐ卒業よ」

「そう、先輩の部活が終わったらコクルって言っていたのに、いままで何もしないのはどういうわけ」


ナミも参考書を閉じて菊江に詰めよった。


「何もしてないわけじゃない…」

「じゃなにしたの、言って御覧なさい」


 ナミの追及に、菊江は自信のない小さな声で答えた。


「先輩に渡す手紙を書いている…」

「で、で、で、手紙渡したわけ?」


 テレサが身を乗り出してきた。


「毎朝持って学校くるんだけど、渡せなくて…」

「今日も持ってるの?」

「ええ、持ってるけど…」

「でもさ、今日も渡せてないってことは…。いつ書いた手紙持ってるの?」


 いつもながらナミの指摘はきつい。


「夕べ書いた…」

「えっ!夜に書いた手紙を毎朝持ってきて、渡せなくてまた夜に書きかえて…」

「あんた、そんなこと毎日繰り返しているの?」

「ええ、まあ…」

「ばっかじゃない!」


ナミとテレサの非難の合唱に、菊江は言い返す言葉が見つからない。


「ほら、手紙出しなさい!」


 テレサとナミが、菊江の手紙を奪った。


「そう、来るのよ!」


 ふたりの親友はもがく菊江の両腕を取って、校庭へと引きずっていった。そして昼休みも終わり、校庭から戻ろうとする泰佑の前に、容赦なく菊江を投げ出したのだ。

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