電子書籍で本を読んだことがないんです(笑)
朝目を覚ましたら、世界は劇的に変わっていた。それはまるで、物語のように。
二度寝してしまいたい気持ちを我慢して、布団から出る。重たい瞼をこすり、むくんだ足を引きずって、わずかな頭痛を引っ提げながら、やっとのことでリビング辿りつく。コーヒーを淹れたいな、と思いつつも億劫で、ついついXXXを起動してしまう。これをしてしまうと、少なくとも三〇分はその場を離れられなくなるのが毎朝のオチだった。
『かつてない革命的な新メディアとして、「紙」が注目を集めています。
紙はアナログ情報を保存し伝達できる物理的な媒体で、従来開発が進められてきたディジタルメディアの常識を根底から覆す大発明と言われています。特徴として、ピクセルでしか表現できなかった情報を、よりなめらかで詳細なアナログ形式で表現することができるほか、数値による表現を用いないことから互換性を制限することができ、万一情報が流出しても拡散しにくいという利点があります。また、ディジタルメディアを利用する機器の多くは、希少金属を原料とする部品やそれを組み合わせる高度な技術を要しましたが、紙の原料は植物由来で、大量生産も容易です。
開発者の――氏は、この画期的な発明について「未だ開発段階」として実用化にはまだ時間を要するであろうと話します。
「新メディアである紙は、物理的メディアであるがゆえに、人間が自らの手で情報を書き加えなければならないというデメリットがあります。人体の機能を拡張し、紙の上にも容易に情報を書き込めるような道具の開発を同時進行で進めているところです」
――氏によると、紙の活用に役立つ道具の原料として、炭素に注目しているとのことです。今後五年ほどで実用化に漕ぎつけることが目標と晴れやかな笑顔で話していました』
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