それはまるで、物語のように

大和麻也

いまはむかし

 朝目を覚ましたら、世界は劇的に変わっていた。それはまるで、物語のように。


 二度寝してしまいたい気持ちを我慢して、布団から出る。重たい瞼をこすり、むくんだ足を引きずって、わずかな頭痛を引っ提げながら、やっとのことでリビング辿りつく。コーヒーを淹れたいな、と思いつつも億劫で、ついついXXXを起動してしまう。これをしてしまうと、少なくとも三〇分はその場を離れられなくなるのが毎朝のオチだった。


『学問に関するニュースです。一六年前に発見され、謎多き遺跡として調査が続けられていた古代遺跡について、研究グループが新たな発見をしたと発表しました。

 グループによれば、遺跡から多数発掘されている、金属やプラスチック、ガラスなどで作られた古代の道具について、宗教的な意味を持つものと考えられるとのことです。この道具の使用方法について具体的には明らかになっていないものの、使用していた人々が「インターネット」と呼ばれる宗教的な概念を共有していたと、遺跡の碑文や古文書から推定しています。

 グループのリーダーは番組のインタビューに対して「インターネットは地球をひとつに覆い、かつすべての人類を相互に接続するという精神的紐帯であったとみられます。そんな壮大で非現実的な概念を、碑文は活き活きと描いていることが驚きです。いつ、どこにいても、誰とでも意思疎通をできると信じることで、孤独や退屈といったマイナスの感情を慰めていたとみられます。今後も古代人の思想の全貌を明らかにすべく、調査に全力を注ぎたいと思います」と答えました』

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