マジョリティに呑まれた

あすま

笑顔と平和

「私達『笑顔と平和の党』は、皆さまの平和を実現するために今日こんにちまで邁進まいしんして参りました。更なる平和を目指してこれからも日々邁進して参ります。私達に皆さまの清き一票を!」


外を走る選挙カーの声がリビングに響く。五月蝿うるさい偽善者の声を聞くのは今日だけで4回目だ。ただ、奴らのことを偽善者だと口外することは出来ない。奴らには奇妙な噂があるからだ。


「笑顔と平和の党に反する意見を述べた者は謎の死を遂げる」という内容だ。実際、奴らに反する意見TVで述べた政治評論家のA氏は、自家用車で帰宅している途中に事故で亡くなった。いや、事故ということにされた。事故の現場を見た者は誰も居ない。しかし、そのことを指摘する者は誰も居なかった。皆死ぬのが怖いのだ。


奴らが政権を握ってから、金持ちも貧乏人も居なくなった。路頭に迷う者はもう居ない。争い事も犯罪もない。決められた仕事を皆と同じようにこなせば、皆と同じ幸せが手に入れられる。


「奴らに反抗しない限りは、今の平和な暮らしは保証される。それなら、今のままでいい。」

それが多数派マジョリティの意見だった。

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