第9話 異世界に関する情報確認その1
~異世界に関する情報確認その1~
こちらの世界に来て、すでに半年がたった。しかしすでにこの半年で、この世界の大まかな仕組みは把握できてきた。
この世界の科学レベルは、元いた世界で言うところの中世から近世とほぼ同程度のようだ。
蒸気機関や電気を使った機械などは一切無く、移動は馬、明かりはろうそくだ。
さらに身分制度も存在していて、大まかに王族、貴族、市民、奴隷の4種類に分けられる。言うまでも無く、後に行くほどに、身分は低くなる。
そして、市民以上には市民権が与えられ、貴族、王族にはそれに加えて特権が与えられている。
問題だったのが、奴隷には人権が与えられてなかったことだ。
奴隷はたとえ殺されたとしても、殺人にはならないらしい。その持ち主にいくらかの賠償金を支払うだけで済むそうだ。
そして、持ち主が殺した場合はなんのお咎めもない。正直、最初のうちはいつ殺されないかとハラハラしていた。
しかし、何度か鞭で打たれただけで、命までは取られずに済んだ。(元いた世界と比べれば明らかに問題なのに、この程度で済んで良かったと思ってしまっている。こっちに来てから、とくに倫理面での感覚が麻痺している気がする。気をつける必要があるだろう)
なにより、会長に出会うことが出来たのは本当に幸運だったと言うほかない。もし出会うことが出来なかったら、最悪の手段として奴隷小屋から脱走するしかなかったからだ。
もちろん、逃げ出すのは可能だったが、その場合は追手が来るだろうし、最悪、野垂れ死にだってあり得た。
そんなわけで脱走をギリギリまで待っていたのだが、おかげで会長に会うことが出来た。結果オーライだ。
そして、この世界には魔法が存在していた。(まあ僕がそういう条件を出したから当然ではあるが)
魔法には3つの属性があった。“火・氷・雷”だ。ゲームとかでは普通、3種類の属性とかいったら“火・水・草”の三竦みが定番なので、正直これには驚いた。
しかし、魔法について調べていくうちに、この属性の選出が至極まっとうであることがわかってきた。
実は、この世界の物理法則が僕が元いた世界と同じであるかを調べていたときに気づいたのだが、どうやらこの世界では熱力学第二法則が局所的に破綻しているようなのだ。
もし仮に、この第二法則の破れが魔法の源であると考えると、“火・氷・雷”と言う属性の選出とつじつまが合う。
これについては、さらなる調査をした後に、改めて書き記そうと思う。
話を戻そう。
どうやら魔法が、一般生活でも実用にたるレベルに至ったのはごく最近のようで、僕の所属する商会でも作っている“魔法道具”なる物の発明により、ようやく誰でも手軽に魔法の恩恵を享受できるようになったそうだ。(それでも、火の魔法ならライター程度しか火をつけられないし、エネルギー補給のためには魔法使いが必須だ。まだまだ黎明期なのだろう)
そして、何より特筆すべきこの世界の仕組みと言えば、それは間違いなく“レベル”の存在だろう。
奴隷だった頃は、まだ僕のレベルが4程度だったらしく、レベルが5にならないと修得できない“ステータス確認”を行えなかったため、商会に入ってようやくレベルの存在に気がついた。
そして今まで暮らした感じでは、どうやらこの世界におけるレベルとは、いわば“人間の価値”を数値化した物らしい。
例えば、筋力がある者はない者に比べて優秀だし、頭がいい者は良くない者に比べて優秀だ。弓を百発百中で的に当てられる者はもちろん優秀だし、何か特別な道具を作ることが出来る者も優秀だ。
そういう、個人の持つ様々なステータスを総合して数値化したものがレベルというわけらしい。そのため『レベルが高い奴はケンカが強い』みたいな単純な戦闘力を表しているわけではないようだ。
実際、会長の秘書さんはレベルが18だったが、これは事務処理能力の高さ故の数値なので、別にあの可憐な秘書さんは、あの服の下に六つに分かれた腹筋があるとかではないだろう(頼むからそうであってくれ)。
さらに、レベルの決定要因には経験値なるものも存在し、これは何らかの作業をして、経験を積んだときにもらえるらしい。
成人男性の平均は8程度らしいが、そのうちの半分以上、およそ6相当のレベルは、日々の仕事や生活の中で得た経験値の分らしい。
そう考えると、僕の今現在のレベル4は、初期ステータスであることを考えると、高い部類に入るだろう。(これについては、正直不満だ。どうせならレベル1スタートとかの方が良かった)
しかし高いと言ってもあくまで、経験値無しの、初期ステータスとして比べたならだ。
平
均に比べてレベルが半分以下なのは事実なのだから、遅れを取り戻すためにも、これから経験値を積む必要がある。
さて、今現在わかっていることはこのくらいだ。かなりのことはわかってはいるが、それでもまだ足りない。さらなる情報を手に入れるため、よりいっそうの努力をしていくことにしよう。
記 グラシェ・フォート
以上
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