第3話 副部長は若槻詩音さん
「大野! まだ決まんねえの? 部活ぅ」
ソイツは変顔をしながら廊下でどついてきた。
「まだだ」
からかいながら同じクラスの長杉が来るとオレは腹んなかじゃあまり関わりたくないと思っている。
小学校時代も長杉とは一緒のクラスになったことがあったが、だいたい何かのネタにされたりいじられては悔しい思いをしてきた。
いつか長杉に仕返しをしてやりたい。
オレは本気でそう思っている。
日頃の恨みが重なり怒りで心が煮えたぎっていた。
こんな奴かまってないで早くタヌキ(先生)のところへ行こう。
職員室の前でタヌキ(先生)はオレを待っていた。
「今日はとっておきの部活に連れて行ってやろう」
タヌキ(先生)はにこにこ自信満々に言った。
タヌキ(先生)はでっぷりとした腹をゆっさゆっさ揺らしながら歩き出した。
理科室とか家庭科室とか音楽室とかが入っている特別教室棟に行くと、3階の一番はじの教室をタヌキはガラッと開けた。
(ここなんの教室だ?)
初めて入る教室だった。
「おお! 今日はいたか。
タヌキ(先生)が声をかけた先には一人の女子生徒がいた。
その人にオレの心はきゅんって高鳴って視線は釘付けになる。
(…
すごい美人だ。
オレはこの人を見るたびにそう思う。
だってテレビとかで見るアイドルとか女優さんみたいに可愛い。
行事や朝礼なんかのたびにオレは詩音さんを見かけてはドキドキしてた。
教室には詩音さんしかいなかった。
後ろの窓から光が差し込んできていた。
詩音さんの背後から陽光は注いでいるからなんだか神々しい感じすらあった。
いや太陽に照らされてなくたって詩音さんは美しい。
「ニ年の大野くんだ。
三年生の若槻さんは副部長だから、説明聞いてごらん。
先生はちょっと明日配るプリント作らなきゃならんから。あとでまた来るから。なっ?」
なっ? っておいっ!!
オレがこんな美人といきなり二人きりで話しなんかできるわけねえだろうが!
若槻詩音さんと初めてこんな距離でいる。
近くにいるってだけで心臓がバクバクなんですけど〜!……
オレ倒れそう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。