妻を、他人に抱かせようと思います。

第7話

　妻は焦っていたに違いありません。追い詰められ、早く子をもうけねばと酷く憔悴しているようでもありました。私などよりよほどに苦しんでいたのです。

　私は、馬鹿なことをと相手にもしませんでしたが、妻は要らぬ嫉妬で身を焦がしていたようです。私を信じることが出来ないでよく罵りもしました。弟の嫁がまた要らぬ火種を撒く女で、私に色目を使うようなところがあったのです。

　いいえ、私だけではなくこの女は年老いた私の父にも同じような目を向けるのですから、これは一つの癖のようなものだったと思います。誰にでもそういう紛らわしい目をしてみせるのです。

　けれど妻にしてみれば面白くはなかったのでしょう、妻はマドンナ的な存在で学園では誰もが花と扱う女でしたから、弟の嫁のようには振る舞えようもありません。ただただ己のみが知る醜い嫉妬で狂わんばかりの苦行を強いられていたのです。